シャイニング・ハーツ 〜幸せのパン〜 第8話

 海賊はリックと敵対するのかと思っていたら。
 うわぁ、今回も全編にわたって泣かされる。しかし、さすらい人ってみんな過去の記憶をなくしてるのな。たゞ、その過去の記憶というものがなんの記号なのかは色々考えさせられて面白いな。リックたち若者にとっては前回も述べたとおり、逆説的に自分の可能性って考え方もできる。今回のフローラ・ディラン・マデラなどの大人にとっては文字通り思い出したくない過去、もしくは捨て去りたい過去だったりするんだろう。ともかく、島で住むには必要の無い記憶であって、記憶の種類とかは人それぞれだから余計な詮索をするなって類のもの。ある意味島は現実にある理不尽だとかそんなのと断絶したユートピアって感じがする。
 で、島が仮にユートピアだとして、それは具体的に何を想定しているのか?と考えてみたんだけど、自分の経験ではバブル以前の日本のような気がしてならない。バブル以降日本は欲で目が眩んだ人間達がマネーゲームに狂奔してその結果日本を破壊してしまうんだけど、島の外の世界ってそういう欲まみれの世界であって、さすらい人ってのはそんな外の世界で傷ついたり傷つけたりして心が壊れてしまって、その地での記憶を抹消して癒しのためにあの島に療養・安住しに来るんじゃないかなんて思ってしまう。
 いやねぇ、この会話劇ですよ。まぁ言うなれば、このテキストだって使い古されて手垢のついたものではあるんだろうけど、ファンタジーという舞台と、登場人物が謎めいているせいか、見せ方が斬新って感じなんだよ。フローラを母と呼ぶあの少年はきっとフローラとディランとの間の子供なんだろうなと思うんだけど、それも後付けのために余韻を持たせているように感じる。ヘンな話少年を先に出してしまうと却って理屈っぽくなってしまう。そして、これだけ記憶が無いということを繰り返して視聴者に問いかけしているところをみると、フローラだけじゃなくって、あの三人娘も実は過去の記憶はちゃんと戻っていて、そのことはわざとリックに告げない*1って形になっているんじゃないか?という気もしてくる。
 いや、ホント、最初の2〜3話ほどは懐疑的だったんだけど、こゝに到って自分の中ではかなり注目度の高い作品になっている。パンもちゃんとかけがえの無い日常を表す記号となっていて目的は果たしている。後はこのかけがえのない日常を壊す展開となるんだろうけど、自分としてはこの優しい世界にいつまでも浸っていたいというか、でもそうだとたゞのヌルい作品で終わってしまうしでなんとも。

*1:自分だけ記憶が無いとなると、おそらくリックは必死になって記憶を取り戻そうとするから、それを避けるため。これも物語によくあるパターン、記憶を取り戻してしまうとあの人はきっと私の元には返ってこないってヤツ。