ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル 第12話

 わかってゝ騙されるセシル。
 いやぁ、裏も何もミエミエでしたね。マクスの餌に釣られてセシルが翻弄される姿など、母親をダシにうまく転がされていたワナ。バタフライ法律事務所の面々もほとんどがやめとけといってるのにそれでも弁護を引き受ける。まぁこのへん、セシルが弁護を引き受ける動機付けとしてはよくできているんだけど、なんか尺が足りないせいでわりかし最小限度の描写で情緒は少なめ。
 しかし、公判前整理手続きとか、裁判(モノ)に詳しくない視聴者にはめずらしい場面が描かれていたり、日本の検察がいかに腐っているかの暗示がよくできていた。まぁ正直今の日本だと検察官と裁判官がツーツー、ナァナァだったりするのだが、それまで正確に描いてしまうと暗澹たる気分にさせられるというか物語にならないので、裁判官があくまで*1公平な立場で描かれていたワナ。本当にあくどい役人や経営層あたりは、自分で手を汚さず周囲が自分の意のまゝ動くよう権力を使って誘導するので、マクスは小物といったところだが、そこまで今の支配者層を正確に描くとこれまた視聴者にはわかりづらくなってしまうので、やはりマクスは悪人なんですよというのを明示的にしているので、これまたなんとも。
 なんか本当に最后まで尺が足りないのか、エピローグでセシルの家族のその後だとか、マクスがどうなったのかとか、それこそクィン警部あたりのその後なんかもあっても良さそうなもんだが、そういうのを全部ぶっちして弁(魔)護士セシルの今後に期待してくださいってなEndだった。まぁマクスあたりは、今までの描写を振り返る限り、証拠になるものがかなり多そうなので、少なくとも深大寺(元)裁判長あたりの殺人未遂は計画的犯行であることが明らかであり、魔道書あたりも含めて執行猶予のつかない実刑判決は確定っていったところか。
 さて、終わりましたねぇ。視聴直後の実感としてはよくこれだけ盛り込んだよなという印象。実際の法律ではなく、架空の法律ではあるが、そもそも法とは何か?に迫る主題、法曹界の問題点、社会問題、そういう法律に関する諸々を整理はしているが詰め込めるだけ詰め込んだ感じ。2時間ドラマでいえば、1つのトラブルシューティングにその2時間1本が充てられるわけで、少なくとも12話という長さは3本しかなく、セシルの事情に切れ込むのであれば、少なくともあと3話分は欲しかったところ。あとしんどかったのは、大人があまりいなかったこと。社会の不条理も噛み締めた、物語全体を〆なくてもよいが、この作品に通底するテーマを想起させるような人物がいなかったというか。もうキャラは与えられたロールしかしておらず、だからこそ混乱せずに視聴していられるんだけど、自分的にはそういうキャラが欲しかったという我儘。
 というわけで、いやどうなんだろ?、なんかもったいない作品のような気がした。火曜だか金曜だかのサスペンスドラマのような、もうわかりやすい演技というのがスラップスティックにしか感じられない実写モノに比べると、こうキャラのベクトルが観客席ではなくて舞台上で激しく飛び交っているような作りのように感じられて、結構その部分は評価したいんだよね。こういうのは真実をどう見せるのか…というのが凄いミソで、あまりあからさまだと興醒めだし、現実に近づければ近づけるほど視聴者にはわかりづらいものになってしまう(そもそも現実の人間は他人に本当のこと*2を言ったりしない)ので、そのバランスは少なくとも2時間ドラマよりは取れていると感じた。が、やっぱアニメとかお子ちゃまメディアなのか、なぜかロボットが不意にあらわれる謎な展開がどうもなぁ。どうなんだろ?、ロボットアクションを取り入れたから、その分だけ余計に視聴者を獲得できたりするんだろうか?。魔法のハッタリ感は特にOP映像にあったが、あのような発動で十分だとは思うが、まぁあれだとCGを使えないから、アクション部分のコストダウンにロボットを採用っていったところなのかな。
 まぁダラダラ書いてしまったが、やはり盛り込み過ぎで、もうちょっと絞れなかったものか?というのが一つ。自分が考えている最中にどんどん次の要素が現れていくので、なんかもういゝやって感じになる。DVDでも買って何度も繰り返して視聴してそれで初めてこの作品で言いたかったことの全貌がわかり、それが巧妙に組み合わされているということもわかる…ということになるんだろうけど、自分が録り溜めている作品でもほとんどが1回しか視聴しないし、普通2回まで。よっぽど気になって何度も見返すことがないわけでもないんだけど、同じ作品を10回視聴するよりは10本の作品を1回視聴するというのが大半ではなかろうか。司法制度の入門として、フェイクを多用しながら、法律以前に人のあり方を問うているような気がしており、そういうのがぼんやりとでも伝わってくる作品なだけに、なんか中途半端さを感じてしまったが、良作だとは思う。おもろ+。

*1:本当に罪を犯したかどうかではなく、そういう風にうまく理屈を説明できた者の側に立つ

*2:ウソを言うというのではないが、人間というのはこう見られたいという姿を他人に晒したり、そのための発言を無意識のうちに行う