封建制がいいのか機構国家がいいのかわかんないんだけど…。

 オリエンタル・デスポティズム―専制官僚国家の生成と崩壊を読んで、まだうだうだと考えつづけている。前エントリーは要するに、日本はほぼ一貫して封建制であったが、ほんの一時期機構国家になりえていた時期があり、それは意外なことに戦後成長期がそれであったというものだ。大宝律令なり明治維新間もない頃ってのは、確かに制度として水力社会・機構国家を目指してはいたんだけど、早い段階から無効化した。専制政治という意味で国民が一番苛烈に抑圧されていた時期は東條英機内閣なんだけど、これは機構国家にはあてはまらない。なぜなら水力社会や機構国家は富を生み出す装置が実際に国民を豊かにしていた…すなわち国民を食わせていたが、東條内閣は逆で、むしろ国民の犠牲の上に成り立っていた…すなわち国民に食わせてもらっていたわけだ。鍋釜まで供出させた政権って、縄文期以来、日本の歴史の中で東條内閣ぐらいだぜ…。
 さて、やはりこれからの日本のあり方ではあるんだが、その前に世界の情勢をいろいろ勝手に解釈してみたい。
 まず、西欧だが、EUとしてまとまってはいるものゝ、政治的に一元化しているわけでもなく、やはり封建制とみてよいだろう。合衆国だって基本移民を使い捨てだから、機構国家を志向して国民全体を食わせていこうって体制にはなりにくいと思われる。即ち封建制。南米も外資が政治機構を牛耳っているところは封建制だろうが、キューバベネズエラあたりは、国民を食わせていこうという意思がありそうで、言い切ってしまうのは危険だが水力社会をめざしていそうである。中近東はどうだろうな?。これも感じでしかないんだが、どちらかといえば水力社会を志向しているんじゃないかと思うのである。財産私有って点では、特定の権力者に集中していそうなのだが、彼らすなわち支配者ってイメージが強い。合衆国の侵略を受けたアフガンやイラクは合衆国エージェントの働きで、封建制になるよう誘導されているっぽいが、イスラム圏は大体水力社会に馴れていそうではある。
 中国は共産中国は確かに水力社会ってイメージが強いが、改革開放期以降はむしろ封建制に移行しているようなイメージである。やれチベットウイグルで暴動が起きているって事は地方勢力が隆盛し、中央政府がそれを統制できてないってことだろう。ロシアはどうだろ?。冷戦崩壊時から一時期はCISとなり、連邦から独立した事は封建制ってみるべきなんだろうけど、プーチン以降のロシアはどちらかといえば機構国家を目指していそう。国歌もソヴィエト時期のを復活させたらしいし。もう時代的には農業が基幹産業ではないのだが、かといって機構国家の富の製造装置が各国望むまゝにうまく効果を発揮するものでもない。国民を食わせ、国民に文句を言わせずいうことを聞かせるってのは難しくなっているのだろう。人もまた流動するしな。だけど、大まかにみて伝統を重視し、宗教観の強い国は水力社会もしくは機構国家寄りというイメージが強い。
 さて、日本は機構国家から封建制への移行時期なんじゃないかということなんだが、なんか把握は難しい。たとえば官僚制ジェントリーであろうと、封建貴族であろうと、それに該当する層が見えにくいのだ。前にも書いたとおり、それらになろうとしているのは、高度成長期の日本が機構国家であったとして、支配者たる自民党・それに付き従う官僚・財界であり、それらが婚姻関係を結んでブロック化・棲み分けしているわけだろ。わかりにくいわな。で、それらが日本の土地をどう切り分けて彼らのうちで分配をするのか?ってのが、自民党主導の道州制だったってワケだ。道州制なんて別にそこに住む人たちの自治って観点なんて初めっから考慮されてない。そもそも昭和の大合併・平成の大合併で住民単位の自治組織が根本から解体されてきた。そうやって地縁を破壊した上で、上記自民党由来の政官財複合体であるところの官僚制ジェントリーが封建領主としておさめる領地が道州だというわけだ。そもそも昭和期から一貫して国民の生活が悪化し続けていることから、自民党主導の道州制が実現すると庶民は今まで以上に奴隷化する。ヘンな話だが、欧米を中心とする、昔からの亜周辺はいまだに封建制を志向しており、また自民党政権期の日本も封建制を目指していたわけなんだが、合衆国を発信源とする金融危機アイスランドやUK、最近ではギリシャが崩壊したことなどを見るにつけ、封建制は危ないなぁと思わざるを得ない。実際に日本の庶民の生活もどんどん悪化しているしな。
 で、どうなんだろ?、やっぱり今一つここは高度経済成長期の機構国家を目指すってのが、今のところの選択肢一択なんだと思う。で、支配者は、高度成長期の自民党という複合体だったように、集団統治体制を敷き、全国から優秀な人材を官僚としてあらためて募集するってことなんだろう。とにかく現官僚のうち、自民党に毒された有害官僚は放逐なり、天下りとして閑職においやるなりして、影響力を削ぎってところかな。たぶん民主党が目指しているのがそれだろう。もうちょっと変化のつけようがあるのかなと色々思いを巡らせてみたんだけど、とにかく、欲の皮のつっぱった今の連中を追い出して、方針・方策はいろいろ取り集めるけれども、施行の段階では全国一斉が求められそう。地域の特殊性とか、地域の独自性ってのを今まで試してきたけれども、やはり県レヴェルで上手くいった例はほとんど無い。あったとしてもきわめて限定的だ。やはり絵空事だったのだ。
 まぁ難しいのは水力社会・機構国家で、それぞれ灌漑・工業のような、富を生み出し、国民を食わせていける装置が何なのか?ってところだろう。たぶん民主党はその装置というよりは技術をエネルギー自給・高度循環社会・(二酸化炭素排出抑制というよりは、)エネルギー効率の高レヴェル化って考えているのだろう。戦後一貫して第三次産業の就業割合が増加してきたわけなんだが、結局商業分野ってモノなり価値なりを右から左に動かすだけで食っているって人間しかいないわけだろ。そもそも食うために必要な財を生産しているのはきわめて限られた人数、第一次産業と、高度成長期から一貫して減りつづけている第二次産業しかいないわけで、ここに人を再配置する必要がある。特にエネルギー自給を上げるためには太陽エネルギーを利用せねばならず、そのためには国家が広い土地を管理する必要があり、土地転がしで儲けている業種はこれから抑制されていくんじゃないかと思うのだ。すなわち土地私有の制限だ。*1で、土地に寄り添うことで雇用が創出され、その土地で生産されたエネルギーや食料などの財によって国民を食わせる。農業*2や技術*3を複合した、消費財というよりは生活財の生産装置を主とする水力社会・機構国家って方向のような気がするんだよな。国民もそれで食えるようになりゃ暴動も起こさないだろうし、暴動を起こさなければ支配者も国民を抑圧する必要もないだろう。

*1:庶民程度が持つ限られた面積の宅地はそれほど影響は受けないんじゃないだろうか。

*2:植物の光合成によってつくられた有機物をエネルギー資源として利用

*3:農業によって得られたエネルギー資源を改質