あけました。

青ブタ#1~#13

 思ったより未消化のアニメが減っていて面食らった。そういや最近は割と後回しにする作品少なくなってる。一時期は日に一本、週に7本ぐらいを目安に感想書いてたのを思い出した。まぁそれでもやはりこの期に及んでスルーしてる作品もそこそこあるんだけど。
 数ある作品の中からそんなにこれだという思い込みがあったわけではないのだが、そういや視聴してなかったな程度で選抜。今まで後回しにしてたんだからそもそも当時そんなに注目してたわけでもないハズ。実際にどうだったのかはわからないのだが、当時もそれほど大ヒットしたという記憶もない。が、一気見してそこそこよかった。トラブルシュートものではあるんだけど、そのトラブルは科学的命題をモチーフとはしているものの、実際にはファンタジーであって、でも解決はどうやら心理学というか精神医学の知見がそこそこちりばめられている感じ。ロジカルウィッチを除いて、ヒロインが主人公に落ちてくるご都合主義ではあるんだけど、主人公がなぜ主人公足りうるのはちゃんと作品中に示されてるし、だからこそブタ野郎というのもすごい納得。舞台装置はそれこそバブル期のトレンディドラマかと見紛うほどキラキラしてて、まぁそのへんは作品の方向性なので、合う合わないは仕方がないとは思う。軽妙なかけあいはちょっと洗練されていて批判を寄せ付けない感じ。
 最初に手掛かりがすべて開示されてるわけではないんだけど、ヒロインが抱えてるトラブルを解消していく過程はちょっとしたミステリ風味があって、しかもそれは頭脳を使ってしたり顔に解決するんじゃなくて、ちゃんと抱えてる問題や心情に近づくという手順を踏んでるので、物語にのめりこみやすいし、腑に落ちる感じも自然。個人的にはおるすばん妹のエピソードがなかなか印象的で、不登校の妹が、本人や周囲の気遣いの延長線上に不登校を克服するという顛末にしなかったのが新鮮だった。普通ならなんらかの解決をしたらよかったよかったのクライマックスにするのに、正反対なんだ…みたいな驚き。
 この作品を視聴して、終盤にふと思いついたのがキリストの言行録としての聖書。キリストは救世主として再登場してからほうぼうの村に立ち寄っては病人を直していくのだが、結局いまの精神医学とか心理カウンセリングって、彼の在り方を再発見してるだけなんじゃねぇの?という気がしたのだ。ローマに圧迫されたユダヤ人たちは、かといって旧来のユダヤ教の時代遅れな律法にがんじがらめにされて行き詰っていたわけだが、そこをパラダイムシフトを起こして回ったのがキリストであって、彼は行く先々の苦しんでいる人たちの原因に寄り添って、彼らに必要な救済を与えて回っていたわけだが、その構図がこの作品の構造だけでなく、現代の精神学的病理にも通じているんだろうなということ。まぁ経済的には停滞してたが、聖書の教えの庇護のもと、暮らしは決して楽ではなかったが安定していた中世はともかく、近代になって資本主義が蔓延して人々の欲望が解放されて暴力性を帯びるようになると、その過程で前近代的価値観が壊されていくのだが、結局のところ聖書に回帰していくのはなんの皮肉かと思わざるを得ないという。


 しかしなんだな、実写版はともかく、アニメ版も劇場版が作られてるんだな。これはちょっと手を伸ばして視聴してみるかみたいな気になった。画面的に虚構推理に似てるし、ヒロインのトラブルを解消する構図は俺好きに近いんだけど、テキストの出来はこの作品が数段も上って感じ。