灼熱の卓球娘 全話

 やはりこれが入江泰浩の真骨頂というか。
 ユーリを見てやはり次はこれでショということで、まぁ思ったとおりの出来。ユーリの描画がリアル寄りなのとは対照的に、これはジャパニメーションならではの動画っぷり。入江監督は話の人でなくて絵の人であって、そこに鉄板のお話だけでなく倉田英之をもってきたからぬかりはないといったところか。しかし、だいたい一本糞シナリオなのでそのへんあまり新奇さはない上に、大会に出場すらしてないから随分割り切ったなという感じ。そんなに評価は悪くないだろうから続編も期待できそうだが、いちおう最終回は続編の有り無し関係無しにきれいに終わっているとは言える。というか、構造的に第3話でいちおうの最終回をやって、その後は第5話でも一区切り、第6話でインターミッションをやったら、練習試合編も最終回テイストで終わり、合宿編もアレなので、かなり細切れに構成している感じ。
 なんか難しいところだが、こういう作りになっているのは、最初の数話で見切られないように、間歇的にクライマックスを持ってこないといけないのかな…とか、この作品もやれ友情をテーマに振り回していて自分としては食傷気味だがそれを取り入れないと(原作段階から)読者を獲得できないのかな…とか、いろいろ余計なことを考えて視聴してた。とはいえ、いつもスポーツに関して自分が言っている勝敗を超えたところにあるものは文句なく描けていて、これも直球勝負の王道展開ながら、カタルシスも何の違和感もなく得られたかな。
 自分は転校のせいで三ヶ月だったが、ほんの少し卓球をかじっていたこともあり、またその後大人になってから第三者的立場ではあるが卓球に関わったこともあってか、ほんの少しわかるところがあって、その稚拙な経験でもなかなかその卓球部分は良く出来ていたと思う。かなり初心者に卓球の面白さを説明しており、それがまたしつこくない。動画になるとやれフォームが気になったりする。例えば一番強いというこよりのフォームだが、ラケットのスウィングがやってはいけない団扇をあおぐ形になっていてこれはどうなの?と思わなくもないが、別にそれはキャラを美しく見せるためのずらしであって、別にスタッフがフォームの正しさを理解せずに描写しているのでないことは、時々リアリティ寄りに描写されているシーンを見ればわかる。で、視聴していると各キャラの技術がいかにも凄そうに見えるが、所詮中学生なのでその年齢にしてはうまいという風になってる。別に素人に毛が生えたぐらいの技術でも割と速攻を基調とした試合でボールを目で確認することはほとんどできないほど速いので、そのへん、ボールの回転や曲がる様子を誇張しているとはいえ、逆にそれを迫力方向に生かして素人目にもわかりやすく描写したのは上記ジャパニメーションのメリットをよく生かしていると感心した。これを実写でやると香港映画のように要所要所を極端なスローにして見せるって感じになると思うが、そんなことをやって三次元ドラマとするよりは、確かにこういうアニメ化には最適といったところ。
 まぁいろいろスポ根アニメを見慣れている層にとっては完成度が高いぐらいの評価ではあるが、見慣れていない層はこれを見とけぐらいの実力はあると思う。編ごとの区切りがはっきりさせてあるのは両論あるとは思うが、そのおかげでこうやって1クール分視聴して終わるとなんか見足りないってこともなく、満ち足りた気分でスッキリ。咲タイプの終わり方と見ることも出来るので必ずしも続編がないとも言えないのだが、万が一続編があるとしても今までのモジュール化した話のまとまりがよいから楽しみにはなる。萌え記号過多なところがあってちょっとアレだが、自分的にはユーリよりはこっちのほうを評価するなぁ。



 年末年始で、弱ペ、ユーリ、卓球娘、あと10話しか視聴してないがろんぐらいだぁすなどスポーツものを一通りチェックしたが、どれもそのスポーツが好きな作者がその良さを知ってもらいたいという気持ちで描いたのがわかる感じでなかなか心地良かった。
 話の構造はまぁ古臭いんだけど、新しさがないわけでなし、王道展開の勢いを殺さずに逆に完成度を高めている。せかつよはそう、ドラマ寄りかなぁ。
 あと実際に日本でそれに取り組んでいる現実のアスリートが例えばフィギュアスケートなんかは特に世界に通用するレヴェルになっていて、そのへん物語中で語られる世界を目指すということに信憑性が付加されているのもプラス要素に働いているんだろうと思った。フィギュアは長年女子選手ばかりが世界レヴェルであって、男子フィギュアが世界レヴェルになったのは最近のことでもある。卓球は割とお家芸的な捉えられ方をしてはいたが、それでもこゝ10年ほど安定した強さを保っている。自転車は国策で自動車産業を持ち上げるためにロードレースというよりはむしろ競輪のほうが強い時代が長くて、歴史のある欧州にはどうしてもハンデがある状態であって、しかしそれでも素人が楽しむという形のメディアが増えている感じ。個人的には別に国際競技で日本の旗を背負って勝つということには興味がないのではあるが、いちおう強い弱いということも含めて昨今のスポーツ事情がそれなりにアニメに影響を及ぼしてるんだなということで。