坂道のアポロン 第5話

 長崎-東京の寝台切符、相当高かったろうに。
 うーん、ダメダメ、こっちは泣きっぱなしだったよ。千太郎の気の遣いっぷりだとか親子の涙の対面だとか、もうフォーマット通りなんだけど、それでものめり込んで見てしまっていた。もうね、薫の部屋を窓から入ってくるのが千太郎だというのが予測できちゃうもんな。
 しかし、驚くのは展開の早さ。チューしてからの失恋から和解、親子の再会の処理だとか、実写ドラマあたりだと1時間はかゝる内容を半分の時間で処理している。で、間もちゃんとゝっているので駆け足風味だと感じさせない。こうやって後から思い返すと大学生との会話だとか薫と母の会話など、必要最低限のことしかやってないとわかるんだが、視聴している最中はそうだと気づか(せ)ない。余分なものをかなり切り取っていて情感の盛り上げのための前処理とかほとんどないに等しいんだが、じゃぁないからスカスカゝ?と言えば、そうでもなかったりする。
 こうやってみれば千太郎が薫にとっていゝ友達になっているってのはわかるんだが、学校での荒れぶりからの沈静化が描かれていないだけで、薫もまた千太郎にとっていゝ友達になって双方好影響を及ぼしあっているのがわかって面白い。おそらく以降後半双方がかなり激しく対立する展開が現れると思うんだけど、それがまた楽しみでもある。
 昔を美化してしまうってのはあるんだろうけど、りっちゃんだとか千太郎など、純朴な少年少女の挙動がなんとも胸をうつ。ボンネットバスの時代、自分はまだ生まれていないんだけど、これがなんで現代人の精神構造になっていったのかその過程がわかるだけに懐かしいと共に切なくもなってしまう。まぁ昔がこの叙情作品のように美しかったゞけじゃなくて、どうしようもない部分もあったわけなんだけど、じゃぁ今が「昔がそんなによかったわけでもない」と断言できるほど良くなっているわけでもないとは思っちゃうわな。