氷菓 第22話

 寂れ行く地方の行方についての京アニなりの解答なんだろうか。
 いやまぁおそらく原作で語られていることだろうし、それでもその部分を切り取ってきたとも考えられるのではあるが。なんかどうなんだろ?。大きな流れは変えられそうにないし、でもその地に根を張ろうとする心意気ってのを応援するとかそんなの?。
 いちおう最終話らしい。地方の行事に主人公がピンチヒッターとして参加し、ちょっとしたトラブルの原因について謎解きをする話。謎自体はどうでもよいのだが、前回福部の話で相手の気持ちを受け取るかどうかについて話をしておき、ほんでもって千反田が主人公にホの字であることを示してからの今回の話だと、もうそういうまとめ方なんだろうなという気がしてならない。それ以前までは主人公と千反田の二人きりの絡みの話ばっかだったから、そういう構成を考えるとね。
 というわけで、主人公視点だと千反田の手引きによるリア充へのお導きってところだが、千反田視点だとこれは明らかに彼女の婿取り物語であって、この最終回の彼女が永住の地と決めた地盤をわざわざ口に出してまで主人公に紹介というからにはこれは求婚であって、それに対する主人公の答えが経営的戦略眼云々というものであって、おそらく物語は以降続くから(ハッピーエンドで終わらせるわけにはいかない)その答えのシーンはなかったことにされたってことなんだと思っている。
 さて、なんか途中自分にとってはどうでもよいような謎解きが提示されていて、その中で思春期特有の鬱屈した姿が描写されてはいたが、総じてクォリティは高い感じ。自分はもうちょっと主人公のリア充への道が明るく描かれるのかと思っていたが、よく考えてみたら日本のミステリー…というよりは推理モノは、割と日本の因習であるとかそういうのを解くものが長い間メジャーだったわけで、そういうのが下地にあると把握してないとダメだったかな。とはいえ、あくまでターゲット層は中高生であるはずで、それほど陰湿なものを描くわけにもいかず、キャラの悩みとターゲット層の悩みを重ねてきたように思える。その結果もともとエンタメ方面だと思っていたのが中途半端な純文学成分が混じって自分の中ではどうにもすっきりしない感じだ。自分の中では京アニ作品はテキスト方面は若干弱いと感じているので、それを人気原作モノを題材にすることによって少しは緩和方面にあるとは思ったが、10割のうち一分の足りない部分がもやもやする出来。ジュブナイルものとしては、主人公と現実との関わりがあまりに浅薄で、なにか事に当たって切羽詰って真剣にならざるを得ないということもないし、思い悩むこともほとんどない。もちろん扱う事件もたいしたことはない。この作品がそういうスタイルだからそれが悪いとは言わないんだけど、気合を入れてコストもかけて描写してそれで視聴者(読者)に何か深く刻まれるものはないだろうし、もともと原作者もそういうものを意図はしていなかったろう。自分もこの作品を視聴するに当たって(この作品の概要はわかんないまゝ突入したが)、そう深いものを期待してもいなかったし、軽いテーマを扱う分についてはライトに鑑賞するつもりだったから、全体的に不満はないんだけど、そのそこはかとなく散りばめられているその鬱屈部分がちょっと自分には違和感を覚えてしまったゞけであるという。ちょっと甘いかもしれないがおもろ+の実力はありそう。
 うん、まぁ京アニ作品といえば、この直後に放映された作品であるたまこまーけっとが、ちょっとした評価を得ながらも商業的には決して成功したとは言いにくい結果だったと思うが、そのほうがちょっとした心意気が感じられてよかったかも。とはいえ、もうちょっと直球勝負をしてもいゝんじゃないかとは思うな。