C 第10話

 いやぁ、熱いねぇ。
 ようやく公麿と三國の対決の筋道が明らかになった。北米で、ドル安を防ぐために輪転機を廻したらドル高になるとか、いったいミダスマネーってのはどういう記号なのかわからないな。フツー$を刷ってそれで$以外の通貨を買えば、それは$が売られることになるワケだから、ドル安になるはずだろ。まさか刷った$を外貨と交換しないならしないなりに、別にドル高になるわけでもない。そしてそれは円についても、三國が輪転機を廻して円に寄生しているミダスマネーの流通量をふやしても同じだと思うんだよね。一時期国債のことかとも思ったんだけど、国債も発行すればするだけ安くなるハズだから、あまり適当でもない。が、結局のところ反対の結果をもたらすものであれば、カネとは逆の働きをするものとでも思っておればいゝんだろう。まぁフツーカネってのは例えばある企業の将来性に対して投資するものなんだから、ミダスマネーは人間の将来を奪うものとでも考えておけば、カネとは対極にあるものとして理解はできる。
 サトウはてっきり公麿を手駒として消費するのかと思ったんだけど、彼女の言っている事は本気だったんだなということが明らかになった。これは泣ける。そして彼女の墓標はそのまゝ道標にもなるんだよな。いちおう天涯孤独の身らしき描写ながら、彼女にだって家族や友人はいるハズで、ディールであれだけ壮絶な散り方をしたら当然にしてその影響は計り知れないものになったはず。そういうのも含めてみるとホント胸がアツくなるな。いや、そりゃフィクションではあるんだけど。
 公麿と真朱のやりとりも泣かせてくれる。真朱のようなかわいゝ女の子にあれだけ尽くされて愛情を示されているんだから、公麿も役得というか楽しんじゃえとまでは言わなくても、ある程度は心を入れ込んじゃってもいゝと思うんだよ。真朱が公麿の未来という要素を除いても、別にパートナーとの意思疎通を図るって意味でもちょっとしたコミュニケーションぐらいはするべきだろ。が、公麿が真朱に取る態度ってのは真朱が公麿の将来の子供だろうと未来の嫁であろうと、一貫して親の立場なんだよな。目の前にいる真朱は魅力的な女の子だとしても、自分のありうべき未来だと考えると、とてもそんな気になれないってのが近いのだと思う。前回までの公麿の父親の話にあるとおり、破産しても公麿はなんとかこの世から消えずに生きている、たぶん父親は公麿を守ったんだろうというサトウの台詞が身にしみているのが痛いほどわかる。いやね、これだけツンデレとかの萌え要素を借りながら、確かに萌えアニメとは一線を画す節度が見られてこれまた胸が熱くなるよ。
 三國もアレだな。描写的には彼は彼なりに日本を守りたいという気持ち自体は存在しているんだが、やはり他人の未来を奪っているということでどう考えても悪だわな。人が困っているのを助けるのに、他人の懐をアテにして、しかもそのドサクサに火事場泥棒を働くってヤツだ。それが「守る」というポーズで包まれているだけの話で、毒薬でしかない感じだな。まさか今の政権を予見したわけでもあるまいが、震災復興で大変だからと、必要もない増税を強制しようとしている野田と同じだ。まぁ三國のやってきた事って、それ以前に自民盗が延々国民の懐からカネを搾取しつゞけてきたことゝ同じ事ではあるんだけどな。
 さて、愈々次回は最終回。最初は勢いが続くかどうか心配してたけど、それは全然無用だったな。ディールがなんのメタファーなのか、そのディテールも気になっていたんだけど、最初のほうでとっくにそんなの気にしなくてオッケーって流れになったしな。深く読み込むとまた粗もあるのかもしれないが、こうなんていうのかね、鉈でばっさばっさと切れこんでくる主題の力強さからすると、もうこれで充分面白いと断言できる。