オリエンタル・デスポティズム―専制官僚国家の生成と崩壊読了。

 うーん、500頁超の大著なんだけど、さすがに疲れた。大体20頁読むのに一時間ほどかゝった。多分全部読むのに20時間ほどはかけているだろう。そういう速度でも、字面だけ目で追ってて、中身はほとんど頭に残ってなかったりすることがあったので、理解したものかどうか。でもまぁ思いついたことを書き留めておくメモということで。
 学術的なサイトではないのだが、要約としては、
 連載「ゲーマーのための読書案内」第46回:『オリエンタル・デスポティズム』 - 4Gamer.net
 が適切だろう。
 まず、自分が本書に期待したのは、水力社会(圧倒的な生産力をもつために、人口扶養力が高い)がいわゆる専制国家としての帝国を成立させるものだとして、その特徴とは何か?という部分だった。まぁ水力社会のシステムとは何か?というのが知りたかったわけだ。上記リンク先にある通り、水力社会というのをひとつのモデルとして、

  1. 水力社会中心(帝国) 四大文明の地で発祥。東洋的専制とは中国を指していっているらしい。
  2. 周辺 水力社会中心の周辺部。ローマ帝国もそうだが、ロシア帝国、そしてレーニン没前後からのソ連
  3. 亜周辺 周辺よりさらに外側に位置する西ヨーロッパや日本。

 これらの分類により、圧倒的専制性が灌漑による食糧生産のコントロールすなわち水力社会の程度で説明できるというもの。要するに水の管理がしっかりできればその扶養力のため、支配者が専制的であっても下っ端はグダグダ言いながらも結局は従うよってことだろうと思っている。対して、亜周辺などは、そういう水管理が出来てなかったら、支配者は下のものを食わせられないから、下のものは下のもので上のいうことなんか聞きゃぁしないわなってとこか。
 で、上記リンク先にもあるんだが、財産所有の類型で、分類がされていることが面白かった。

  1. 単純 財産所有が農業、工業商業において一般的にほぼ認められていないもの。
  2. 複雑 財産所有が農業、工業商業において認められているもの。
  3. 半複雑 財産所有が農業においては認められていないが、工業商業においては認められているもの。

 例えば土地所有について見れば、口分田のように、国家から耕地を貸与され、死後は国家に返還するようなパターンだと、それは土地を所有しているとは見なされないわけだ。が、荘園のように貴族が土地を占有し、子孫に世襲させるようなパターンだと、それは土地を所有していると見なされる。水力社会の特徴は、この土地所有がほとんど認められないというのが顕著らしい。なぜなら、水力社会はその圧倒的な生産力から、土地から得られる収穫を税金として収奪し、その富こそが権力の源泉になりうるからだと思っている。もし土地所有を認めてしまうと、富が土地の所有者に偏在し、それは国家を脅かす存在となる。だからこそ、水力社会は法律で分割相続を規定し、個人(貴族など)に富が集中するのを防いだ。たわけの語源が、長子(特定の子孫)相続をしないと、どんどん土地が分割され、“イエ”が潰れるってことらしいが、なるほどである。

 で、水力社会の対立概念としては封建制というのがあげられる。

  • 水力社会は支配者と支配ツールとしての官僚、そして庶民という構造になっている。
  • 封建制は支配者と封建領主との対立構造となる。

 中国では周代、すなわち春秋戦国時代や、清朝滅亡直後の軍閥割拠の時代は封建制といっていいだろう。が、秦とか漢、そしてまさに灌漑事業の最高潮期である隋や唐(本書では遼を挙げている)なんかは水力社会とみなすわけだ。