ろんぐらいだぁす! 第9話

 高宮、おまえはもっと飛ばしたいんだろ?。
 自分の自転車趣味が復活した2000年ごろは、サイクルイヴェントはほとんどなかった時代で、ロードレーサーを買ったらレースに参加するべきだよねという風潮があったように思う。こう、そこそこ長距離乗りたいけど、レースまではどうもって層は、以前某巨大掲示板コテハン同士が集まってオフ会をやるみたいな感じで、個別に企画するものであってという感じ。その後町おこしで自転車乗りを呼び込もうとする流れが生まれて、レースだとハードルが高いし、素人も参加できる形にしたら人数呼べることにならないか?という判断があったのだと思うが、それで最近はマラソン大会あたりと並んでこういう催しが増えてきたと思う。自分はまだレースに参加したこともするつもりもないし、イヴェントも参加したことはないが、楽しそうだと思ったので、これはなかなか初心者向けによく作られていて、ちょっと参加してみようかという気にさせやすいんじゃなかろうかと思う。
 よく亜美に歩かせる展開にしたよなと感心するな。せっかく自転車に乗っているんだから歩くのはもったいないし恥ずかしいと思うのは自然で、しかし坂がきついと踏むのは辛い。昔は前のギアで小さいほうは39T、で後ろのギアで大きいのは27という時代が長かった。ロードレーサーはレース専用機材という認識がコンポメーカーに強くて、某巨大掲示板でも別に素人は必ずしもレースに出ないし、プロじゃないんだからギア比が大きいのは辛いんだよ、で、コンポメーカーも商売なんだから素人に売らないと利益が出ないだろうし、実際販売数も圧倒的に素人が多いだろ?という意見が多かった。で、結局そのギア比多目の傾向が崩れだすのが10年ほど前で、しかし素人向けに配慮した結果ではなかった。ツールドフランスやジロデイタリアなどのメジャーレースに参加する選手でも、やはり坂を上るのはキツいらしく、その上選手によって力を入れてグイグイ登るトルク型と軽いギアでくるくる回して登る回転型の2種類がいて、やはり回転型で軽いギアを求める層がプロ選手ですらいるので、彼らにコンポメーカーが応える形で低ギアへの流れになってきた。まづ前ギアが39→34になり、そのあと後ギアが26→32となったのが5年ほど前か。39/27=1.44→34/32=1.06と、4割は軽くなるのだから昔とは大違い。もっと上の世代だと39/23=1.69という時代が長く続いていたので、彼らからすると軟弱と思われているかも。しかし、自分なんかはそれでもしんどいからと、今の常用車にはマウンテンバイク用を流用して26/34or36を嵌めているぐらい。さすがにこれだと坂で歩かなくてもよい構成だと思う。
 冒頭の亜美がスタートで待たされ追いかける際の焦燥具合は自分もよくわかる。特にスピードの遅い初心者は追い抜くことは絶対なくて追い抜かれるだけだから自分だけが取り残されるという気分に強制的にさせられる。とはいえ、スタート決めをしている運営の人のあり方は、チームジャージを着ているたった五人ほどの女子集団を分割することは素人相手のイヴェントではありえないので、さすがに不自然であって展開ありきのご都合主義感はある。
 自分的には仲良しごっこの部分がやりすぎだという感じなんだけど、初心者目線の部分はよく考えられていると思った。しかし、これは自転車に興味がある初心者が視聴して、これから自転車を始めるために参考にするようなそういう作品というのではなくって、むしろ自転車に乗りなれた層が初心者と一緒に自転車を楽しむときに注意すべき点を学ぶために見る作品という性質が強いように思う。おそらく原作者は自転車に乗りなれた人であると思われ、どうしてもそういう視点に立ってしまうとは思うのだが。いやまぁ自転車に関してはど素人だった漫画家が最初っから乗りなれるまでを漫画化してこんなところが楽しかった、こんな失敗をしたという体験談方式の作品もあるらしいんだけど、そういう作品もどちらかというとある程度自転車に乗ってある程度時間が経った人が「自分もそういう体験をして同じ思いをした」という読み方をされることが多いので、ホント、初心者が読んで自転車の世界に入りたいという作品を作るってのは結構難しいんじゃないかとは思う。まぁプリンは食べてしまったらなくなるし、食べなかったら味はわからないのということなのかな。自転車に乗ったことがない素人が自転車の楽しさなんて描けないわけであって。それでも近いものが初心者を引きずり込む漫画には求められているのかも。