閃光のナイトレイド 第7話

 川澄声の葵の恋人とやらは、妹かと思ってたよ。
 うーん、総集編ではあるんだけど、新カットも多く、今まで不明瞭だった人物紹介だの、ちょっとばかし話を進めるなど、結構盛りだくさんだった。で、前回のアジアは連帯せよという勲の主張がクライマックスに置いてあるところ、やはりこの作品の肝の部分なんだろうなと確信した。
 作品の感想とはズれるんだけど、今の日本の状況を考えると、スタッフが満洲事変の頃と今とを重ね合わせているんだろうなというのは前回も述べたとおり。旧い歴史を振り返ってみると、明治維新より富国強兵の下産業および日清日露WWⅠと国力を増して増長してきたというのは作品中でも述べられていたよね。で、明治維新先の大戦の敗戦と重ね合わせ、朝鮮特需やオイルショックからの立ち直りその後の日本製品の品質向上による世界の工場化と経済的に発展してきた。そしてブラックマンデーをきっかけとする世界大恐慌バブル崩壊およびアジア通貨危機や先のサブプラショックによる金融危機ってのが重ねあわされる。そして世界大恐慌以降の世界がブロック経済化し、日本が経済から軍事偏重の末WWⅡに至った道と、今まさに世界がブロック経済化しつゝあるのと良く似ている。
 そして長年政権を担当してきた自民盗が貴族化し、己の利権を守るために国を食い物にするって構造は、戦前の天皇を中心とする利権集団が軍部と財閥を取り込んで国を食い物にし、果てには国を滅亡させた姿と重なる。政権交代の前後で、自民盗の中から徴兵制の義務化が叫ばれても来、安倍政権下で徴用された田母神というキチガイ尖閣問題で国家間紛争を扇動するなど、益々状況は似てきた。明治以降大正デモクラシーあたりまでの発展は、童話の「おじいさんのランプ」に見られる通り技術の発展も著しく、人口も急増していた時代だ。そして世界大恐慌以後、産業の低下も著しく、軍への財正当化比率が増大したことも相俟って、国力が著しく疲弊した…という状況も、現代でいうところのバブル以前・以後の状況と良く似ている。ちょうど最近死ぬほど大切な仕事ってなんですか―リストラ・職場いじめ時代に過労死を考えるを読了したんだが、この本は特に1980年台の過労死のケースをよく取り扱っていて、バブルで景気が絶好調の時でさえ労働者が使い捨てにされていたよという例が沢山載っていた。高度経済成長期ですら労働者自体は実は待遇がよくなかったという話もよく聞くわけで、これが日本の失われた20年ともあわせて考えると、実は戦後一貫して労働者ってのは大企業にこき使われてきたと考えるしかない。そして、これは明治維新以降終戦まで「蟹工船」を筆頭に財閥に労働者がこき使われてきたという状況とほぼ同じと言える。終身雇用・年功序列とかいう夢も、団塊世代が享受できただけ*1で、今の若者なんて半分が非正規労働者だしな。本当に日本人が豊かさを実感できたほんの20〜30年ぐらいであって、その豊かさもちょっとばかしのカネによってもたらされたものである。しかもそのカネと引き換えに日本人が失ったものはあまりに大きかったと思うのである。
 まぁこの作品では財閥というか大企業が国を背景に、その国の国民やあまつさえ他国のモノまで食い物にして保身もしくは発展を図るものである…という構造を描いてはいないのではあるが、満洲事変で、日本が大陸の利権を確保するために、ヤラセまでやってしまうってのは、ちょうど自民盗政権が自分の都合のよい方向に世論を誘導するためにTMまでつかって捏造や扇動をしたのと重なる。昔の強欲な日本人も自分の利益のためには捏造をしたし、直近の強欲な日本人も確かに捏造をしてまで私腹を肥やしてきたぞと。なら、経済的に厳しくなった今この瞬間の日本で、やはり強欲な日本人が何をしようとしているかわかっているよね…ってのをひしひしと感じる。そのまさにわかりやすい例が田母神の領土問題を火種とする扇動だったりする。『「丸山眞男」をひっぱたきたい』の「希望は、戦争。」だったりする。経済界のせいで日本が苦境に陥っているというのに、その経済界を牛耳っている層が自分たちの役員報酬を上げて労働者の賃金をカットするという冗談。そしてその経済界が自分たちは弾の飛んでこない所で、貧困層に追いやった国民を飢えさせて企業利益のために戦争に駆り立てる。なんの冗談かと。
 しかしなんというかね、世界大恐慌から日本が大陸に進出していったり、いやWWⅡが起きるまで10年ほどしか経っていなかったワケだが、これからどういうスケジュールで世界は崩壊していくんだろうか?と。日本はバブル崩壊以降、まさか軍事的に他国から収奪するわけにもいかず、だから余力のあった国民から収奪してきたわけなんだが、その収奪構造を温存してきた抵抗勢力自民盗がようやく政権の座から追われた段階だ。しかもまだ強欲な経済界はまだまだ健在。国民から搾り取ることが出来なくなったら、日本国民の命を代償に、他国から収奪することをまだ夢見てるんじゃないかね?。まぁ大国合衆国と、今や日本を凌ぐ大国となった中国に挟まれて思うようにはいかないとは思うけど。
 長々と続けてきたけど話を本作に戻して、今話でエピローグにでてきた禿頭の軍人は石原莞爾だよね。張作霖爆殺が日本を誤った道に進めた一歩なんだろうけど、この作品のスタッフは現代の爆殺事件をなんと見てるんだろう?。それともまだその爆殺は起こってなくて、間違うなよと警告しているだけなんだろうか?。張作霖爆殺が起こってなければ勲はどんな行動に出ていたんだろうか?とか、いやもしくはこの爆殺に関っていたんだろうか?とか、起こった上でどういった善後策をこれからとっていくのか、結構楽しみなところではある。が、あまりそういう本筋に沿って物語は動いていかないのかも。

*1:その団塊世代ですら、バブル崩壊後にリストラされて生き残れなかった人たちもたくさんいたりする。同じ団塊でも人を切り捨てゝウハウハの層と、切り捨てられて追いつめられた層がいるワケだ。