そらのおとしものf 総評

 おもろ+。
 ちょっと見直そうと思ったら、止まらん。たぶん本筋について書こうと思ったら収拾がつかないと思うので、簡潔に周辺から。
 この作品の特徴である音楽なんだが、OP・EDとも魅力的だった。旋律に関して言えば、自分的には今シリーズのほうがよかったように思う。ラス前はOP・EDとも早見Ver.だったが、前回と違ってこっちのほうがよかった。というか吉田仁美ver.はお姉さん頑張りすぎ。もちろん悪くはないのだが、気がはやっているように思われ、落ち着きとか余裕が早見ver.より感じられなかった。まぁこれは好みの問題なので優劣つけるのは野暮だと思う。
 EDなんだが、自分の知らない曲のほうが多かった。自分は前半がそうだったのだが、何を狙ったのかゞよくわかんない。大体本筋とかED動画にあわせた選曲になっているので、音楽性は二の次になったのだろうと思っている。但し、知らなかったとはいえ最後の曲は胸にクるものがあった。やはりこれは知識の幅が違うんだろうな。
 絵もなかなか奮ってたな。もちろんEDがすべてカスタムであるってのもそうなんだけど、バトルシーンの気合の入れ方がまた違う。動きもさることながら、エンジェロイドのポージングが別の作品になったかと思うほど考えられているんだよな。まぁスタッフは力の入れどころを知っているんだろうとしか。
 ストーリーはいろんな見方があって困るのだが、自分は「傷ついた者たちが自分を回復し、また成長する物語」と大枠に受け取った。4匹のエンジェロイドの物語がバランスよく組み込まれているとは前にも書いたが、その秀逸さもさることながら、最終的にはイカロスとニンフの2つの物語に収斂したところをみると、やはり現代日本で傷つき弊れた労働者に向けたメッセージの意味合いが強いと思った。今回アストレアは新登場の未確認生物ということで、イカロス・ニンフと同じように空のマスターに散々抑圧されてきたのか?と思っていたらどうも違っていたようだが、どうなんだろうな?。イカロス・ニンフだけでダウナー殲滅の任には間に合っており、実際にアストレアは出番がなく、それが地上でよくこけるといった実戦経験の無さに現れていたんかなと勝手な想像をしている。
 あまり視点を連ねると大変なことになるので、疑問に思ったことを一つ。エンジェロイドがマスターに奉仕する存在として描かれているが、この作品がかなり下品であるというのを自覚して作られているのを考えると、一体原作者・スタッフは女性のあり方をどう考えているのか?というのが興味深かった。エンジェロイドには男性性は付加されておらず、どう考えても女性でしかない。で、その描かれている女性が、いわゆる世界的傾向である女性の自律というところから結構離れていると感じたのだ。五月田根もそはらも、結構アクが強く、もちろん力関係でも男を圧倒しているのだが、自分には彼女たちですら男に従属する存在のように見えてしょうがなかった。智樹がスケベであるということが全面に出されているが、じゃぁエンジェロイドや会長・そはらが、性的な意味での従属的存在なのか?と言われゝば、これに関しては意外なほど抑制的であるというか、かなり拒絶的*1だと感じた。例えば、イカロス・ニンフにしても智樹の性的欲望を満たすための手伝いはしても、自分たちがそのような存在でありながら、決して自分が智樹の性的欲求を満たす対象にはなってないのが清々しいほど不思議に感じる。公共に拡散する作品だからこそ性的な抑制は見られるのだが、この作品って、女性は男性に精神的には依存すべきだが、肉体的には依存すべきでないという風に見える。この構造が面白いのは、これが現代日本の構造と逆であるということだ。男女共同参画社会という触れ込みは、これ女性は男性と並列する存在であって、女性は自立すべきで、精神的には男性に依存してはいけないという考えだろ。でも、少子化対策のためにはデキ婚もオッケー、援助交際も見て見ぬフリ、この前東京で成立した児ポ関連法案も、基本的には性の抑制よりは一般市民を取り締まるための抑圧手段を特権階級が政治的に利用するためのものであって、性の抑制って意義は少ない(なにせ正統ポルノは今まで通りの規制なわけだ)。確かに男が女を見下すって感じでもないのだが、男女同権を目指して動いてきた世界のあり方にちょっとケンカを売っているように感じた。たゞ、男による女に対しての支配欲ってのを単純に愛だの恋だのでごまかしている作品ではないってのは明らかなんで、かといって男のそういう欲を刺激した部分って全く無いのか?と言われると、ないともいえないように思ってしまう。まぁとにかく男性性・女性性については、かなりいろんな見方のできそうな作りになっていて、この混乱が面白いといえば面白い。
 その他、色々考えるネタが多くて困るぐらいだ。伏線という形というよりは、疑義の投げかけって側面が大きいとは思うが、この作品にはいろいろな要素が巧妙に仕込まれているのに驚く、連載が続くためのネタが埋め込まれているから、どのようにも続けていけるように見える。前シリーズでも、最初数話はビックリするような展開だったが、正直これほどひきつけられるとは想像もつかなかった。さすがに名作にはなり得ないんだろうケド、自分的には今まで見たアニメの中でかなり印象的な作品になったと思う。

*1:男にそういう欲望があるにせよ、それをたしなめるという意味において