二十面相の娘 第19話「地獄風景」

 群衆の執着もたいがいなもんだよな。
 あと3話らしくて、どうもこの教授との対決が一応のクライマックスっぽい。世界をまたにかけていただけに、もっと壮大な敵を想定していたんだけど、恐ろしいのは兵器の破壊力だけで、敵の親玉としては小物っぽい感じが否めない。っつーか、コードギアスフレイヤ弾頭といい、断面がスッパリと切れているような破壊のしかたは流行なのか?。
 アクションシーンはこの作品ならではの迫力で、いきいきした描写。チコが走り詰めで息が切れるなどの細やかな描写には感心。しかし、追いかけっこがいやに冗長に感じた。
 チコ・春華・トメの三人娘をざっと見てみると、確かに女っぽくないわけではないのだが、使命感というか、純粋というか、どうにも単純な目的意識しかないと感じてしまう。確かにチコあたりは、素直ないい娘であり、困難や努力を厭わず、二十面相に対して純粋な思慕の念を抱いているように、こんな娘がそばにいたらなぁと思わせるだけのキャラクター作りではある。「おじさんを支えなくちゃ」といった台詞は視聴者に対しての殺し文句だろう。
 しかし、二十面相の仲間たちがほとんど皆殺しになってチコが一人取り残され、彼の足跡を追ううちに彼女なりの生きる目的なり、戦争の傷跡に対するなんらかの働きかけの方向性なりを見つけるのか?と期待していたのだが、そういう部分はあまり見受けられなかったな。かといって、そんなにチコの生き様が二十面相にあまりに依存しすぎているとも思わないのだが、なんか弱いと感じられてしまうというか。まだまだ物語が終わったわけでもないので、今なんともいえないとは思うのだが、チコなりのよりよき正義が、二十面相との関わりにおいてでなく、彼女自身の内面から発動するようになるのだろうか?。
 まぁいくらチコがおじさんキラーだと言っても、この様子だと二十面相と添い遂げるという結論にはなりそうもないわな。さすがに、この騒動の終わりに二十面相が人に軽蔑されるような正体を明かすなんてこともないのだろうが、まぁいいトコ最後に死別だとか、また二十面相が行方不明(生死不明)になるとか、ともかくお別れでヒキになりそうなんだよな。で、それが面白いのか?と言われると、見せ場として美しいかもしれないが、どうにも物足りないというか。仮にくっつく展開だとしても、それもどうかなぁ?と思うし。
 物語の時代が戦後間もないという設定ではあるのだが、パンプキンシザーズを視聴して感じたように、終戦から遠く隔たった現代のことを風刺しており、これだけ長い時間経ってもいまだ戦争の傷跡は癒えていないというメッセージが込められているのかな?と考えてみている。今のところそれを示す徴候はほとんど無いと思うんだけど、ここ数話あたりの核エネルギーと思われる描写をみていると、国際的な核拡散の傾向や、それに伴う日本の核武装論が幾分盛り上がってきているようにも思える最近の世相批判も少しはあるのかな…と勝手に想像してみた。
 自分の目で確かめて、自分で考えるという強いメッセージがあるのだが、かといって、そうやってみて小さくても確実な何かを獲得している・もしくは獲得しようとしているようには見えなくって*1、なんかインパクトが弱いんだよな…いや、作品のクォリティはかなり高いとは思うんですけどね。やっぱ要求高め?。

*1:いや、確かにチコは大いに成長はしているのではありますが。