とある魔術の禁書目録Ⅱ 第1話

 当麻が女を救うところまではやんないんだ。
 いや、確かにやんなくてもわかるけどね。で、前シリーズから律儀に続きをやるんだなと。インデックスのウザさとか、ビリビリのめんどくさゝとか健在。佐天がOPにもEDにも居ないことに対する懸念を表明しているサイトさんが多いようだけど、レールガン用のアニメオリジナルキャラなんだったら、出さないのが正解だろう。もしかするとボーナス回みたいなのを用意してご褒美として出演なんてことがあるのかもしれないが。
 うーん、どうなのかね?。佐天ついでに言及しとくと、前にも述べたのだが魔女っ娘モノって、今でこそ使う魔法が権力そのものゝメタファーになってしまっているのだが、昔の作品って、魔法の力なんてたゞ大人になるだけってのが多かったよねと。で、それは、結局大人ってのは子供より知識も膂力もあるのに、社会のしがらみで困難に陥っていることをなんとも出来ず、大人に変身した主人公が一生懸命行動することで解決してみせることで、(子供の後ろで一緒に見ている大人層に)大人社会を皮肉るものであったりするってこと。力のあるものが純真さを失い、却って周囲を困らせているってことが込められていたりする。レールガンは敢えて能力を持たない佐天やスキルアウトに焦点をあて、その苦悩や焦燥を描いてみせた。もちろん自己欲求のためという幾分というか不純な動機のものもいれば、他者のために能力を獲得したいというのもいて、それでも自分にできる事はないのかいろいろもがく姿を見せていたワケだ。初春なんて、能力はあるが、何の役に立つのかわからない上にレヴェルも低く、それでも社会のために何かしたいと微力を尽くしているわけで、これもどちらかというと無能力者の苦悩に近いものがある。で、これは社会的な力や責任のある大人の立場ではなく、むしろ社会人になる前の段階の層に直接訴えかけるシチュエーションなわけだ。それらの層は年齢的に社会的責任を負わされることもなく、社会を“構築する”力も今は無いながらも、いずれ社会に出れば本当の能力があろうと無かろうと影響力を行使することになる。もちろん選挙権を行使しないとか、消費者としても生産者としても影響力を行使しないという選択は可能だ。が、社会にコミットするために行動の一つでもすれば、たとえその影響力が大きかろうと小さかろうとその瞬間にも社会に何らかの結果を引き起こす要素の一つとなる。ひきこもりでもクレーマーにはなれるのだ。子供であれば、社会的責任は保護者に寄りかゝることになるが、大人の年齢になれば、いくら行動が幼稚で周囲が眉を顰めるようなものであっても、いちおう大人の行動として見なされる。レールガンは子供社会の物語、禁書目録は主人公が生徒であっても基本大人社会の物語になるだろう。能力を持ち行使するキャラは、基本大人を意味していると見てよい。
 で、その能力は人それぞれ種類も違えば、用途も違う。そして何よりその使い方によって自分だけでなく人のためにもなるようなものにもなりうるし、他人を傷つけるものにもなりうる。まぁこの作品だと、基本出てくる人間は皆良い人であって、力の使い方を間違えているだけって体裁をとっている。主人公の当麻は事件に関ることで自分を見失った相手の目を覚まさせるってことだけをやっているわけで、まぁワンパターンちゃぁワンパターンではある。
 でも、出て来る人間が結果的に良い人ばかりだからといって、この作品が「世の中には惑わされている人がいるかもしれないが、悪人なんて一人もおらず、目を覚ますことで誰でも善人になる」ってことを言っているわけでもないとは思う。むしろ当麻を中心とするメインキャラ達では救えないほどの悪人はそもそも物語にしないってことなんだろう。とてつもない悪人はエピソードに取り上げないことによって「そいつらは救わない」という態度表明をしているのかもしれない。だから現段階で彼らが救いうる人だけが題材に上がっていると見てよい。もしかしたら以降、救うのに凄く困難するといったエピソードや、救えそうで救えないパターンなんかも示すのかもしれない。まぁそれは置いといて。
 で、今回の話なんだが、まぁフォーマット通りだわなと。ボウガン男が胸から写真を取り出すあたりで、もう展開が見えてしまうわけなんだが、やはり結末もそう。そしてやはり当麻は救う側の人間なんですよという再確認になっている。日常にこだわりながらも、緊急を要する事態に対して状況観察を怠らずに対処。インデックスも当麻が駆けつけた際に自分のことばかり言っていたが、実は当麻に会話を転送して、その内容を彼が理解して、彼が到着した時には既に問題は解決済みですよってのをあっさりと表現していただけ。当麻もそう。当麻にとっては日常生活のゴタゴタより解決が簡単なモノであって、インデックスはさらにそういう当麻を信用しきっているって描写でいゝんだよな?。
 しかし、働く身としては当麻の能力が凄くうらやましい。魔法が権力のメタファーであるのなら、この作品の困ったチャンの強力な能力ってのは、上司とか取引先の理不尽な権力にあたる。職務を遂行する上でそういうのは迷惑千万で、その能力をいかにプラスの方向に持っていくか?なんて言われもするんだけど、自分にとっては「とにかく迷惑なんだから権力の行使をすぐさまヤメロ」なんだよな。それが可能なのが当麻の能力。職場が正常に機能してれば全く要らないモノではあるんだけど、そうでなければ途端に重宝する代物なんだよな〜。まぁそれを使う者の判断力にもよるんだろうけど。まかり間違って有能な人間の能力をキャンセルして、有害な人間の能力をそのまゝにしちゃったら目も当てられないよ。