コップクラフト、キャロチュー終わった。

 どちらもアメリカを意識した仮想国家の話で、とはいえ動機が違うから同じ視点で比較はできないんだけど、なんか関連性があるような気がして一緒にしてみた。


 コップのほうは萌えフォーマットに準拠した珍妙な設定だなと思ってたのだけども、終盤に行くに従って悪くないんじゃないかと思い始めていた。あちらの社会一般的な社会問題について総花的に詰め込んだものなのかなと思っていたら、どちらかというと移民問題に焦点があたっているようで、もしかすると先日自民盗が通した移民法に対するアクションなのかなとか。主人公の名前は最初気づかなくて自分もアホやなと思うんだが、マトバ・ケイは日本人にありそうな名前だし、制度そのものはあちらのものを拝借しても割と日本を意識したものなんだろう。相棒のティラナが貴族だというのにも最初は違和感しかなくって、なんで貴族様がそんなに剣術に秀でているのかおかしくね?とか思ってたんだが、これもよくよく考えてみると江戸時代の支配者階級である武士が剣道を習うようなもんかと思ってやはり自分のアホさ加減に呆れてみたり。欧米のドラマで描かれるゾンビや宇宙人が、現実のイスラムとかユダヤなどの移民のメタファーだったりするように、ティラナなどの異邦人は今の日本での韓国人や*1貧困国の外国人労働者のメタファーだったりするのかもねぇ。かといって最終回に首チョンパされてた「堕落が」とか言ってた黒幕あたりは日本会議あたりなどのウヨカルトの主張と酷似しているし、やはり舞台は仮想でありながらも結局は日本のことを述べているんかねという感じ。個人的には前半部分にちょこちょこ混ぜられていたおちゃらけ萌え描写を削ぎ落として、もうちょっと切れ込みを深くしてもらったほうが見応えのあるものになったと思うが、それやるとあまりに堅苦しくなりすぎて遊びが少なくなってしまい視聴者を逃がすだろうからバランスとしてはこんなもんなんだろう。振り返ってみれば主人公の二人が最初は人間的にも完成されておらず、物語が進むにつれ深みが増していったように感じられ、物語もだんだんに論点が整理されてそれぞれの問題が冷静に浮かび上がってきたのは好印象だった。



 キャロチューはちょっと難しくて、これ、体裁的にも音楽モノとして作ってあるからドラマやメッセージ性に関してそれほど重きを置くのもバランス的に難しいんだろうなと思うので、正直自分の趣向に合う合わないは仕方がないんかなということ。ミュージカルで言えばウエストサイドストーリーのように最初っから社会問題が主要なイシューとして作られているのならまだしも、これはどちらかというとアメリカ音楽フリークが音楽メインに据えて社会問題は添え物としたのであろうから、それに期待するのは酷というもの。先日本屋に立ち寄ったらアナログオーディオのムックでキャロチューが特集記事で組まれていたから、やはり音楽方面でのプッシュだろうし。
 最終回で気になったのは、やはりアヴァンで毎回言われてた「奇跡の7分間」というのがどうにもわからなかった。当局がなんで目くじらを立てるのかもイマイチわかりにくい。英語の読解力が弱いので全然読みきれてないと思うのだが、「母ちゃん」と歌うあの歌詞がどう当局を刺激したのかわかんないし、まぁフツーに考えてみたら歌詞云々よりそもそもああいうゲリラライブ的なもの自体を取り締まるのが目的だと思うんだが、それに関してもなんで?と思うしかない。
 音楽に関しては、黒人白人の人種差別問題から避けて通れないし、この作品はそれから逃げてると書いてきたが、しかし終わってみて振り返ってみると、これはどちらかというと移民問題について触れているのであって、それが火星ということであれば最初の入植者(旧移民)と、その入植者が権力を確立した以降に入植した「新移民」との対立を描いているとも言える。これは確かにインディアン(ネイティブアメリカン)を虐殺までして国をでっち上げてきた欧州の入植者(旧移民)とその後欧州の入植者の利益のために強制連行で拉致されてきた黒人奴隷の関係を彷彿とさせるからアメリカをモデルにしていると考えてしまう。のだが、この物語で白人と黒人の人種差があまりにもスルーされている反面、この物語での火星上では旧移民と新移民の関係がクローズアップされていることを考えると、むしろ移民は韓国人とか、外国人労働者のメタファーなんじゃね?という気がしないでもない。前回の感想でも書いたが、終盤も終盤になって日本の転び公妨*2を彷彿とさせる描写を出してきて、いかにもアメリカを意識していると思わせて日本ともクロスオーバーさせてきたなと思ったので、そのへんのアイロニーがあってもおかしくはない。
 ただ、自分は別にあちらの音楽に思い入れはないし、そのへん視聴動機はいまいちだったし、最初っからメッセージ性に期待はしてなかったわけで、そのへん先入観はあまり変化がなかった。もちろん音楽自体はクォリティは高いし、前半で描写されていた勝ち抜き歌合戦での多様性の深さは純粋に面白かった。ただ、やっぱり上述の奇跡の7分間はそれほど奇跡とも思えなかったのは予想通りで、アメリカ音楽バンザイと言われても最初っから最後までピンとこなかった。
 あと、前述した通り、スタッフとしても意図しなかったことだと思うが、ヤバい政権はアーティストに平気で弾圧をかけてくるってのが現在進行系として日本の状況と「完全に一致」*3してたこと。あいトレの件がなかったらこの作品も音楽のクォリティは高いけど今一パンチの感じられない作品で自分の中では終わっていたと思う。

*1:もう太刀打ちできなくなって自民盗が差別の対象として諦めてしまった中国人

*2:どうやらあちらでも公妨を乱用する傾向にあるらしいが

*3:このフレーズアベがよく好んで使うよね