今日のいきいきホットライン

 も、安易な役所叩き、改革派自治体首長である自分は素晴らしいことをやったんだという自画自賛。でも慎重に言葉を選ぶ人のようには思えた。自治省出身だから、落下傘知事だな。団塊自民党・慶応・内務省の流れを汲む官僚と、権力志向の畑を歩いてきた感じでしょうか。そういう道だったからといってこの人がそうだったかどうかは別問題とは思いますが。あ、今日は途中から聞きました。録音するまでも無いとおもっていましたので。
 この人の業績は何があるんだろうとググって見ると、“改革”の技術―鳥取県知事・片山善博の挑戦が上位にヒットして、内容紹介をそのまゝ鵜呑みにすると、

 まず、徹底した情報公開を自ら率先して実現していく。提案を有力議員に「根回し」する慣習を断ち、県議会や記者会見といった公の場での議論を最優先に据えた。そのうえで、前任者の残した大型ハコモノ事業など“負の遺産”の存在を広く県民に示す。同時にその相続をきっぱりと放棄するのが片山流改革である。財政再建に向けて無駄を削るだけでなく、2000年の鳥取県西部地震の被害者には、国の反発を押し切って全国初の住宅再建支援策を施した。

 人権関係でいろいろ毀誉褒貶があるが、これだけを見ると能吏ではあるっぽい。Wikiによると、自治省時代から鳥取に出向したこともあっての、知事出馬→当選なので、下見をした上で問題点を整理して、地方行政改革の実験として一番人口の少ない(きっと貧しいので住民をそれなりの待遇で手なづけやすい)県ということで実施したのだろう。地方の金の無駄遣いをどうやって無くすかが課題だったのではないだろうか。知事就任前の居場所が自治省の税務局なので、財政問題のテストケースにするのが狙いと見て間違いないだろう。そして公共事業が問題点と見て、土建業界でのみ還流する金の流れを断ってどうなるか?を見るのが一つのテーマだったと思う。
 うーん、難しいなぁ。この人のやったことの結果がそもそもあらわれているんか?、そして結果が出たとしてそれは評価できるのか?がどうもわかりにくい。県HPに行ってみると、財政が劇的に改善されたという風にも見えない(15年度からの推移しかチェックできないし、細目を評価するのが大変であきらめた。)。とりあえず、引用部分についてはラジオでも言及されていたので、私の思いつきが正しいかどうかは別にしてツッコんでみると、

  • 情報公開はどちらでもいいこと。
  • 根回しは、有力議員やその支持者だけの利権の還流のためのものなら確かに断絶すべきものだが、議員が自分たちの利権のことでなく、本当に組織全体のことを考えてのことであれば、前もっての情報交換・調整はむしろ提案の早期実現のためにはよいことである。議会で議論は行われるがちっとも議題が前に進まないということになれば時間の無駄にもなる。まぁここらへん鳥取の事情もわかんないし、それを正当に評価できるとも思わないんで、これも判断が難しい。
  • ハコ物行政は、建てた後の維持費も考えると確かにやめたほうがいい。もちろんどうしても無くてはならないインフラであれば、むしろ早く作ってしまったほうがいいわけではあるが。鳥取がどうかはともかく、もう道路整備以外のインフラ整備がそんなに危急に必要な時代はもう終わったと見るべきだろう。

 とまぁ、やっぱ具体的な事例が示されないとわかんないや。
 気になったのは、やっぱ安易な末端職員叩きだろう。給食費未納問題は決して教員にたいする信用低下の結果でおこっているわけではないし、年金未納問題は社保庁職員に対する信用低下で起こっているわけではない。前者はただの保護者側の我儘だし、後者は社会保険原資を使い込んで破綻させた自民党に対する信用低下である。前者は払わなくても食えてしまうという泥棒根性だし、後者は払っても戻ってこないネズミ講に信用がならなくなっただけ。ここで末端の公務員叩きは的外れだわな。
 あと、聴取者へのインタヴューで、地方自治体の予算編成に対しての情報公開がみとめられて、第三者団体としてちぇっくしました〜という女子大生が話をしていた。まず見せてくれたのでラッキー!というのと、勉強できてためになりましたと言っていた。情報公開のところでもそうなんだが、今日の番組では「透明性を高める」「市民による監視が必要」とまぁ、旧内務省、監視社会が好きだねぇと思ってしまう。そもそも予算編成をする末端の公務員を叩くこと自体が間違い。基本は代議士の要望を役場の中では調整をするだけなんで、役場が無駄遣いという批判は、的外れと言わざるを得ない。実際に無駄なハコ物を作ると決めるのは代議士であり、末端の公務員はその指示に従って計算を行うのが仕事なんで、批判なら代議士なりそれを決定した首長に言うのが筋。むしろ欲得づくで代議士が無理な口出しをするのを末端の公務員は何とか引き止めたり無駄を無くしたりすることをやってるのが多いところもあるぐらいで、もちろん代議士と結託して自分に利益がくるよう我田引水振りを発揮して出世を狙う職員がいないとは思わないが、これだけ財政が厳しく、バッシングも激しいのに、むしろ市民のために努力をしている側の公務員を叩くのは特権階級の思う壺である。この女子大生が見せてもらった編成書だって、むしろ第三者機関にチェックしてもらって、代議士と悪徳業者との癒着を市民の手で断ってくれるほうがいいと、わざと示されたものかもしれないしな。組織が大きければ大きいほどチェックは大変だし、一部だけを見て無駄遣いと言われても、全体としてみれば、むしろその部分がうまく潤滑油の働きをしていて、それが無ければ却って全体の予算が増えることもあるわけで、役人は「これより素晴らしい予算書が作れるもんなら作ってみろ」という余裕もあったのかもしれない。
 まぁ楽してずるしていいトコ取りかしら〜の公務員もいるんだろうが、苦労しているのに政治家の人気取りのために弱点をさらけ出されてバッシングというのは市民のために働いている公務員に対して失礼にあたるのではないだろうか。本当の公務員の姿をさらけ出すという意味ではまだ昨日の構成のほうがマシかな。今日だと首長が末端の公務員の仕事っぷりを見ている風にも感じなかったし、いやそもそも大きな自治体の首長なんて一人一人の仕事っぷりを見てちゃダメだろうとも思うんで、公務員叩きの目的としては、今日の構成自体がそもそもの失敗だと思う。この人は住民に対して選挙で意思表示せよと言っているらしいが、役所なり自治体のあり方を変えるという視点においては、主権者と、主権者に選ばれた首長との間のコミュニケーションのあり方、それも劇場型でも陳情型でもない住民の自治の参加のあり方を問うべきではないかと思う。
 で、結局それも無駄かなと思わないでもない。ある意味住民からも距離が離れているし、県全体の産業を見据えて、「経世在民」であるところの政治を行うという意味では国が制定する法律より裁量も権力も持ち合わせていないような気がする。県民を食わせていくためには、前にも述べたとおり、県民が生活していくための財をどのように確保し、そのために県民や企業にどのような配分で労働をさせるか?、適正な生活レベルとは?継続性は?なんてことは県知事の立場では許されてないだろう。資本も人も都市に吸い尽くされた後では、地方でどのように産業なり人材なり資本なりを確保するか?そのために都市と喧嘩すべきなのか、他の地方とどのような関係を結べばいいのか?まで出来るようにならないと、そもそも地方自治なんて無理*1だろう。まぁ今日限定のお題も番組の構成も的外れで大変でしたね!と。違った構成だと、もしかすると今日のゲストから面白い視点が得られたかもしれないのにねというぐらいが感想。いや、聞いている最中は腹立ち気味だったんですけどね。

*1:もちろん、国が経世在民を全く考えないで国政の与党代議士が国会で自分に有利な法律ばっかり制定している現在、中央集権なんてのはもってのほかなんだけど。