魔法遣いに大切なこと 〜夏のソラ〜 第12話「夏のソラ」

 心を込めて…?。
 滑った?。結局山田典枝は何がやりたかったんだろう?というのが初っ端の疑問だった。穿った見方をすれば、ソラは父ちゃんとの約束が一番で、東京で魔法士の資格と花婿(候補)をゲットして、生涯で一度っきりの依頼を果たしたというわけだ。ソラにとって父ちゃんが唯一かけがえのない人という描写があまりにないので、それもどうかなとは思うが。確かにじわじわきたのはきたが、五年後の描写がまた何のためなのかはわかんなかった。で、自分的には意図を読めずにフェードアウト。
 シリーズを通して振り返ってみると、結局ソラの成長物語かといえば、どこが成長したのかわかんないし(第1期の主人公ユメはたしか成長していたと思うのだが)、悲恋ものだとしても余韻が占める割合が多くてポイントが掴みにくい。ソラ周辺のキャラがソラがすごい魔法を遣ったと発言していることから、多分「友情」に近い何かがテーマなんだろうという気がするが、きわめてわかりにくい。
 自分は余命一ヶ月設定を耳にしていたから、初期の部分ではソラは生き急いでいるんだろうなと予測できたが、それにしたって終盤になるまで明かされなかったわけで、もう少しで忘れてしまう所ですらあった。魔法を遣う上で大切なのは魔法それ自体ではなく、魔法以外の何か、つまり最後繰り返されていたシリーズ共通のテーマ「心を込めて」ということなんだが、これまたわかりにくいわな。最終回でソラが父の遺志を尊重したのに対応して、豪太がソラの「私が死んでも忘れるな」という遺志を尊重して見てきた海を再現してみせるという構成になっているわけだが、そこらへんこれまたわかりにくいことこの上ない。
 で、大抵の視聴者はポカーン状態なのではなかったろうか?。ラブストーリーとしてあまりに抽象的に過ぎ、かといって描写はインディーズ礼讃とも思える若者のセンスに依存したものであって、コレを美しいと認識できる層があまりにもピンポイントに過ぎるような気がする。ファッションとして下北沢の風景を使い、ストリートミュージシャンを使い、で、泥臭さは巧妙に排除されており、ターゲット層はアニオタともまさにこのようなライフスタイルを好む層でもなさそうである。せいぜい中二病にかゝったようなちょっとインテリが対象なのではないかと思われる。
 っつーわけで、序盤で感じた気合は、どうにもそのわかりにくさのために中盤より落ちたという印象が強い。第1期が依頼や事件のたびにフォーマットに従ってキャラ達が一喜一憂するために非常にわかりやすく、それとは一線を画す。もう少しでただの雰囲気アニメとして見てしまうところだった。そういう意味では期待外れとまでは言わないが、真意を読み取るためには読み込みが必要で、しかしそのような視聴スタイルは本作には似合わないというミスマッチが残念と言える。絵も音もクォリティは高く、もちろんテキストも質は悪くないのだが、意地が悪い。そりゃ別に見たままを素直に感じればいいといわれればそうなのだが、感情は揺り動かされるのに、その理由がしばらくは見当たらないというのが居心地が悪い。
 まぁタオルを何枚も用意していつでも号泣オッケーと待ち構えているのに、どうもポイントがずれた感じで襲ってくる様子はヘンだ。もうちょっと読み込む力がつけばリアルタイムで理屈を把握してスッキリするのだろう。感情が動くのにはスタッフのお膳立てがあってちゃんと理屈があるのに、各人の感性でいいんだよというのであれば、どうにもやるせない。
 というわけで評価は難しく、おもろ+の実力はあるのだろうが、実際にはおもろぐらいに感じた。なんか後半は肩透かしを食らうような感覚がつきまとうんですよ〜。もうちょっと時間が経って落ち着けば評価も変わるかもしんない。というか、やっぱ自分の読解力が足らないんだとは思いますよ。