もやしもん リターンズ 第11話

 なんかフツーに大団円だった。
 マリーの家族摩擦の解消は今までの積み重ねもあってフォーマット通りでありながら、充分感動できるものだった。長谷川の件は家庭の問題を居場所問題にすり替えていて、まぁ違和感がないわけではないが近年の居場所というテーマに沿ってそれなりに視聴者に寄り添った形になってるんだろう。自分が原作を読んでいた時分は、あまりそのへんの家族関係に関しては深いものを感じていなかったのだ。割と薀蓄だとか、旅行記にあたる部分を楽しんで読んでいた記憶がある。
 マリーの父がジュースを作るっていうくだりも読んでいるはずなんだけど、憶えてなかった。自分もなんで果実のうまさを殺して渋いワインなんぞにするんだろうかとは思うので、充分「アリ」だとは思うんだけど、品質の高いジュースってったって、720mlボトルや1ℓパックでやれ300円だとか500円だとかなんだろうね。そういう商売が成り立つんだったら飲むほうよりは作るほうをやりたいぐらいだ。まぁフランスとかの欧州だと、日常飲用用のテーブルワインは水ぐらいの値段*1らしいので、自分が思っているよりジュースの価格は抑えられるのかもしれないが。自分も宴会ではノンアルコールビールなので、仮にそういう用途が開発されると決して不可能ではないとは思う。というかそうしてくれ。
 というわけで、この第2期は第1期ほどのワクワク感はなかったかな。なかったから悪かったというつもりもなく、逆に人間関係のテーマをじっくり描くとか、映像の工夫とかのほうが重要で、薀蓄をしつこくやったところで啓蒙の効果はそれほど無いと判断したんだろうなと思うと、ブラッシュアップされたという印象は強い。たゞ、そうなると日常に鋭く切れ込んでいくんじゃなければ、当然にして淡白にならざるを得ないわけで、今回は長谷川の結婚騒動が茶番に見えて仕方がなかった。結局農大祭は長谷川を追って渡仏するための資金稼ぎ、で、長谷川を追っていったら、長谷川問題はたいしたことが無くてマリーの家族関係を見せるための呼び水にしかなってないという構造になってしまっている。冒頭の地下道騒動もなんか抜けが良くなかったし、そういうのもひっくるめて無理をせず、非日常を描きながらもリアリティは失っていないという面で好印象。でもこの作品のキモである、「菌を通じて何かを鮮やかに描き出してくれる」って側面*2はあまり感じられなかった。マリーの酒蔵も沢木あたりが迷い込んで寒いという情報をなんらかの手段で伝えたら良いだけで、彼の菌が見えて会話できるというスキルは全然必要ないんだよね。クォリティは上がったけど、自分にとってはもう一歩日常を鋭く切り取って欲しかったってとこですかね。
 リアリティついでに言わしてもらえば、OP映像の及川のバニー姿にグッとキた。腰周りの太ましさが整形っぽくなくてよろしい。本編では一瞬しかバニー姿の露出はなかったんだけど、その分視聴者サーヴィスとしてOP映像にはめ込んだんだろう。GJ。で、どう考えてもスポンサーがつけば続編が作られるというヒキ。自分はこういう穏やかな作品が好きなんで是非続編も視聴したいんだが、インパクトが少なくて見過ごしそう。というか、第1期から第2期まで5年のブランクがあるんじゃん。次は4年後?。おもろ+。

*1:日本は水がべらぼうに安い。ワインなんかでもフランスで2〜300円のものが、輸送コストをかけて輸入されて小売に並ぶと1000円ほどになるわけで。

*2:そもそも自分がこの作品に期待しているのは食文化の部分。でもまぁそれを前面の押し出しすぎると客を逃がすんだろうね。