IWGP#5

 技能実習制度のお話。今回も駆け足だったけど、マコト同様事態の変化に戸惑えば、次にはその答えが用意されていて、まぁこれもご都合主義的な展開ではあるが、テンポ感があって今までよりは違和感がなかった。
 養子縁組を利用して日本に入国する手口もあったと思うんで、自分的にはあまり意外性もないしこれが拡大したらどーすんの?と思わなくもないが、ただ中国を題材にした実習制度のくくりで言えば、これはこれで精一杯の範疇だとは思う。マコトが地元の顔役にかなり近い人物で、養子縁組を仕掛けたのも彼の顔を潰さない程度で、しかもおそらく以後の付き合いのことも考えて厳選していたと思うし、そのへんはなんとなく理解できる。
 ただ、問題はもっと深刻化してるはずで、単純に技能実習制度で外国人を奴隷に使ってるから日本人は恵まれてるというのもちょっと時代遅れの感じがする。

  • 都市部と地方の経済格差、それも首都圏とは圧倒的な差がある。
  • もちろん大企業と中小企業の格差もある。いわずもがなではあるが大企業が地方の企業を搾取する構造が厳然と存在する。
  • 地方間にも経済格差はあり、技能実習生を使うところでもそれで大儲けしてるところとカツカツのところがある。
  • 技能実習生を使えば、その地での若者の就労先は当然無い。
  • かといって地方の若者が技能実習生と同じような待遇で就職したがるはずもないし、続くはずもない。

 このような状況が続けば、富めるものと貧しいものの格差は拡がるばかり。さらに、

  • 中国自体は経済発展を遂げたので、わざわざ日本に来なくても中国国内で働くのも選択肢に入り、実習生と言う名の奴隷の輸入先はベトナムカンボジアミャンマーなどの中国より貧しい国にシフト。

 なので、今回の話は若干古い話になる。20年前とかはコンビニあたりで中国人バイトが大半を占めていて、日本語の発音に違和感があってバカにされていたが、これもよく考えてみたら今回の話のようにオカシイ話で、言語学的にはむしろ英語に近い中国語話者が、日本語を学ぶことはかなり難しいことなのであり、学校の勉強をバカにしてた学歴の低い日本人が、発音がおかしいとはいえほぼコミュニケーションに齟齬を生じない日本語を習得してる中国人をバカにしてるのは愚かでしかなかった。そういう意味では日本がまだ恵まれてるって問いかけは至極真っ当。
 で、さらに事態は悪くなっていて、

  • 技能実習生を使っても、もう経営が続かなくてバタバタ中小企業が倒産したり自主廃業。
  • コロナ禍でさらに経営が圧迫。
  • アベの時代からだったが、菅がアトキンソンを招いて中小企業を積極的に潰してきてる段階。これで地方は更地にまでなる。

 技能実習生が必要なんだから、仕事先はあるはずなのだが、結局実習生の分だけ日本人が弾かれてるし、上記の経緯で富裕層と貧乏人の格差が絶望的に広がってる。アベの7年間でそれまでまだ存在が確認されてた中間層がほぼ消滅したといってよい。
 なので、今回被害者として中国人が登場してたのだが、これからはこの中国人の代わりに日本人の貧困層がそっくり入れ替わる可能性も高いし、外国との比較で言えばまだ日本人の生活レベルは高いままではあろうが、とはいえ、下手すると今回の中国人よりもっと酷い境遇に日本人がさらされる可能性すらある。で、中国人は今回の話のように人と人とのつながりを大切にして、そのようなコネで支えられてる部分があるが、日本人は地縁血縁を破壊された上でのこの貧困化なのだから、落ちぶれたらもっと酷いことになる。
 冒頭だけでなくヒキの場面でも日本人はまだ恵まれてると結ばれているのだが、そう考えていられるのも今のうちで、これから大半の日本人にもこのような状況が到来するよ…と自分は見たのだがどうか?。今回の話で日本人の暗い未来を予感させるようなところまで踏み込んでいるようには思えないのだが、アニメスタッフが今となってそれを念頭に入れてないはずがないし、普通に原作を踏襲した上で、行間を読む視聴者には無言の問いかけをしてると考えてもおかしくないとは思っているが。

体操ザムライ#4

 娘の担当回。ストーリー自体はフォーマット通りの浪花節だが、現代性も取り入れられていて普通に楽しめた。それにしてもレオの正体引っ張るなぁって感じ。もっと新キャラ登場させて作品をにぎやかにするのかと思っていたから、どちらかというキャラの掘り下げ方向なのはちょっと意外だが、個人的には歓迎の方向。

モリアニ#4

 実家を壊滅させた直後からの話で、トラブルシュートの開始。具体的な効能は知らなかったのだが、グレフルが出てきた時点でそこになにかの仕掛けがあることはわかるようになってる。子どもを見殺しにしたのは逆恨みじゃね?*1とも思うが、子爵がお抱えの医者を持てる財力なのは庶民からの搾取によるものだから筋は通ってる。まぁ別にこの作品、近代盛期のイギリスを題材にとってはいるが、あの頃のイギリスって酷かったよねということを言いたいわけではなく、まさに現代日本について言及してるだけなんで、庭師や子爵は一体誰のメタファーなんでしょうねということがわからなければこの作品を視聴する意味まったくないわけで。共犯関係になるから絆も深まるというのもなかなか業が深くてよかった。しかもモリアーティは教唆なだけで実際に手を下してないのもさかしらくてそれっぽい。

*1:現代日本だと間違いなく休暇をとった町医者を責めるので