盾の勇者の成り上がり視聴した。

 中休みを取ったとはいえ、2クール一気はちょっとしんどかった。異世界転生モノお腹いっぱいではあるんだけど、公式サイトのイントロを読んでそう悪くないかもと感じていたのでちょっと楽しみぐらいには思っていた。
 最初、主人公が冷遇込みで召喚される構造から、これもしかして外国人技能実習制度の日本人への転倒版?とか思っていたんだけど、数話見てどうも様子が違うと感じた。結局視聴し終わってみると、この作品、最終回が第4話のデタラメ決闘編と第21話の死刑場編と、あとは最終話の三回に分けてある。自分なりに解釈すると、最初の最終回ではブラック企業でこき使われてポイ捨てされる日本の労働者が救われる話、二回目の最終回では日本の国内問題が解決する話、最終回ではグローバル経済下で日本が取るべき方向性が語られているのかなと思った。特に中盤の話を視聴している際に気になったのは、この原作の開始日時。視聴し終って調べてみたらなんと2012年10月29日となっており、自分が予想してた範囲内にドンビシャで当てはまってた。
 ちょっと面食らったのは第2部でいきなりトラブルシュート物語になって、いきなり狼と香辛料かよと不思議に思っていたのだが、個人的にはこういう何でも屋的展開自体はむしろ好物の部類なので何の意図があるのかと思って眺めていた。結局終わってみたら、これ経済的にも政治的にもミクロマクロの視点を持ってきたという感じで、あぁこれ、なるほど最初っから商業的に売り出そうとしたら編集に止められるだろうなと思った。自分あまりなろう小説にそれほど文学としての完成度を期待しないが、こういうやり方はなるほどインディーズならではといったところ。主人公のライバルがちょっと稚拙に設定されすぎてはいませんかねと思わなくもないが、ヘンにライバルにも見るべきところはあるという描写にしてしまったら読者は混乱するだけのような構成なので、これはさすがにバランスうまく考えられてると思った。第2部は日本の戦後政治の宿痾的な構造から直近の混乱ぶりをうまく分解再構成して、フェイク混ぜ混ぜとはいえこう初心者向けに丁寧に説明しているので、作中キャラに何度も言わせている通り、なかなか作者めんどくさいことやってるなって感じ。気づけた人をニヤリとさせるものはあるだろう。
 原作は商業書籍にもなっており、どうもWeb版と商業版ではいろいろ違っているようであるが、このアニメ版を見る限り、なろうというプラットフォームをよく理解して原作者が設定したターゲット層によく届くように考えられた作品だと思う。ドラマ部分に注力したらそれはそれでもっと読者の感情に強く訴えかける作品をかけるんだと思うのだが、おそらく原作者あえてそこは薄味にして全体の構造を俯瞰しやすいようにバランス調整してると思う。自分なろう小説、最初勢いで読んでしまうが、中ダレするととたんに魅力を失う作品が多いと思っているが、このアニメ版の範囲内で判断する限り、そのへんの裁量なかなかのもんだと思った。