西洋骨董洋菓子店 〜アンティーク〜 総感

 微妙な作品だったわな。かといって面白くないと断定できるところがあるわけでもない。主人公の誘拐事件については、そこから何を切り出そうとしているのかが良くわかんないな。一癖も二癖もある店員たちの日常のあれこれを描いたというだけではありふれているから、事件性のあるエピソードを組み合わせてみましたというものなのかな。(人は誰でもつらい過去を背負って生きているし、生き続けていかなくちゃならないというのも浮かんだが、そこまではっきりした主張かな?。)
 結局ゲイについては、やれ世間的に認知すべきという主張でもないようだし、いやそんな大層なものでなくただゲイとはこういうものなんですよというのともちょっと違う感じはした。大のオトナがケーキにひたむきになるところをクローズアップというのともなんだか違うようだし、1話1話で主張したい小テーマはあるのだが、だが全体としてどうか?と言われればなんだか困る。
 で、この作品のウリである、ケーキの描写へのこだわりなんかを見ても、絵もそんなに悪くはないし、BGMも雰囲気に合ったしっとりとしたもので評価できる。声優の演技としても、間がきちんと確保されていて、演技そのものを楽しむことができるものになっていた。その間がどうだったかと言えば、直前に視聴者に投げかけられるものがあって、それは何かを考えさせるものではあまり無く、むしろその間を雰囲気を楽しむための至福の時間として使ってください…みたいな贅沢な使い方。もちろん贅沢といってもいい意味での使い方だとは思う。
 そういうわけで、視聴している間は退屈もしないしストレスも感じないが、他人に勧めるかといえば積極的にオススメというわけでもない。腐女子向けといっても、十分男のアニオタでも拒否感無く楽しめるような作りだし、そういう設定でもなければ…アニメを見てみたいが、かといってオタク臭のする作品はイヤだし…といった時に、男が美少女アニメや女アイドルに惹かれてテレビ番組を選局するように、女の視聴者に対する取っ掛かりとしてゲイという釣り針があるのだろう。で、メロドラマでも別れただのくっついただのと展開の激しいものを好む層ではなくって、ちょっとステキでゆったりとした時間を過ごしたいF1層をあてこんでの作品と思えば、よく出来ていると思う。まぁ原作者よりプロデューサーの思いが強い作品だろうとは思う。見て損したとはちっとも思わないし、それこそ自分のような男にも和みに近い時間を過ごさせてくれて印象は悪くないのだが、私感は入ってしまうがインパクトの弱さを考えておもろぐらいかなと思っている。