夢喰いメリー 第13話

 なんか、ミストルティンに勝っちゃったよ。
 うーん、確かにカタルシスなんだけど、よくわからんな。勇魚の夢魔を送り返すんだったら、早めにやっとけよという感じだし、あきらめないこと自体が強さってのもわかるが、そう決意するだけの現実でのフラグ立てが無いので、自分にとってはちょっと消化不良的な印象を受けた。まぁよくよく考えたら、勇魚の夢魔を送り返した時点で、勇魚自身の脅威は去っているわけであり、ミストルティンを倒す必然性はなくなっちゃうんだよね。でもそれは問題を先送りにしただけであって、夢を守るというミッションは頓挫って形になるので、こゝは一つミストルティンにはご退場いただいて、メリー側に成果を持たせようってことなんだろう。
 最終回の出来としてそんなに悪いと言うほどでもないんだが、なんか自分にとっては不完全燃焼気味なので、なんか鬱屈してしまうな。多分原作は連載が終了していないだろうから、改変して無理矢理終わらせたんだろうと思われるのだが、いや、なんかもったいないなと。人気が出たら2期をという話も最初からなかったのだろうし、そうだとすると上手くまとめたとしか言い様がないしな。そういや飯島がミストルティンの器になったって由来は示されていたのかな?。示されているとしたら数話以内のことのはずなんだが、記憶がない。ジョン・ドゥも中盤あたりにポッと出た割にはその後出番が無く、この最終回での決め台詞で被さってきただけだったし、もうちょっとキャラの掘り下げ、連関を示して欲しかったというのはある。いや、尺の問題で無理だったんだろう。
 さて、総評なんだが、寝てみる夢から人間が生きていく指針としての夢というものに移りつゝ、社会問題や人間の生き方に焦点を当てていく方法には、どうも最初から戸惑った。まぁ最初からメリーにはユメもキボーもありゃしないと言わせていたから、この作品のテーマは寝て見る夢で無い事はわかるんだが、せっかく抽象的な概念から入ったんだったら、なんかまどろっこしいことをしなくても良かったのに…という感じは受ける。だからこそ、最后に勇魚の夢云々で、夢魔を送り返す返さないでもたもたしちゃうんだなと。たぶん勇魚の夢魔を送り返しちゃったということで、彼女は絵の仕事につくということを諦めている…忘れちゃっているということになると思うんだが、この作品がじゃぁ一体なにを言いたいのか?とふと考えてみて迷ってしまう。この就職難の時代、見果てぬ夢を見ることがそれほど正しいことだとも思われないし、比較的裕福だった時代のことを思い出してみても、夢と現実のバランスを取るというか、生活重視であまり夢に過大なものを抱いてもいなかったと思うんだよ。そりゃ餓死するほどでもないが、今が結構しんどい時代であるからこそ、現実に対応して我慢し続けるだけが人生なのか?という問いは有効であり、そりゃ果たされなくとも夢の一つや二つぐらい見てもいゝだろ?とは思う。
 が、今までを振り返ってみて、なんか夢の位置付けがすごく不安定である。フツーだったら見果てぬ夢は現実を知らない子供が無邪気に見るモンだろうと思うのだが、幼女の回ではいきなり友達云々の話だったろ。で、例えば中曽根臨調が女性を労働力化するために主婦以外の選択肢というのをことさら取り上げて、男女共同参画社会だのといったまやかしを喧伝したわけなんだが、この作品では見果てぬ夢を見せていたのが現実には騙す側の産業界だとか政治屋じゃなくって、だいたい現実を見ろと言ってる筈の学校のセンセーだというリアリティの無い構図になっている。で、それを何とかしようとしている夢路がまた考えのしっかりしてない少年であって、判断力も対応力もないという。いや、もちろんキャラの年齢が大きくとも小さくとも、並みの大人顔負けの判断力を駆使して、それでもなお夢の破壊者には歯が立たないって構図にされても困るといえば困る。今の日本、個人が夢を追い求めようと現実を見据えて生活するにしても(特権階級の)コネもカネも無ければどれも叶わないし、また現実の我々もいろいろな手段を(特権階級によって)封じられており、なかなか厳しい状態である…って構造を良く示しているとはいえるんだが、なんかこう前向きな指針というか力強い介添えが欲しいというか…。まーそりゃ「あきらめない」が大切っちゃー大切なのはわかるんですけどぉー…みたいな?。この作品がそもそも我々に寄り添ってくれるんなら、そんなまどろっこしいことしなくてもさぁ…って悶々とさせられるな。
 まぁ提示として割り切れないものはあるんだけど、世の中そんなもんだよなって事と、いやいろいろ考えさせられたし、なんにせよ大切なのは孤立化しないことってのが言いたいんだろうな…なんてものもあって、上記で述べてきた鬱屈ほど悪い作品ではない。作り手は真剣なんだろうなというのは伝わってくるし、直裁な言い方を避ける事は一つの手法なんだろう。先の読みやすい展開だと「またか」という先入観を持たれてしまうわけであり、そのへんはご愛嬌だろう。社会的問題をてんこもりにされて「どうだ!」と言われても困るのであり、中高生向けとしてちょっとひねってみましたってことであれば、充分目的は果たせているんでないかと。音楽も良かったし、まぁ全体的にクォリティは高かったな。なんか物足りない感じはするのだが、おもろ+ということで。