アタックNo.1 第60話 車椅子の監督

 そういや準決勝2試合を二日にわけてするんだな。昔はのんびりしていたものよ。
 さあ、寺堂院との試合か?と思ったら、インターミッション。でもこういうの好きなんだよ。ナカが怪我ってのはさすがにやりすぎだろうと思った。フツーは試合直前は体力温存のため、わざと練習をさせないぐらいのハズなんだが、そこらへん富士見学園も寺堂院も理屈付けがされていた。
 富士見のほうは、結論を先に言うと、既に試合の勝ち負けを捨てているということなんだろう。誰も彼もが相手に勝てるとも思っておらず、とにかく対策を練るのに精一杯。富士見のほうは、チームを立て直してから日が経っておらず、付け焼刃の連続である。正直準決勝まで勝ち上るほうがおかしいぐらいだ。3年生の大沼はバレー部の混乱の責任を取るという意味でも試合を捨てるというのは筋が通っていると思われる。2年生も最近まで下働きばかりでまともな練習をやっていない。まして1年生はいくら実力があるといえども、体格的に差がある高校生相手に場慣れしていないなど、不利な状況てんこ盛り。ここは困難が立ちはだかったときに、自分たちでどう対処するかという、自律組織を作ることを優先したとして何の不思議も無い。だから、各人がそれぞれ自分に何ができるのかを考えて自主的に考えているという描写になっている。出来過ぎのような気はするが。
 対して寺堂院は、試合前日に練習といえども母親の前での最終調整でしかなくって、それまでの練習の描写が無くとも王者の余裕が感じられる。戦史をひもといてみても、たいてい準備が万端整っている陣営が勝利している例が多い。三年連続優勝と言っていたから、チーム内の混乱など無いのはともかく、優勝するための練習メニューに専念できるだけのシステムが整っているということなんだろう。納期前日まで突貫作業で間に合わせようという富士見が勝つ見込みは感じられない。どうせ相手を上回ることなく立ち消えになるか、バグを潰しきれてなくて途中で自滅がイイトコだろう。相手も同じ進捗具合なら勝負はわからないんだろうが、少なくとも相手は三位一体の攻撃等必殺技の他に、さらに秘密兵器があと呼吸を合わせるだけという完成度で仕上がっているわけで。
 なんか母ちゃんいろいろツッコみどころが多かったな。とはいえ、良くできた人という感じはする。3人バレーを咎めだてといて、あんさんのせいやあらへんとは、代理コーチはヒヤヒヤもんだろう?。自分の体の弱さをわかっていながら3人娘の練習を指導するとか、娘にとっては至らない箇所があったら母親が心配して体に障るって思うわけで、なんか死を盾にした脅迫っぽい所業だよな。かといって、厳しくはあってもちゃんと個人の特性を見据えて人格まで指導しているわけであり、単なる優しくて厳しい母ちゃんというだけでなく、尊敬に値する人間として描かれてはいる。実力差があってのことだろうが、こっそり観察していた*1こずえにも寛容で、バレーを愛し、フェアであろうとする姿はこちらの涙まで誘う。
 最後、お涙頂戴を厳しく排除する構成にもグッとキたよ。うーん、自分的には次女かな?。まだ日常でのキャラ描写が足りないけど。

*1:医者を呼ぶことでバランスをとっている