あまんちゅ! 第5話

 黒板に絵を描いて海に潜ったことになれるなんてやっすいなぁ。
 ついに先輩との顔合わせの巻。うーん、やっぱり原作漫画に比べてなんともダサい感覚。それだけ原作の絵に迫力があって、その勢いで話が進んでいるという要素があるんだろうなとは思う。アニメ絵でもそれなりに強調操作はできるんだろうけど、敢えてやらないということなんだろうか。昔と比べてアニメ独自の手法や実写映画の手法などが蓄積されているので、それなりに方法はあるはずなんだけど、バーン!、ドーン!よりはほんわかした雰囲気を大切にしてると解釈せざるを得ない。まぁこの様子だとその手法を使うにせよ、てこがはじめて何かを成し遂げたときの感動を描写するのにとっておいているってことも考えられるが。
 ちょっとオヤっと思ったのが時代感覚の齟齬。てこにブルマっ娘と称させるあたり、昔の学校なのかと思ったら、スマホを使わせてる(原作漫画だと折り畳みのいわゆるガラケーになっている)あたり、どういう設定なんだろ?という。制服が足首まであるスカートだから、その長さからは道徳規範からするとかなり昔とも考えられなくもないし、かといってあのデザインはどこの学校でもないだろという。生徒がバイク通学可なんて、下手すりゃ'60年代ぐらいのあり方で、今は無いとは言わないが、バイク通学よりは親の送り迎えが主流だろうからね。で、人と人とのつながり症候群ってところはいかにも現代的だし。そういうごちゃまぜ風俗に現代的テーマを紛れ込ませて、モチーフは自分の趣味だとか、やりたい放題だなといった感じ。それがこうアニメになるとなんとも奇妙なキメラ感満載なのだが、原作漫画を読んでいるときは違和感がほとんどないのだから不思議。Ariaなんかを振り返ってみても、どう考えてもユートピアらしきものを描いて反語的にディストピアを表現するのではなく、ガチでユートピアを表現したいのだろうから、字義通り理想を描いているんだろうけど、モチーフが趣味なんだったら、好きな人がこっそり楽しむべき作品なのであって、Ariaのように社会人の新人教育のように少しは社会問題と重なる要素はほとんどないから、敢えてアニメ化するのは無茶だったのでは?と思ってみたり。あと恋愛要素がないので、ごまかしがきかないのもしんどいかも。
 あと、原作のコマを見ると、絵がスチル写真のようにベストな構図を切り取ったというものが多く、アクション漫画のように動きを切り取るというものとは一線を画しているので、これもアニメ化するメリットは少ないんだろうなという気はする。アニメ絵は色指定がどれもこれもパステル調なので、これは原作に比べてやはりほんわかした雰囲気を表現してるんだろうなという。原作もカラーでは彩度や明度が高くても割と深みのある色使いをしてるんで、それはやはりアニメスタッフが狙ってそういう色使いにしてるとしか。セル画と違い、デジタル彩色だから、やろうと思えばスキャンして色を拾ってその色そのまゝに塗ればよいだけなんでねぇ。
 うーん、なんか難しいな。原作漫画を読む限りアニメで気になるところはスルーできちゃうので、そもそも天野こずえの作家性に負うところが大きくて、翻案してアニメ化するなり実写ドラマ化するのは実は難しい素材なんじゃネェの?という気はする。Ariaがアニメ化されていた時期は、あれブラック企業が社会的に認知される過程で、まだまだ企業の理不尽に耐えろという高年齢層がたくさんいた時期だろうから、アレに癒された層もいるし、当時仕事なのに遊んでばかりという批判も多かったわけだが、しかし総体的に見ると社会は方向的にこのような仕事形態になるべきじゃね?という合意があったからこそ一定数の支持を受けたのであって、サトジュンはその頃から頭が切り替わってないんだろうなという気はする。あの時期から比べるとブラック労働の認知度も深まり、それに放り込まれる若者の親の世代もブラック企業許すまじの雰囲気にはなっているんだけど、だからそういう状態があの時期に比べて緩和されているか?というと難しいところで、部分的に改善しているところはあるんだが、しかし全体的に見ると良くなったとは全然言えないどころか、格差が拡大して問題は複雑化しているわけで、もちろんアニメAriaのような主張は今も有効ではあるんだが、だからといってこう癒しを全面に押し出して社会の暗部は極力描かない態度って、なんか生ぬるいだけじゃありませんか?って感じかな。結局のところ自分は「たまゆら」シリーズは最初のうちはそれなりに評価してたんだけど、クールが重なるにつれ飽きていったのはそういうことだと思っている。いや、劇場版を視聴してないから、高校を卒業する際(してから)のそのへんの結論がもしかしたら素晴らしかったのかもしれないのでなんとも評価は難しい。でもまぁ一連のサトジュン作品って、癒しを描いていても、じゃぁなんでその癒しが必要なのか?という補助線を視聴者が引こうにもなかなかそれができないように作られているんで、やはり辛酸甘苦渋の糖分だけたっぷりって感じでなんともげっぷがでるというか。