鉄腕バーディー DECODE 総感

 一夏の切なく、甘酸っぱい想い出が無かったことに。
 というガッカリ感がまさにゆうきまさみ的というか、というよりは昭和的だわな。バーディーがつとむを生き延びさせたように、神祇庁がリュンカを処理しようとした時に出たであろう犠牲はなんとかなったんじゃないかとか思ってしまうが、それはまた野暮なんだろう。選別のためにリュンカを利用した層もリュンカ処理のための犠牲はやむをえない神祇官も、庶民を虫ケラと考える特権階級のあり方って描き方だしな。最後のつとむの決断は、天災といえども世界を構成する一員としてやれる限りの事は精一杯努力するという地に足がついたものであり、国家運営を間違えて(もしくは私腹を肥やすためにわざと壊して)社会が混乱するというのは国家指導層による人災でしかないのに、他人の犠牲で何とかしようとする身勝手さとは一線を画す。
 一応悲劇的メロドラマとパニック映画、あとは日本的泥臭さを残す刑事ドラマを組み合わせたという日本的ごった煮作品で、物語自体も基本的なフォーマットに従ったものであり、サプライズというものはなかったが、だからこそなのかもしれないが、安心して視聴を続けることが出来た。退屈もストレスも感じない。今振り返ってみると、登場人物の内面に切れ込む要素が、主人公のつとむとバーディーぐらいしかなかったが、これもだからこそ散漫にならなかったのだろう。
 全体的なクォリティは感心するほど高いといっていいかな。作画もよく勢いが途切れなかったと思う。アクションシーンの躍動もさることながら、俯瞰シーンの壮大さも手が込んでいた。視聴しながらハリウッド的なのか…と考えていたが、派手さを演出しながらもリアリティを考慮しているようで、そのへんの冷静さも感心する。音楽もOP・EDはあまり好みではなかったのだが、BGMもふくめて効果的。パステル調の色指定はむしろ悲惨さを緩和して衝撃を伝えるにはデメリットなのだが、この作品の世界観からすると、このほうが正解だと思う。
 視聴開始直後は、もうちょっとゆったり感のもと進行するのかと思ったが、ゆうきまさみ的生活感はすっとばして、イベントドリブンになっていた。まぁ1クールしかないから正解だろう。13話分をきちんと使って物足りないという感じもしなかったし、詰め込みすぎという感じもしなかった。そういう意味では平凡ではあるがよく構成されており、良作だと思う。強いメッセージ性はないものゝ、暇つぶしになんかいいアニメ無い?と質問された時に、お勧めできる一品として候補にあげられると思う。来年1月にも早2期があるそうだ。機会が許せばぜひ視聴したい。おもろ+。