昭和天皇の終戦史 (岩波新書)読了

 当時の国民も共産党にも戦争を止められなかった責任はあるとの記述があって、「ハァ?」と言った感じではあるが、鵜呑みにするわけにもいかない*1だろう。引用をかなりしたいのではあるが、長々となるので、できるだけ短くしたい。
 まず、本書で触れられているのは、天皇はおろか、当時の指導者の皆が皆、戦争責任は対米でしか考えておらず、対中で責任があると考えている人間はほとんどいなかったということだ。まぁ弱肉強食は世の常ではあるが、なぜ中国が未だに日本の戦争責任を取り上げているのかは、そのへんを踏まえておかないと国際的に笑いものになる。隣人を踏みにじり、アメリカ合衆国に媚びへつらう政治屋が多いのは、周囲から見ると日本はとんでもない国であるわけだ。当然今某巨大掲示板自民党工作員統一協会工作員などの書き込みを見ても、中国や朝鮮はチュンチョンと小バカにしているものの、アメリカに対して一般的にブッシュやユダヤを非難してはいてもバカにするような書き込みは見られない。日本在住の中でもより日本語に慣れ親しんでいる中国朝鮮人が日本のそのような風潮を見て、「やっぱり日本は強きに媚びへつらって隣人をないがしろにする民族」と思われている事は十分に踏まえておかなくてはならない。
 また、日本人の…といっても、日本の特権階級の無責任体質も、これまた戦前からほとんど変わってないと見ておかなくてはならない。昭和天皇ですら、日本人は昭和時代一貫してそのあり方が変わっていないと発言したそうで、まさにヲマエが言うな状態ではあるんだが、やはり、責任を下のものに負わせてお上は逃げおおせるという体質は、昭和天皇が作り、強化したものだということを肝に念じておかなくてはならない。沖縄がなぜ今に至るまで文句をいうのかについても、知っておかなくてはならない。どうも昭和天皇終戦時に、沖縄を占領してもいいとわざわざ働きかけたというのだ。当然それは天皇制の維持が期待されていた事は間違いない。今、日本の政治屋が日本人の資産をアメリカに貢いで売国奴と罵られているが、なんのことはない、昭和天皇本人が正真正銘の売国奴なわけだ。カネとかモラルとかそういう類のものではなく、まさに日本の国土そのものをアメリカに売ったのが昭和天皇だ。
 今、社会保険庁長官が年金記録の破棄を命じたり、政治屋やそれに繋がる高級官僚・経営層の不祥事の押収資料をワザと破棄したり、教員の不正入試の資料を教育委員会が破棄したりと、特権階級の都合の悪い事は証拠隠滅している様が話題になっているが、これも終戦直後に軍が各方面に証拠書類の焼却を命じたというところから一歩も進歩していない。とにかく開戦に責任のある層は自分が責任を負わないために証拠隠滅していたわけで、これも日本の特権階級の伝統といえよう。とにかく都合の悪い証拠は隠滅、あとは特定の人間に責任転嫁するために平気で捏造するのが日本のエスタブリッシュメントと呼ばれている者の正体だ。
 正直アメリカも戸惑ったに違いない。日清はともかく日露戦争では日本は自身の国力を知悉しており、戦争が泥沼化する前に講和をした。ミッドウェーはともかく、硫黄島を失陥した時点で日本の敗北は確実になっており、いわゆる将棋でいえば王を取られる前の一手、“詰み”の段階だ。普通はこうなる以前に投了、講和工作をするハズであり、それは日露戦争時の頭脳が日本にあれば可能であった。ところが、王が降伏しないもんだから、飛車を取ったり角行をとったり、いやその時既に日本にはそれらはおろか、金将銀将ですら無かったから、桂馬を取ってみたり、香車をとってみたり、つまり沖縄攻略戦をやったりして、王を裸にしてもまだ投了しなかったわけだ。日本の王から一マス明けて金将銀将を並べて、相手が一歩動けば取られてしまうという段階、つまり原爆投下までしないと、日本が投了しなかったわけだから、昭和天皇を初めとする首脳部のバカさ加減には呆れる。というか呆れるといっては失礼だ。首脳部の判断ミスで死ななくてもよい民間人が多数犠牲になったわけで、その償いをその身で持ってしてはいない。
 まぁアメリカにとって見れば、バカな日本はバカなまゝであってくれたほうがよいわけで、むしろ日本人の末端に至るまで主体的に政治行動をされては困るわけだ。日本人の首脳部は無責任体質のボンクラばかりで、自分の保身にしか意識が向いていない。当時の公務員は勅任官・判任官であって、直接にせよ間接にせよすべて天皇の任命した役人である。天皇に戦争責任があるとなったら、天皇を頂点とする暴力装置に荷担していた人間はすべて犯罪人なのであり、天皇を必死で守ったというのも納得だ。彼らが民衆の抑圧装置として実に優秀であり、特権階級は自分の保身のためならよろこんでアメリカ人の靴を舐めるようなことまでやった。アメリカにとってこんな馬鹿たちに支配されて、反乱の一つですらおこせない民衆なんだから、とうぜんアメリカに歯向かう事はないだろうと、まさに小ばかにしたわけだ。民主化の皮を被っていたGHQが結局は労働運動を弾圧したり、トンデモナイ情報統制をかけたというのもそれを裏付けている。
 終戦直後は戦争責任の当事者を軍法会議にかけて、軽い判決にしてお茶を濁そうとしていたらしい。やはりやるなら人民裁判で、国民を無謀な戦争に追いやった責任者は一族郎党根絶やしにしとくべきだった。イタリアが戦勝国ヅラしているのを気に入らない日本人がいるようなのだが、彼らは実際に水面下で戦争終結のための動きを起こしているし、戦場でも残虐行為はほとんどなかった。戦争責任の当事者を処刑もしているわけで、そこらへん日本人が別の戦線で独自に宣戦布告し、一歩も動けないまで見苦しく抵抗しつづけたのとは訳が違うと思う。昭和天皇も実は開戦のかなり前から無謀な戦争であることを知悉し、しかし途中から積極的に開戦に荷担した。天皇制が維持されなければ戦争を継続するつもりだったという政府関係者もいたわけで、徹頭徹尾皇室の安泰しか考えておらず、国民がどうなろうと意に介さなかった。だから国民に対するわびの言葉もないわけで、むしろ天皇制が維持されないとならば、もっと国民を酷い目にあわせていたと思う。天皇自身東条英機を国民の手で裁判にかける事は「人民裁判になる」と反対したそうで、自分がやったことの重大さ、本当は天皇自身が進んで戦争責任を引き受けないといけない事はわかっていたっぽい。
 で、昭和天皇が権力にしがみつくことによって後々に禍根をのこした。現人神である天皇が、責任を負わないで済むのだから、その後を継いだ特権階級層がどのような態度に出たのかは書く必要もないだろう。かといって事態を悪化させた責任者は必要とされ、それは抵抗力の無いものに押し付けられるという構造がずっと続いてきた。神ですら責任を取らなくていいわけなんで、神への道を独占してしまえば好き放題して責任を負わずに済む。だから森が日本は天皇を中心とした神の国といったわけで、天皇を神と崇め奉っておき、その神の命令だといって盛大に民衆から搾取をする。そういう構造を自民党清和会は作りたいとずっと思っているわけだ。責任の当事者は彼らなんだけど、神への生贄が誰になるかの決定権は彼らにある。日本を法治国家と思ってはならない。どうせ自民党が都合よくルールを替えるわけだ。中国を人治主義とバカにする日本人もいるが、日本はそれにも劣る。特権階級は自分が決めた法律ですら堂々と破り、しかも罪を負う事は決して無い。それは昭和天皇が身をもって示したからだ。特権階級にとってこんな美味しい事例はないわけだ。
 しかし、情報が隠されているだけなのかもしれないが、今の天皇は控えめではある。米長邦雄が東京都教育委員のときに、国歌斉唱・国旗掲揚の強制を教育機関に行ったが、今の天皇はたしなめたそうだ。その東京都教育委員会にしたって、管理職の痴漢は懲戒免職にせず、教員の不正採用の結果を議員に洩らし、夜スペなど公教育の破壊を行っているわけなんで、そういう悪事から目を逸らすために「お前らは何も考えず国旗や国歌をありがたがっていればそれでいいんだ」ということに天皇を利用するわけだ。
 悪事がどんどん晒されてきてはいるんだけど、でも、よく考えてみれば悪事をバらすけど、悪事の当事者が何のお咎めも無いことが大々的に報道されるわけで、これは開き直りだよな。「特権階級はこんな悪いことをしても、罪を逃れることが出来る」と偉そうにされるってのも嫌味な話だ。
 少なくとも、今の日本の特権階級が責任逃れをしているのは昭和天皇のせいなんで、もしこれで検察庁教育委員会、警察や地方公共団体の上層部にいる特権階級の犯罪を見逃すんだったら、いくら今の天皇に罪はなくてもここは皇族皆殺しにしないと示しがつかないと思う。日本は天皇制を維持することで衰退するわけなんで、天皇を放逐しないのであれば事務所費の不正支出問題などの政治屋売国財界人、不祥事に関わる上層部を厳しく処分する必要がある。

*1:一億総懺悔論を否定するような記述が見られるし、なにより共産党も悪いことにしとかないとウヨクの攻撃に晒される。