天皇制による、日本政治の無責任体制。

 民主党が今まさに検察によって攻撃され、どうにも東京地検特捜部ってのは戦前・戦中の特高警察そのものだなと実感する日々が続きますが、みなさま、如何お過ごしでしょうか?。マスゴミによる情報が錯綜しているため、政策報道が民主党によるアドバルーンなのか、それとも本気で主張しているのかが読み難くなっております。自公政権が倒れたのは幸いなんですが、かといって民主党が善なのか悪なのかは別問題で、そしてまた民主党内部にも自民党シンパがいるようでは、なんとも判断のしづらい状況。下手をすると民主党はワイマール化するんじゃないかという危惧もあり、予断が許せません。正直なところ、民主党に期待しているのは、政策よりなにより、自民党、およびその関係者への厳しい断罪であって、これは一刻も早く実施してもらいたいところ。何とかならないもんですかね?。
 さて、題意の天皇制についてなんだが、たいしたことはなくて、結局「組織の上位者がデタラメをやって実害が出たとき、もれなく当事者は責任逃れをし、そのしわ寄せは末端の現場に押し付けられる」というもの。まぁこういう現象は別に日本に限らず、外国にも頻出するのだが、外国の場合、容赦なく上位者が責任をとらなければならないことが多々あり、日本はほとんどそれが無い。
 天皇制のあり方自体は、実は皇室の生存戦略として機能し、実は日本にとってそんなに実害が無い。なぜなら、

  • 基本的に、皇室は政治に直接関わったり、口出しをすることが無い。

 からだ。それを忠実に守る限り、皇室が非難をされることも無いし、そのせいで国内が荒れることも無い。
 歴史を振り返ってみれば、文字として記録が残され始める飛鳥時代から、既に天皇蘇我氏に牛耳られて、政治の実権を失っていたように見える。大化の改新だって盟友の中臣氏の助けが無ければ実権を取り戻すことが出来なかった。続く奈良時代には多少天皇家が実権を握っていたにせよ、皇室内での争いがあったり、やはり官僚の支援無くしてはありえなかった。すなわち、天皇個人のリーダーシップが発揮されることは稀であったといってよい。で、平安時代は貴族が実権を握り、鎌倉以降は武家政権が続いた。近代も、基本は政府高官が実権を握って貴族化し、やがて軍部が暴走、先の大戦の敗戦でも特権階級の構造は基本温存されたまゝ、現在に続いてきた。繰り返すが、有史以来、天皇が政治に介在する事はほとんど無かった。
 だが、天皇は権威として存在しつづけた。政治の実権を握る貴族なり武家なりは、天皇から政治執行権を認証されることで、地位的にはトップではないが、事実上日本の支配者となった。事実上の支配者が失敗すれば、そいつを解任すればよいだけだ。天皇自身は初めから政治に関わっていないから、結果責任を負わなくてよい。これは当然の帰結だ。
 しかし、それで責任問題が解決するのならよいが、大抵の場合しなかった。なぜなら、その失敗した支配者はNo.2であり、No.1の天皇が責任を取らずにNo.2に責任を取らすのであれば、No.2はNo.3に責任を転嫁することが許されると思ってしまうからだ。だから大抵の場合失敗した上位実行者は下位層に責任を押し付けて居座るということが常態化した。とうぜんNo.3は下がいれば、No.2がNo.3にしたことが、No.3がNo.4にすることも許されるだろうということで、責任を転嫁する。それは連鎖し、もう下がいなくなった末端に責任がすべて降りかかって、そこで止まるということになる。
 これがヨーロッパだと上位管理者が責任を回避出来ない状況が時としてよく起こる。ナポレオンは失敗すれば追放された。普仏戦争でもナポレオン三世は追放された。WWⅠでも、ドイツに負けて休戦協定を結んだロシアは、結局ユダヤ人たちに革命を起こされて皇室は断絶。ドイツ皇帝も亡命、トルコも帝政消滅。WWⅡは、以前も述べたが、ドイツは指導者が自殺。イタリアは民衆?による惨殺。日本のみがのうのうと生き延びた。
 で、面白いのは、天皇は政治に口を出さない限りは安泰だが、逆に政治に口を出すと手痛いしっぺ返しを受けているし、それだけでなく、国が確実に荒れる。院政が敷かれた平安末期は、武家との衝突が生じ、源氏平家の争いを巻き起こす。平家に抱き込まれた皇室は安徳帝をもって一旦は断絶という形を取った。承久の乱でも返り討ち。南北朝の争いも南朝北朝の対立で皇室自体も室町政権も安定しなかった。江戸期最期の天皇は暗殺されて、また皇室が断絶したとの噂もあるが、明治帝・大正帝は国家元首に祭り上げられても、基本政治に容喙しなかったため、国内はドラスティックな変化があったにせよ、対外的にはすこぶる発展したように見える。が、昭和帝では、惜しいことに政治というか軍事に積極的に関わったために、日本歴史で唯一国土が大幅に削られるだけでなく、外国に占領されて滅亡するという結末を迎える。現天皇明仁殿下に到っては、史上最大の反面教師である昭和帝を間近で見たいたせいか、かなり政治に対してはナイーヴな行動だ。隠しているだけなのかもしれないが、まず悪い噂を聞かない。ホント、天皇ってのは政治に関わらなければ安泰だが、逆に

  • 天皇が政治に関われば、確実に国内に災厄をもたらす。

 ということがいえる。で、繰り返しになるが、先の大戦で日本史上最悪の事態を招いた昭和帝が天皇制を保証され、おめおめと生き延びて責任逃れをしてしまったことが、日本的習慣として、さらに組織末端への責任のなすりつけを強化する結果となった。

  1. 敵国との国力の差を見誤るという、判断ミスをし
  2. やったら負ける戦争に突入するという、決断ミスをし
  3. 状況が悪くなっても同じ事の繰り返しをさせるという、状況判断ミスをし
  4. 負けるのが確定してもずるずると引きずるという、対応能力の無さを露呈し、
  5. 一部のもの(沖縄)に負担を負わせて、末端の切り捨て、消耗を促進し、
  6. 負けたら沖縄と天皇制の維持の取引をもちかけて、人を売り、
  7. 一億総懺悔とか言って、他人に責任を負わせる。

 これだけの許されないことをやっているわけだ。で、それがすべて許された。そりゃ下のものは責任を回避できるものならさらに下のものに圧力を加えて責任回避するだろう。これが延々と続いてきた。本当なら、こういう悪弊は早めに処理しておくべきだったのだ。戦後間も無い頃に多発した数々の疑獄事件、リクルート事件小泉改革など、本当ならその時にしかるべき上位者に責任をとらせて再発を防ぐよう関係者を根絶やしにしとけば、その分日本は安定し、現在のような酷い状況にはなっていなかった。検察や警察がそのときの政権を擁護し、無実のものを弾圧して責任転嫁をしてきたからこそ今の日本の凋落がある。今、その悪循環を断ち切る好機である。早く新政権(民主党がそうであるとも限らないのだが)を安定させ、先の政権を否定するしかない。今の天皇が慎重な言動を示す人だからこそ、政権移譲の認証に重みがでるのである。もちろん、天皇自身に積極的に政権交代に対してのアクションをおこしてもらうことは、それこそ政治への容喙になってしまうので厳禁である。が、状況が確定すれば、天皇はそれを承認するだけである。で、その機能こそ、天皇制の存在理由となるのではないかと思うのである。