コードギアス 反逆のルルーシュ R2 第25話「Re;」

 ん、えーっと、九条教乙。
 ゼロレクイエムとか、もうちょっと技術の粋を凝らした何かなのかと思っていたら、劇場政治でしたか。まぁシャルルがオカルト、シュナイゼルがまさに科学技術を通じての世界変革をめざしていたわけで、ここで哲学(といえるほどたいしたものかどうかはわかんないが)命題にオとしてくるのは、想定の範囲内ではあるのだが、それでもこっぱずかしくてやんない可能性のほうが大きいと思っていた。
 さて、最終回としての評価としてはまずまずといったところだろう。なんと言っても秀逸はアーニャとオレンジ卿のカップリング。勝ち名乗りを上げるオレンジ卿にアーニャが「記憶が無いの…」と言って逆に撃墜するのはなんとも意外だった。まぁおふざけはともかくとして、割とカップリングを重要視しているのは、未来を託すべき子供への視点ってのがあるのかな?。扇・ヴィレッタを筆頭に、今回ペア組みされたのはそういう方向に流れていくだろうし。
 さて、総括と絡めて見ていくわけだが、まず、結論のつけ方なんだが、過去の悪行に罪を全部被せて新しい体制作りを始めることについては、それこそWWⅡのドイツ・日本と同じあり方のように思える。ドイツはナチスが悪いといい、日本は軍国主義が悪いといい、戦後そこから新体制が始まった。成功とまでは言わないが、少なくとも努力して改善に至ったのがドイツである。まったく旧体制人脈が紛れ込んでいないとまでは言わないが、NSDAPの関係者は全く政治に関与することができなくなった。で、過去の反省を生かして周辺国との融和を図り、協調体制をそれなりに確立したわけだ。一部政治的なモノも含めた経済圏EUの出発に一番の役割を果たしたのがドイツと言われる。
 反面、旧体制にすべての罪を被せたクセに、実は旧体制が以前と変わらず温存されたのが日本だ。政官財、全ての分野において利権構造が温存された。財閥解体といっても、三井・三菱など大手財閥は吸収・合併などでわかりづらくなっているが、現在まで健在だし、公職追放といっても、ほとんどの旧体制の政治屋が復活して、しかも世襲が続いて現在まで元気である。官も大蔵・内務官僚を筆頭に、戦前の官僚組織がほぼ世襲に近い形で温存されているだけでなく、特殊法人の乱造で利権が拡大すらしている。
 で、ドイツの進歩に比べて、日本の在り様は酷い。未だアジアの一員としてEUに匹敵する共同体が形成されないだけでなく、中韓との戦時中のわだかまりがほぐれていない。歴史修正主義者のおかげで、日本が他国に強制した残虐行為が無かったことにされていて、顰蹙を買っている。また、戦後経済成長したとか言っているが、ここに来て庶民がどん底に突き落とされている。成長して儲けた資本は全て特権階級が搾り取り、国民全体に分け与えられなかったために、今余力が無くて困っている状態だ。あのバブル時期ですら日本人はウサギ小屋にしか住んでいないと欧米の連中にバカにされていたぐらいだ。そのウサギ小屋に高値をつけて庶民から金を搾り取って余力をなくさせていたと考えるしかない。経済成長だって戦時中の国民総動員体制をこの70年ほど連続して行っていただけで、その果実は特権階級だけが奪い、国民は正当な報酬を得ることなく、余裕の無い生活を延々と続けさせられてきただけだ。少なくとも明治あたりは、都会で夢破れても田舎に帰って不自由ない生活をしていけるだけの故郷や共同体などが存在していたが、今では地方は働く場所すらなく、一攫千金を夢見たり、職を求めて都市に出てもワープアでこき使われるだけで、にっちもさっちも行かなくなったらのたれ死ぬしかない。どっちが豊かなんだかわかりゃぁしない。
 今の日本がそういう結果になっているだけに、「悪いことは全て誰かに押し付けて」という解決方法はあまり信用できない。そうやって国民を騙して利権構造を温存してきたのが自民党であり、その象徴が憲法で規定されている通り天皇であったりするのだ。終戦直後、GHQ天皇制温存を言い渡されて流行ったのが

国体は護持されたぞ。
朕はたらふく食ってるぞ。
汝臣民飢えて死ね。
御名御爾

 だったわけで、「国体の護持」を「利権構造の維持」と読み替えればわかりやすいだろう。だから、日本人のメンタリティーでは、古いものに責任を押し付けてという手段は庶民に対しての目くらましにしかならない可能性が非常に高い。
 かといってこの主張が間違っているとは思わない。人をうっていいのはうたれてもよいという覚悟のある人間だけだといっているわけで、自民党が戦前の罪に加えて戦後国民を目くらましにかけてさらに騙した罪を償って一族郎党死に絶えるぐらいの処分がなされるのであれば、誰も文句は言わないと思うのだ。でもそこまでやるかな?。ボケ老人がいまだ多く、彼らの票が他世代に比べて圧倒的多数であるわけで、やっぱ自民党あたりは数で押し切れとか、まだまだ国民は騙せると思っているだろう。国土交通大臣が教育が悪いのは日教組のせいとか言っているわけで、反省の一かけらも無いわな。
 まぁそういうわけで、ある意味最後で日本のあり方を変えるという原点に返ってくれたのは非常にうれしいわけではあるが、ちょっとキレイ事過ぎたかなと思わなくも無い。
 で、日経インタヴュー記事との関連だが、全能感の象徴であるルルーシュがあのような状態になり、またウザクが公私の私を殺して生きていかざるを得ないということからすると、ゆとり世代のこれからの生き方が提示されているのかな?と思わなくも無かった。もちろんゆとり世代にもまともな人間は一定数いると思うのだが、少なくともルルーシュのように大人が抵抗できないのをいいことに好き放題やっていた層は、これから社会的に償いをしなさい、もしくは社会的に死になさいと言っているように見える。またウザクのようになりあがりの手段として努力を続けてきた層は、少なくとも能力はあるんだから、万人のために尽くしなさい、もしくは我儘であるところの私を捨てて、社会的になりなさいという主張のように思える。ゆとり世代は日本でも一番甘やかされ楽をしてきた世代なので、意識や行動などのあり方を今から変えるのは非常に困難だとは思うんだが、それでもやれと言っているのだろう。女の代表格ナナリーも晒し者になっていたわけで、そういうところが一番の落としどころなのかもしれない。まぁもしかすると(2)から止まっている日経の記事がここ数日中にアップされるかも。
 というわけで、ついに終了したわけなんだが、まず確かに話題性はあったと思う。楽屋から監督がネタバレというのも下品な話だが、それなりの理想像を掲げるといった一般的なドラマ(もしくはビルドゥングスロマン)を目指しているとばかり思っていただけに、現代の少年批判が込められていると聞いてなるほどと思った部分は大きい。もちろん特権階級だけに有利な社会を構築してきた大人世界への批判も含まれている。よくよく考えてみれば人の模範となるような大人がほとんど登場しておらず、キャラクターのほとんどがイカレタものであった。成長物語で挫折がどうのこうのというレヴェルでなく、行動も全般的にディスコミュニケーションが多かった。だからこそ劇的な展開が続いてもストレスが多く、視聴者の批判も多かったのだろう。もちろん対象視聴者層への批判が含まれていることにも原因はあると思う。DVDを買った人がブログで「もう一度見返してみると、各キャラがどういう意図で行動・発言したのかよくわかる構成になっている」と書いていて、また再度視聴すると印象も変わってくるのだろう。自分的には途中で脱力して視聴していただけに、発作的な感情に襲われることが少なかったせいか、構成として色々考えられていることは良くわかった。気合の入れ方が違うだけにクォリティも高いと思う。さすがにおもろ+の評価はつけざるを得ないだろう。
 多分これだけ詰め込まれているだけに、感想を書くネタは尽きないと思うが、とりあえずここら辺でいったんおくことにしたい。