鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 第28話 おとうさま

 奪うものは、まず与える。(老子
 ホムンクルス達がおとうさまと呼ぶ人物はエルリック兄弟の父ではありませんでした…。なんだよ、それ。なんつーか、ミスリードとしてはちょっと稚拙だが、別にこれもアリといえばアリ。だが、コレをやりすぎると興醒めだわな。
 ヤオがホムンクルスの実験体になるのをむしろ好むってのは、驚きでもなんでもなく極自然な流れ。もともと不老不死の技を自分のために求めてきたわけだし。でもそうだとすると、部下がどうだのってのは白々しくはなるわな。
 やはり今回のポイントは、ヤオがホムンクルスになるために、グリード(賢者の石)に体を与える決心をすること。普通に考えれば、賢者の石による変革に耐えられるか耐えられないかの謎かけなんだけど(つまり、あそこで答えを間違えれば死ぬ)、ヤオの返答にグリードは驚いてみせたものゝ、実は初めっからあれが唯一の答えだったとしか思えない。
 しかし、じゃぁ大総統はなんで自分を失わないまゝ、ホムンクルスになったのか?を考えると、不思議ではある。ヤオがグリードに乗っ取られた理由として、最後グラトニーが賢者の石に変わり、こんどおとうさまによって生まれ変わらされるって台詞から類推できるかな。グリードも賢者の石になり、記憶は消されてヤオに移植されたって理屈。そう考えると、大総統はもともとお父様に自分を失わないという設定の元、ホムンクルスになる試練を課されたって考えるのが妥当か。まぁそれはともかく、ヤオは試練を乗り越えたということで。
 退屈はしなかったけど、構成として練りこみがたっぷりされているって感じでもなかったかな。前回指摘した賢者の石に対するエルリック兄弟の思いってのが今一見えないのが気になるし、あと2クールあると考えれば別段変に思うわけでもないんだけど、ヤオの体が乗っ取られるって要素がどうにも野暮な感じがしてならない。ヤオの件については、どうせホムンクルスの体を放棄するか、もしくはホムンクルスになった代償としてなにかを失うって展開がミエミエなわけで、話の転がし方によっては大化けもする可能性は十分あるにせよ、どうにも間持たせって感じが否めない。原作だとうまく織り込まれているのかな。