夏目友人帳 肆 第10話

 ニャンコ先生、よだれ、よだれ!。
 ほおづきって、豊月って書くんだな。で、月分祭も夏目が勝っての豊月が見つかっての大団円の巻だった。
 前回の柊の懸念も杞憂に終わったし、今回名取が白笠に投げかけた問いかけもたゞの勘繰りに終わって、じゃぁ何が全体の状況として問題だったのか?と考えると、なるほど守り手の交代なんだなと思った次第。
 もちろんこの物語では豊月・不月ともに神であることに間違いないんだが、実は彼らは人間そのものゝメタファーだろう。豊月の封印をといた直後に夏目がかいま見た豊月の昔の記憶だが、豊月と不月が神社の境内だかで踊ってたが、あの様子だと人間が催した祭そのものなんだよな。つまり今回夏目がつけていた面自体が、祭では神を模すものになっていて、アレをつければ誰だって神になれるのだ。いや、だって今回だってあの面をつけた夏目がどの妖怪にも神として認識されてたろ。
 要するに今回の話の登場人物は全員人間であって、豊月・不月は過去三隅山を管理していた名主、白笠・黒衣はその名主のもと三隅山周辺に住んでいた住民だろう。で、祭の結末を楽しみに鑑賞*1していたのが現在三隅山周辺に住んでいる住民。もう昔の価値観や経済体制では山を守ることができないから、今住んでいる人たちでやって下さいってのが本旨。名取・夏目は両者の架け橋となった第三者的立場の人なんだろう。豊月、いや昔の三隅を管理していた人間が、「いや、もう山の恵みだとか農業でやってける時代じゃなし、貨幣経済を知っている人間でこれからはうまくやってもらいたい」というのを夏目を通じて現代の住人に伝えたってことだろう。豊月・不月達はあの地を去るとか言ってたが、実際には虚空に消えて行ったのであり、他の土地に住処を求めてのことではない。現代の日本にはもう彼らの居場所はないのだ。
 柊も切ないよな。白笠に語りかけた言葉はそのまゝ柊自身にあてはまることであり、だからこそ事情を知っている視聴者の心にも響くと思われる。たしか柊は夏目が助けたんじゃなかったっけ?。で、事情によって名取に引き取られたんだけど、柊がいくら夏目に仕えたいと思っていても夏目にそういう余裕がなかったわけで、仕方なくというほどでもないんだろうけど名取に引き取られたという風に見えた。過去の恩に報いたい、もしくは絶えず気を遣ってくれる夏目のために腕にまじないを書いたのも、やはり夏目に対するある種の思慕のためだろう。名取と夏目が横のつながりを保つのを最もよろこんでいるのが柊だろうし、切ないながらも微笑ましくも思っていることだろうと思われる。

*1:これ、観光客としての立場なんだよね、そうじゃなくって祭ぐらい住んでいる人間で管理運営してやれよってことなんだろう。