Working!!! 第5-1hsp話

 うーん、感想書くのに微妙な感じ。というのは、ラヴコメとしては良くできているんだけど、最近では低賃金カルテルなる新語が生まれている状態なので、そのへんの絡みをどう考えたらよいのか自分でも複雑な心境なのだ。
 結局黒髪ロングメガネ(松本麻耶)の取り上げがほとんどなかったのだが、これをどう考えるかも一つあって、そのへん特定できないのはもどかしい。つまり、ドラマ的にこの作品できちんと扱われているキャラはどいつもこいつも「大いに欠けたるものゝある人物」であって、おそらく松本麻耶は普通の人間、つまり取りえがないとかそんなんではなくて、欠けるところがないからドラマに絡ませてもらえなかったゞけの話で、おそらくそこには明確な断絶がある。しかし松本がドラマに絡まないことによって、ちょっとばかし差別的構造が出来てしまったのと、それはともかく上記の問題で自分が考えるのが難しくなっているのが、実はこの店には松本以外の普通の人間が勤務しているのだけども、それは松本に代表されて描かれなかったと見るべきなんじゃないかということ。アニメのシフト表を見たら、おそらく描かれてないキャラはいないと見るべきだとも思うんだが、例えばキッチン担当が大体佐藤と相馬の二人いて、一人がシフト抜けしたらもう一人が大変という台詞があるものゝ、冷凍食品を電子加熱装置で温めて出すのではなく、キッチリ調理しているところからすると、佐藤・相馬以外にもっと調理担当がいると考えるのが当然。そうなると、この作品は店舗には従業員がもっといるのだけども、ドラマとして特定のキャラだけ抽出して描いたものと自分は考えている。まぁ別に登場キャラだけで店がまわっているというファンタジーでも別に構いはしないのではあるが。
 で、ドラマとしてはラヴコメ以外として、「どこかしら大きく欠けたところのある」人間同士が、それを補い合って成長する物語であって、轟は成長したからワグナリアを卒業、種島はあれほど店に貢献していたのに、佐藤に轟が、小鳥遊に伊波(これは逆か?)が、相馬にすら葵が与えられたのに何の報酬もないのかと思ったら、成長?の末にチーフの座が与えられた。
 でもって、ワグナリアはどう考えても彼ら欠けたるものが安心していることのできる「居場所」であって、まぁいわゆるアジールとして描かれているわけだ。で、一番最初の命題なのだが、現実のファミレスはちょっとアジールとして機能しているとは言いがたいと思ってしまう。前期までの感想に、店長は店員を守るために体を張ることのできる昨今では稀有の存在みたいなことを書いた記憶があるが、そうやってある意味理想化されている一方、葵やなずなを働かせても賃金を払わなければオッケーとか、フランチャイズのコンビニは家族まで駆り出すことが前提の実質労働搾取であるような臭いが感じられたりして、なんかそういうブラックな職場を理想化してもよいんかね?という疑問は湧く。但しこの作品では、普段従業員に対して緩いので、貸し借りからいうと別に問題とするほどのものではなく、コンプラ違反だと騒ぎ立てゝもなというものアリ。
 というわけで、この作品のウリである、軽妙なやりとり、欠けたものどうしが織り成す成長ドラマ、心と心のすれ違う機微だとか、いろいろ評価できる要素は多いんだけど、それをファミレスという今となっては現実の職場としてはブラックとしか考えられないものを理想の職場としての舞台設定をしてしまうということにどうしても引っ掛かってしまう。で、それは決して原作者が悪いとかそんなんではなく、予想のさらに上を行く現実の地獄化の速度に驚くばかりという。そこまでさかのぼる必要もないのだが、自分が高校生ぐらいのときは、そもそも高校生目当てのアルバイトの数なんて知れていたし、その数少ないアルバイトだって雇う側もそれほど期待していないし、猫の手でもあったらありがたいぐらいの作業ぐらいしかなかったと思う。少なくとも雇う側が授業に出るなと雇った大学生に強制するほど逼迫した状況ではなかった。雇われる側も生徒や学生なら腰掛け程度であって、仮に業務内容の隅々まで知悉して働く場合も、ちょうどある店の常連が店が忙しいときに気を利かせて店を手伝う程度のものであったろうから、高校生のぽぷらがチーフに指名されて、頑張りますって光景は予想もできない感じ。いやまぁそりゃ個々ではもっと厳しい例もあったのかもしれないが…。
 だから、単純な視聴後感は決して悪くはないのだけども、しかしながら純粋に喜んでいられるほど現実はおそらく甘くはなくて、この作品を見て喜んでいちゃいけないんだよなと思いつゝも、そんな現実ってなんだろうね?といろいろ考えさせられる時間であったというのが正直なところ。