君が僕を 4 (ガガガ文庫)、読了。

 もちろん予告したとおり、読み終わったのは昨晩。…なんだけど、朝方とはいわないまでも結構夜更かしゝてしまった。自分的にはこの第4巻にかなり期待してたんだけど、ほかにも作業しながら読んでしまい、集中してなかったせいもあると思うんだが、どうにもそれまでの巻に比べると押しが弱く感じた。
 というのも冒頭付近でヒロインが死亡してしまった(いちおう第1巻で20年ほど前の回顧という形を取っている)というのが述べられてしまってちょっとね。で、オモロイのはそのヒロインの死については描写が無いんだよ。物語を〆にかゝっていて、現在進行形の語り口と回顧口調の両方で進んでいくのでダイナミズムは捨てられている模様。もちろんその分切なさに振っていると思うんだけどね。いや、自分的にはこの4巻の構成がそれぞれ起承転結に対応していると感じられ、なるほどゝは思う。
 ヒロインがやっている「恵まれさん」という設定も、どうもネットを見る限りこういう風習があったというわけでもなさそうなんだが、この描写だといかにもありそうって感じがするんだよね。まぁキャラ設定からしてこんなの実在の人間でいるはずもないってのがてんこ盛りなんだけど、ごくごく自然な筆致。ファンタジーとかリアリティといった単語を使いたくないほどなんか別次元にある。
 第3巻でも述べたとおり、主人公は別に女でなくても…というより男としてのセクシュアリティを捨て去った男とみたほうが自然な感じがする。確かに恋愛モノと分類されるんだけど、精神的な繋がりがメインなので、そのへん純度が高いイメージだ。すごくこの感覚を表現するのが難しいんだけど、敢えて喩えるなら普通の男女の恋愛だったらガツンと効く酒だが、これはいくら飲んでも酔わない水のような酒といったところ。水のようだから味がないわけじゃなくって、すっきりしていながらも味わい深いって感じ。いや、忘れてくれ。
 というわけで、自分の中では近年稀にみる「文字を読んでいる感のない」小説だった。必要な表現を、それもホントギリギリまで削ぎ落として作っている。まぁ習慣になっているからまったく無かったわけでもないんだろうけど、一字一句を読み飛ばすことがなかった。でもさらさら読めちゃう。内容は小難しい要素が配置されていながらつっかゝるってことがない。これは拾い物でした。