フリージング 第12話

  “つるぎ”と読んでいたゞきたい。
 いや〜、ほんっとぉ〜ぉに'80年代のフォーマットなのな。ガネッサの死に生きはなんの冗談かと思った。元々身体を吹っ飛ばされても、頭とかじゃない限り再生可能という設定なんだから、人の命の値段は極端に安いんだよな。だったら死の値段をごまかすなよってんだ。最初から昔の物語の踏襲ですよって構成だったから怒りを覚えたりはしないんだが、ま、フツーに笑うワナ。今まで苛めてた先輩と妙な仲間意識を覚えたり、訳のわからない力の発動で無敵化したり、ホント、こゝまでやるかというほどの徹底ぶり。'80年代当時のジャンプの構成要素、友情・戦い・勝利から全く逸脱していない。
 サテライザーとパンドラということだったが、自分なんかは前回も予想した通り、聖骸にノヴァが乗り移って、そいつと戦うってことになるのかと思っていたのだが、違った。まぁ対パンドラだもんな。で、一時はノヴァに乗り移られ、力のコントロールを失ったサテライザーが、自分と戦うってことなのかとも思ったが、それともちょっと違ってた。ということはサテライザーが戦ったパンドラって、小説家志望のあの娘ぐらいなモノで、それを指していたのかな。
 ボスキャラ戦を含むクライマックスは、サテライザーとカズヤがいちゃいちゃする最高の舞台づくりに徹するのか?とも思ったんだけど、そういう方向にも突き抜けてくれなかった。いや、まぁそういうのは確かに不謹慎なのではあるんだけど、じゃぁ主題ってなんなのよ?と言われて、あんま見当たらないんだよな。
 平時にはいじめがあっても、緊急時には対敵でまとまるってのにもリアリティがない。ホラ、むかし東條英機って売国奴がいたろ?。あれって、対敵で何をしたかしってるか?。自分の気に要らない人間は激戦地に送って全員戦死させたんだぜ。イジメをする人間って大抵そんなことしかしないだろ。まぁヤツの場合は戦陣訓なんていって、気にいらない人間だけじゃなくって、生きて虜囚の辱めは受けず…つまり部下は全員成果を上げられなければ死ねといった過酷なもの。
 個人的な描写がなかったが、最強と思われる生徒会長もノヴァのフリージングに全く歯がたたなかったし、サテライザーの無敵覚醒がなかったら全員死んでたろ。それでサテラに頭が上がらなくなったってのは、単に強い者にひれ伏しただけ*1であって、なんつーか真の友情ってのとはちょっと違うよね。まぁ戦友意識って案外こういうもんなんだろうなと思うし、命のやり取りで育まれる戦友意識のほうが友情よりも濃いってのはそうだと思うんだけども。まぁ順当に考えてサテライザーの成長なんだが、いや、別に彼女の不遇な生い立ち、理不尽な学園生活を考えると、本来あるべき立場を取り戻しただけであって、それは確かにサテライザーが変わったという事にはなるのだけども、成長したってのとはちょっと違うしな。いや、カズヤの姉の妄想を通じて成長したってことは言えるよ、言えるんだけど、それは本筋じゃないだろ。で、カズヤとの人間関係もなぁ。そりゃ主張が無いというわけではないんだけど、散逸していてどれもこれも小さい。大きな主題があるのではなく、散りばめられているとみてもいゝんだけど、それも狙ったものなのだろうか?。評価できないってことはないが、やっぱストーリー自体どっかで見たものであり、それもあまりひねることなくパクってきたろ…的なもので、それにまたどっかでみた小エピソードを散りばめたっていう、まぁ一種のコラージュ作品のようにも思えた。
 自分的にはサテライザーとカズヤの不器用なコミュニケーションを描いていた中盤が一番面白かった。まぁこっちが恥ずかしくなるほどクサい展開ではあったのだが、なんでだろ?、あれがいゝんだと思ってしまうんだよ。単なる吊り橋効果であって、自分は一人の視聴者としてカズヤと同一視してサテライザーとの擬似パートナー体験を妄想したってだけなんだろうけどな。しかし、そうはいっても自分のあり方はカズヤのような直球勝負ではないし、なんていったらいゝのかな、結果にならないけど通じてるってのがツボなんだろうな。いや、やっぱうまく表現できない。
 というわけで、総評に入ってしまっているが、やっぱパンチラというかパンモロは自分的には要らなかったかな。視聴者を獲得するためにお色気が必要なのはわかるし、いや、正直自分もムフフなところがないわけではないんだけど、バランス的に多すぎかなと。リアリティなど要らないんだけど、やっぱ自分がオッサンなのかな、あまりあけっぴろげだと隠微さがなくてダメなんだろうか?、いや、やっぱこれもわかんない。自分にとって評価できないってのは、やっぱ感覚だけだな。
 音もそう悪くも無かったし、強いて言えば極々フツーの、最大公約数を目指して凡作になりましたって作品だろう。あまりテキストの出来がいゝとも思わなかったんだが、不思議とストレスの少ない作品だった。自分が期待していたのは、学園描写から現代社会の厳しさを表現し、その中でたくましく生き抜く姿をもうちょっと抉り出して欲しかったが、結局のところ真に迫るものではなかったというのが惜しい…というか、考え抜いて視聴者をうならせてやろうという気概は初めっからなかったろ?というもの。いや、いゝんだよ。今ドキ、むしろ古典を読む層なんて絶滅しているだろうし、アニメという敷居の低いメディアをつかって、古いフォーマットの物語を提供して、気軽に視聴できる作品をつくろうってのは、悪いことじゃないし、むしろ手軽な作品はあったほうがいゝ。そうであるならば、スタッフはちゃんと仕事をしている。たゞ、そういう作品でも、深く視聴者の心を抉る描写の一つや二つぐらい考えてもよかったんじゃねぇの?という気がするだけだ。自分的に受け付けない作品ではなくって、肩透かしを喰らいながらも、ちょっとした描写から考えさせるテーマが見え隠れしていたりしていたので、その分緊張感は適度に保たれていたかなとは思った。おもろ-。

*1:とはいえ、強大な力に命を助けられて、自分の卑小さも含めて深く考えるきっかけになって、それまでの自分のあり方が変わるってのはそんなに評価できないことでもないのだが