玉音放送を聴いてしまったので。

 いやまぁ前から予告はされていたので青天の霹靂ってことはない。が、なんとも終戦時のと種類が同じなので複雑な気分。いうなれば間接代議士制政治の自殺を憂いてのこの有様。
 別に尽くしたわけではないが、ブクマに三階に至るまで書いてしまったのでアレだが、いちおう整理のため。
 まづ、日本の政体としてまさか民主主義という馬鹿はいないとは思うが、国民主権を謳う「立憲君主制」。大英帝国に近い政体。日本国憲法は合衆国からの押し付け憲法ではあるが、そうだとしても憲法草案作成時に当事者が一番気を配り、天皇制を存続させるため(だけ)に苦心したのがこの憲法である。憲法を読むと国家元首についての言及がどこにもない。そして国民主権と書いてありながら、それが一致合意して天皇を象徴として戴くとある。国民とその象徴と立場はどちらが上か?と言われるとそれは明らかであって、国家元首は誰か書かれていなくても、それは自然に誰のことか想起できるようになっている。
 そういう構造を理解せず、学校教育で日本はあたかも民主主義の国であるかのような教えられ方をされているので、そう誤解している国民も多数いるのではあるが、しかしそうだとしても確かに天皇自身に政治に口出しできるようなシステムにはなっていないし、実際に今までそうしてこなかった。そして民選政治屋が日本政治おいて何をやってきたのか?と言えば、終戦直後より一時的に占領軍に政治の場から追い出されたものゝ、反共政策で逆コースを辿り、戦争責任をまったく果たさないまゝ特権階級の椅子にしがみつき続け、決して国民のための政治ではなく、私服を肥やすための談合ばかりやってきた。こういうのはいみじくも昭和天皇が述べたとおり、昭和後期にいたるまで日本人は全然変わってないという発言。
 さて、現天皇は、皇太子の折には先の大戦にいたるまでの経緯を間近で見ていた御仁だから、現状の政治状況が当時と酷似していることにずっと頭を悩ましていたのだろう。特にアベ政権は酷く、戦争責任に関しての最近の行動は、アベ政権の尻拭いばかり(彼自身がむしろ進んで)やってきたような印象がある。あと、アベ政権を支持する国民に対しての複雑な気持ちが窺える。先の述べたとおり、別に憲法上でも日本は民主主義ではないのだけれど、そう誤解していると思われる国民がわざわざその民主主義の理念を捨て去るような行動(すなわち自民盗への投票行動)を見て、なんて愚かなのかと心を痛めたはず。対抗勢力として消費税増税をしないといって政権交代をした民主盗があっさりと公約を反故にしたわけ(ようするに民主盗も自民盗になりかわりたいだけの屑集団)だから、天皇としても心を寄せるべき政党が全くない状況で、どうにも手詰まり感があったはず。
 現天皇銀ブラの人だから民衆の力に期待もし、信じてもきた人だろうから、終戦直後からの民衆の力の進歩には明るいものを感じていたに違いない。しかし、時間が経てば経つほど進歩とは程遠い、全くの逆方向に転じてしまうのを見て、それでも実害がないのならほっておこうという立場だったのが、アベ政権になって加速度的に亡国の一途を辿るのに非常に焦っていたはず。
 厳密に言うと、今回の発言は、影響力が少しでもあるという点において違法行為(天皇が政治に口を出すべきではない)ではあるのだが、そうも言ってられない状況であることは間違いない。
 まったく情けないことではあるが、国民の側に自民ファシストに対抗できる有力な勢力を組織できず、本来政治的存在であってはならないはずの天皇の一言が一番有力な正常化手段だということを胸に刻まないといけない。正直天皇は戦争責任があるし、それを取らないといけないと思ってきたが、この段階になってこれこそが戦争責任を果たすことなんだなと感心させられた次第。もし日本が軍国化してまた滅亡する羽目になったら、天皇家はこの一件で許されることになると思う。逆にアベとかは一族郎党皆殺しになるだろう。岸で責任を取らず、その孫も亡国に手を貸したとあったら、日本人はともかく相手国は絶対に許さない。二度も戦争犯罪を犯したということになれば、日本人に犯罪者を罰するだけの当事者能力、つまり人間としての資質を備えてないということになるわけで、アベは逃げられないだろうが、日本人も権利を制限されるか、国際的にまともに相手にされなくなる。
 あと、天皇が本当に健康の理由で退位したいと言っていると考えている人にはよく考えて欲しいのだが、こういう発表をすることや、その重みを受け止めること、退位した後もその自分の決断に耐えることのほうが、天皇でい続ける*1よりもはるかに肉体的にも精神的にも堪えること。天皇は日本という国だけで無くて天皇家の生き残りも考えなくてはならないわけで、そのへんの重圧は並大抵のことではないだろう。明治天皇昭和天皇はいちおう拒否権はなくとも実権は持っているという体裁だが、平成天皇は手足を縛られた状態でなんとかしなくてはならないわけで、こりゃ大変だなと思わざるを得ない。彼の目指していることは本来国民がやるべき事柄なんだけどな。

*1:天皇でい続けると公務には厚い補助がつくし、どうしても出られないときには皇太子が天皇の名代として公務を果たすこともやろうと思えばできる。なにより法律に従って動くほうが自分の頭を使わない分かなり楽。