ロミオ×ジュリエット 第12話「安息 〜このままで〜」

 なんじゃ、そりゃ。
 前半部分は二人の小さな幸せを描いており、これはこれで二人が守りたいものは何か?という問いかけにもなっているんだけど、そこまでして丁寧に描いてきた二人の世界を急展開させるのにこの流れですか。今までが今までだっただけに、二人が賢い行動をとることなんて期待していませんが、思いつきで行動ってのもどうなんかね?。
 憲兵の横暴に虐げられる民草と二人の幸せとの二者択一のように見えるけど、葛藤としても深くないしなぁ。暴虐を目にしたのもたまたまのことだし、じゃぁ二人の幸せを守るため、もっと遠く逃げるということが可能か?と言われれば微妙だしな。助けられもしないのにつっこむ二人や、何の効果があると踏んだのかロミオの名乗りや、もしくはこれまた全く意味が無さそうなのにわざと窮地に陥るジュリエットの名乗り*1など、とくにジュリエットはいまだ自分の背負っているものが理解できていないという愚昧さで、さすがにキャラへの感情移入ができない。
 そうはいってもまさか二人がネオ・ヴェローナや家名を捨てて別天地で幸せに暮らしましたとさちゃんちゃんで終わるわけにもいかんだろうし、キャピュレット側がほぼ壊滅状態だし、キャラのセッティングのし直しとしてはこういう方法ぐらいしかないんだろうけどな。あんまり現実的な方法を示してしまうと、それはそれで泥臭いものになるってのを嫌ったのかもしれないが。さすがにこういう具合に振り回してくれると、もう正直ロミオとジュリエットが最後死ぬのか死なないのかどうでもよく、死んだところで惜しくもないわ…みたいな状況になっているような気がしないでもない。
 うーん、面白くないわけでもないし、かといって話のクォリティを判断するにはやっぱり最後まで見ないといけんのでしょうが、「巌窟王」よりはちょっと落ちるような気がしないでもない。巌窟王では笑顔なり平静を保ってはいてもにじみ出る悪徳なんかがよく表現されていたように思う。主人公の変更で、アルベールはお坊ちゃんのまゝでいいという構成にしたのは今から考えると賢明だとさえ思う。でもこの作品だと悪だの正義だのは、わかりやすくはあるんだけど、どうにも底の浅いモノにしか見えないんだよね。一歩間違えば誰でも反転する可能性があるとか、どうしようもない状況での選択だとかってのがほとんど無いような気がする。
 最後にはそういうことを見せてくれるのかもしれんのだが、今のまゝだと悪がはっきりしているから、それを倒すか倒さないかに意識が向けられすぎていて、あまりにこの世界が人間たちの意識や判断の集積で成り立っているってことを捨てすぎていると思う。いや、そんなものは特に現在の日本には存在しなくて、すべて権力層の思い通りに日常が振り回されているってことを表現しているのなら、それは確かに現実を活写しすぎているほどであるってのはわかるんだが。対立する両者で全く対話がないってのは、強行採決の連続に見られる通りでもあるしなぁ。
 まぁそこまで考えているのかどうかはわかんないんだけど、考えているにしてもちょっと大勢にはわかりにくいよなぁとは思う。

*1:愛だの恋だの言う前にもっとすべきことがあるだろう?と思うのだが、そういうのを無視して愛だの恋だのを選んだ割にはその選択はねぇんじゃねぇの?という感じですな。