やけに唐突に終わるのな。
なんか最后、真坂木と別れた公麿の足元にボールかなんか転がってきて、「それとってくださーい」とか言われて振り返ると、そこには真朱そっくりの女の子が!なぁんて展開を予想してたのだが、それはなかったな。まぁそりゃ真朱は公麿の望んでいた未来だからして、ED後の公園でくつろぐ人々を含む穏やかそうにみえたあの日本全体が真朱ということになるんだろう。通貨としての円がまったくなくなっていたのだが、通貨発行権を日本が失う変わりにいろいろなものが取り戻せたのなら、三國の妹もゝしかすると…なんてことも頭をよぎるが、真坂木が現れたってことはディールは有効であり、輪転機を2回も廻して未来全部を担保に取られた三國が無事でいよう筈がない。もし妹が取り戻せたのならそういう描写を1カットでも入れるだろう。
前半は怒涛の展開だったな。とはいえ戦いは単純だったけど。ポエムを絶叫しながらのバトルシーンは自分の望むところではあったんだけど、下手をすると空回りするのだ。が、もう涙が出て止まらなかった。今までの蓄積あっての事だろう。
真朱とのお別れのシーンもご褒美だったな。真朱のちょっとビックリした様子で、「舌を入れたな」なんて下世話なことを想像し*1ながら、出会い時にはあれだけツンツンだったのが、デレでもなく、こうホント穏やかにお互いを確認しあうってのがね、ロマンチックという表現も不適当だし、感動の1シーンってのも違うしで、表現が難しいな。
さて、もう最終回単独でなくって総評も含めてのことになるんだが、そもそもこの作品がカネの無意味さを説きながら、じゃぁ代わりに何を提示してくれるのか?というのがスゴク気になっていた。その代替物が陳腐なモノだと、この作品の意味がなくなるワケだ。まぁ例えばだよ、使い古されたものではあるんだが、「愛」だなんてのたまわれちゃあ卓袱台を返しちゃうよってなもんだ。さすがに物語の中途から連呼されていたから間違えようも無いとは思うんだが、そこに「未来」を持ってくることでこの作品が構成されていたわけだが、これが本質かどうかは別として、いやなかなか据え方や展開は良く出来ていたと思う。公麿の取り戻した未来ってのが、大型店舗式のスーパーでなく商店街だったり、同質集団がたむろってカネのかゝる遊びをして豊かさを示すのではなく、カネのかゝらない公園でのんびり過ごす家族を示すとかになっていたのもなんとなくわかるような気はする。気はするんだが、それって実は昔の日本に良く見られた光景であって、それは未来というより昔に逆戻りしただけなんじゃネェの?ってこともあって難しい。輪転機を逆回転させるって事は、時間を逆戻りさせるって事なのか?という疑問が湧いたりして、いや、それは違うだろと否定はできるんだが、これも難しいな。確信はさすがに持てなかったんだけど、三國が勝ってカネを弄ぶ状況が続いて状況は悪化していくばかりの救いのない結末にはしないだろうと思っていた。じゃぁ公麿が勝つとして、その取り戻した未来をどう見せてくれるのか?がポイントだったワケだが、歴史の不可逆性を考えると、単純に昔ながらの生活様式に戻ることではあまりに芸がないな、新しい提案をしてくれるのか?と思っただけに、まぁこれが精一杯だとは思うんだが、ガッカリというほどではないにしろ、そうワクワクさせてくれるものでもなかった。
三國との対比が軸になっていて、最終回の今回ですら三國もやはり日本全体の幸福について考えている一人であって、公麿と2人で対立して戦うのは不幸なことだという視点が最后まで捨てられていなかった。が、Qが戦いを放棄し、三國自身も負けを認める形になっており、そしてなにより輪転機を順回転させると日本が絶望的になり、逆回転させると最后の穏やかな場面になっていることを考えると、スタッフが今の政財界のやり方にはっきりとNo!を突きつけているのはわかる。
仕事をしていて、それもこゝ何年かで痛感させられ続けてきたことではあるんだけど、自分の行動がどういう結果を招くのか?ということに思いを至らせて行動するのと、目先の利益を最大化するために他人を切り捨てたり他者から奪ったりするのとでは、いくら全体のためだとか口では言っていても、もたらされるものは間違いなく一目瞭然のものであったりする。公麿に指摘されて動揺していたが、三國のやってきた事ってのは口では全体のためと言っていながら、実は自分のことだけしか考えていないわけだ。確かに三國のやってきた事を振り返ってみると、三國自身本当に自分のために他者を意図的に犠牲にしてきたという風には見えないんだが、現実社会ではむしろ意図的なのがたくさんいるから、そのへん注意してこの作品を視聴しないと見失うものは多いと思う。現実には三國のような善意ではあるが、物事をわかっていないという人間はいないのだが、三國を悪意のある人物として公麿と対置してしまうと、この物語が単純な勧善懲悪モノに成り下がってしまうから、三國に善意の下駄を履かせているだけってことには留意しとかなくてはならない。
他にもいろいろな主題があって、それはこういうテキストものとしては厳禁に近い手法ではあるんだが、繰り返しや答えの開示という形で示されていたので、割と間違う事は少ないだろう。曰く、「信用が大切」だとか、ED直前のまるでサブリミナル効果のような手法だったのだが、「I have control」だとか。後者はどちらかというと我欲の自制とでも訳したらいゝだろうか。
とまぁ終わってみればそれほど複雑なものでもなくって、しかし熱く語りかけるものがあって、でも描写には抑制が感じられて、毎回ワクワクさせてくれた作品だったな。今年はこれが一押しの作品になりそうなほどの出来。クォリティとしてはチープさが感じられるのだが、そんなのは全部吹っ飛ばすほど物語にのめりこませてくれたと思っている。個人的には荒削りな部分を入れたとしても絶賛したいぐらいだ。姿格好がどうしてもアニメ的な造形を使わねばならず、それはむしろ仕方の無いことであって、抽象的過ぎるディールのわかりにくさもあって、万人にお勧めすることはできないんだけど、自分的にはたくさんの人に視聴してもらっていろいろ考えてもらいたいから名作評価をつけたくて仕方が無い作品だった。もっと語りたい事はあるんだけど、息も続かないのでこゝらへんで。おもろ+。スタッフの皆様方には大いなる感謝を…。
*1:多分公麿が手を廻そうとして真朱に触れた瞬間ではないよな…。