鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 第54話 烈火の先に

 エンヴィー、まさかのひっくり返り。
 うーん、解釈が難しい。ここでの疑問は2つ。エンヴィーを殺すという汚れ役を、ホークアイは買って出たようなんだけど、マスタングはどうなのか…が1つ。そして、エンヴィーは人間に敬意を払って自死したわけなんだけど、その決意をしたのはいつなのか…が1つ。もちろん、自然に考えるとマスタングは自分を見失っていたから汚れ役なんて考えていなかった…というのと、エンヴィーはエドに真意を見抜かれた発言をされた後ってことなんだろう。そしてそのエンヴィーの決断が、それまでの自分の行動を反省しての清算行為であり、それがまた他者に手を汚させないための気遣いにもなっている。キレイ事だと口にはしていても、エンヴィーであるからこそ、そのキレイ事を価値あるものとして心の中では認めていて、かつ切望しているわけだ。かなり美しい。そしてそれはエンドロールの2位という位置にも示されている。
 マスタングの件については、いや、やはり彼も大人だからこそ、明示的な描写ではなく、他者の手を煩わせず、自分が汚れ役を引き受けるつもりであったと思っている。アメストリスの風習がどうなのかにもよるが、敢えてモデルはやはり日本であると考えると、そう考えるしかない。以前も言ったとおり、日本は基本的に上層部は判断をし、他人にその判断に従うことを強制するが、いざその判断自体が間違っていても、責任は部下に押し付け、自分はのうのうと権力の座に居座り続けてきた。もちろん判断を部下に押し付けても、自分が行動することはなく丸投げ。だから、そもそもエンヴィー退治を自分で買って出て、ホークアイに手を汚さないようにしたのは、初めから自分が泥を被るつもりだったと考えてしまう。それはホークアイを守るということや、親友を殺した犯人を自分の手で直接葬りたかったという、プライベートな問題があったとしてもだ。国のトップに立つものがって心がけが頭の中からすっぽり抜けていたとは考えられない。それは既にあって、ホークアイエドワード、そして記憶の中のヒューズの遺志は、基本お子ちゃま向けの強化策に過ぎないと思うがどうか。まぁこれが間違っているというのなら、次回大人について語られるらしいので、そこでマスタングの子供っぷりが晒されることになるだけではあるのだが。まぁ大人群のなかでもマスタングは青年扱いのような気はするが。
 エンヴィーの件はわりとあっさりかね。一番の決め手はエドがエンヴィーをかばっているその手の中で4人を愚弄する離間策を発揮することなんだが、あの発言はフツーに考えても死亡フラグなわけだ。ちょっと前まではマスタングの靴に踏んづけられて死にたくないと弱音を吐いていたぐらいなのだから、普通エドの手の中では命乞いをするはずだろと思うわけだ。それをしない。そしてエンヴィー自身4人を離間させる台詞で本当にいがみあいをするとは思っていないように見えた。本当に命が惜しけりゃ最初の数台詞で雰囲気を察してやめるだろ。それがやめない。あの発言をすることで、まるで自分を憎んでくれといわんばかりの行為だ。そして怒りに任せて自分を殺してくれと言っているわけだ。マスタングの靴の下では死にたくないといっていたわけなんだが、エドが命がけでマスタングからかばった瞬間がまさに死を決断した時なんだと思う。あぁ、こいつにはかなわないなと。かつてグラトニーの腹の中で、敵である自分と一緒に脱出方法を編み出し、協力をし合っているわけで、エドのことをホンモノと悟っていたのだろう。まぁ度を越したツンデレだわな。アンタのために死ぬんじゃないんだからね、プンプンじゃねぇよな。
 正直エドマスタングのように怒りの源泉をエンヴィーには対して持っていなかったって側面もあって、そのへんうまくできているんだが、この前半部分の盛り上がりはさすがに息を呑むほど引き込まれてしまいましたよ。後半もそこそこ良かったんだけど、前半に比べると霞むねぇ。で、次も見所なんだろうか?。前回はわりと白けて視聴していたので、今回エンヴィーが死ぬことも見抜けなかったし、こんな見せ場があるとも予想できなかった。次回も盛り上がるのかどうか自信ないなぁ。マトモに考えると、国をめちゃくちゃにした大人たちがどう行動するのか、今の日本の惨状とも重なり合っていて、子供の視点でも大人がどう責任を取るのか、大人の視点でも、どう上層部に責任を取らすのか(国をめちゃくちゃにした張本人たちには自覚がないので、彼らが自主的に償いをするなんて甘い考えは初めからない*1)、ホントここ一番の見所なんだけどな。

*1:自民党を見てれば一目瞭然