人類は衰退しました 総評。

 うーん、難しい。評価をすること自体がという問題もあるんだが、そもそも映像化するのが難しい作品だと初めから思っていた。自分が気になっていたのは原作の持つニュアンスをどこまで表現できるか?ということだったんだけど、初っ端から@中原麻衣の演技に戸惑ってしまったことは素直に反省したい。で、雰囲気についてはかなりハードルの高い作品だと思わされる。上記でも書いたが、けだるくぼんやりした雰囲気を表現するためにはどうしても「間」が必要なのだが、圧倒的に尺が足りない。「間」を確保すると話が先に進まないので、これは構造的なものだ。
 逆に視覚的な部分はさすがプロだと感じた。まぁ原作を読めば、具体的な描写にはなっているので、なんかわけのわからない空間でどう表現したらよいのか迷うような背景は無いといえばないのだけども、「間」が足りないために表現しづらいニュアンスをパステル調の色彩を使った絵柄で見事に補っていたと思う。
 で、自分が目的としていたアイロニーだとか人間社会について深くツッコむ部分はちょっと薄めだったように思う。よく見れば確かにちゃんと描かれているんだが、アイロニーがキツいと客を逃がすかもとスタッフが思ったのかどうかはわかんないが、どうにも自分にはヌるい感じがした。
 で、まぁこれは程度問題であって自分の思い過ごしなんだろうなとは思うんだが、妖精さんへの切れ込みがもうちょっと欲しかった。そもそも人間が衰退した理由のうちの一つは人間自体の愚かさに内在するっていう部分があって、そういうのは話のネタに使われているんだが、じゃぁなんで妖精さんが人間に成り代わって繁栄しているのか?、人間の愚かさの対極にあるものを妖精さんが持っており、そういうのがクローズアップされるべきと思っていたのだが、それは思ったより前面に出ていなかった。提示の仕方で、妖精さんの行動が奇天烈ではあるんだが、実はその人間が戸惑ってしまうようなその行動こそが、人間が解決し得ない問題を昇華させるものである…といった部分がほとんど見られなかった。アニメ版では妖精さんはあくまで脇役に徹しているといった印象だ。原作を読んだら妖精さんの悪ノリな会話も結構あるのだが、そういうのもかなり省略されていて、あくまで物語の主人公は「わたし」ら人間達であって、妖精さんはスパイスって態度が貫かれている。まぁその意図もわからんことはないけどね〜。
 というわけで、全体的に見るとアニメ化が難しそうな作品をよくぞこゝまで映像化したもんだという感心と、原作の持つニュアンスをもうちょっと楽しみたかったという物足りなさがないまぜになった複雑な感情だ。「間」を確保するために原作1話分をアニメ2話分にするところをアニメ3話にしてしまうと今度は間延びしそうだし、そこらへん難しいところ。せっかく映像化するんだったらもうちょっと踏み込んで欲しかった話もあったし、ラストの話のように原作よりアニメのほうを評価したい話もあった。まぁアニメが原作の販促という目的からすると、古本とはいえ自分は当時の最新刊6巻分を一気買いしたということからいうとうまくのせられた感じなのだが、タイトルに見られる人間社会を見直させるといった意味では物足りない感じだ。ちょっと厳しめに+を抜いたおもろというところで。