いせれべ#13

 お兄さんもお兄さんを操ってた少女も仲間にするの巻。ん~、ストーリーが俺TUEEEモノであることがあからさまだったから、その辺は荒唐無稽な作品だという認識を最初っから持っていたけど、案外楽しめたなという感じ。前にも述べた通り、そのファンタジー設定を前提条件として、ではそれ以上の付加価値で勝負してきたということなんだと思う。ヒロインがこつこつ増えてる割には差配の様子が巧みだし、現実と異世界の行き来がそれぞれの当面のエピソードの切り替えにうまく機能してる。
 個人的にはメインヒロインの理事長の娘が、異世界に首を突っ込んでどのくらい深入りするのか興味があるんだけど、そのへんどうなんだろうか。エピローグで姫様と面識を持ってたみたいだけど、この最終回ではおびえて隠れてるだけだったがやっぱ主人公と同様スキルアップしてパーティーに加わるんじゃないかとどうしても予想してしまうが…。
 こういうドリーム全開な作品を視聴してふと思ったのだけども、文学でキャラが理不尽な目に遭ったり激しく葛藤して見せたりし、人間の深みを描いてそれが大衆にある程度支持された…というのは日本が近代に入って社会が豊かになり、庶民でも努力すれば豊かになれるし社会もより良いものにできるという見込みがあった時代だったから…なのかもなとふと思ってしまった。昔も格差はあったわけだが、こう今もなお戦前の特権階級の正統な後継者である自民盗を頂点とする政官財トライアングルが日本国内を植民地状態にして、上級国民が庶民を搾取する構造にするとは(少なくとも自分の感覚では30年前)は想像もできなかったし、今でこそ世界的に見れば日本はまだ豊かな国なのだけども、政府が意図的に国力を衰退させてそのうち衰退途上国になり、アジアでも有数の貧しい国になりそうな現状、まじめに生きていてもいつ野垂死ぬかわからぬことになるかもしれない現状、「理不尽な目にあう弱者のことを考えろ」とか「自分の行いを顧みて葛藤しろ」と言われても、もう庶民自体が弱者になってるし、他者のことを考えて思い遣りを持ったとしても上級国民に都合よく搾り取られるだけなんで、バブル絶頂期に文学が衰退したのは単に国民が浮かれポンチになってただけだが、衰退期には逆にそういう文学の持つテーマは庶民が政府に都合の良い奴隷になるための指南書にすぎなくなるわけで、そんな説教臭くて自分が損するようなテキストはゴメンだという話なのかもしれない。こういう話を読んで、まさか今の庶民がこの通りにすれば自分も豊かになれるとは思うハズもないし、ファンタジーであることは承知の上で辛い日常をほんの少しでも忘れる明るさを消費するために読むということなのかも。よーく考えてみればこの物語には例えば水戸黄門暴れん坊将軍、遠山の金さんや必殺仕事人のように、弱者に成り替わって悪人を成敗するヒーローは出てこない。自分自身だけが超絶な力を持ち、たとえご都合主義であっても問題を解決する主体は主人公自身であって、他人任せでは決してない。で、権力者と知り合いになるけど、ろうきんだとか熊4のように貴族や王族にケツ持ちをやってもらうのではなく、あくまで主人公は権力者と対等なポジション。山上徹也氏の偉業で鮮やかなほどになったけど、日本は現状自力救済で生き抜く国になってしまっているが、それを先取りしているところなんかは時代に対する嗅覚はそれなりに優れてるのかもしれんね…。