ひまわりっ!! 第4話 続き

 正直したり顔で解説なんておこがましい以外の何者でもないんだけど、友人に紹介してドン引きされたという予想外 - いわゆるひとつの再チャレンジさんとこを見ると、その友人のように誤読する人(いや、作品を見て素直に感じたものがその人にとっての真実ではあるので、誤読というのはアレなんだが)が多いと思う。今回何度か見直したんですが、確かに初見での印象はあまりよくなかったというか、スタッフにミスリードされそうになった。すなわち、

  • ヒメジは強くなりたいと思っている。
  • ヒメジの精神世界に入り込むことは、プライベートな部分に土足で踏み込むことである。
  • ヒメジはそれを望んでいない
  • ヒメジの中に入り込んだちび忍者をひまわりたちが倒そうとするのは余計なことである。
  • 仲間との大切な想い出をひまわりたちが守っているのはヒメジのためでなく、ひまわりたち自身のためである(ように見える)。

 という流れを追うと、なぜヒメジが最後に合体忍者を唐突に排除しようとしたのか“ポカーン”になると思う。そうそう、ヒメジがなぜ最後に態度を変えたのか描写が足りない!ということになる。まぁ待てって。
 ポイントはいくつかあると思うのだが、私が重要だと思ったのは2点。それはヒメジが最初に見せた涙のシーン(自分の身代わりに師匠たちが殺される場面)と仲間との想い出がスクリーンに映し出されているときに苦しんでいるヒメジのシーン。これをどう解釈するかで、視聴者がこの回に対して下す評価に大きな差が出てくると思われる。たぶんあの2つのスクリーンはヒメジが絶対にひまわりたちに知られたくなかった部分であることは間違いないだろう。最初でつきよ姫があらわれて土足で踏み込むものではないとたしなめるのもその証拠。仲間との思い出も、ちび忍者が「まだたくさんありました」と言っているので、強くなるためには捨てなきゃならないと思ってはいるが、一番捨てたくなかったからこそ最後までたくさん残っていたと見るべきだろう。(もしかするとちび忍者にみつからないよう隠していたのかもしれないが)
 しかしここで思い出していただきたいのだが、なぜヒメジは強くなりたいかについて思いを巡らせてもらいたいのだ。ここで強くなったところで死んだ師匠が帰ってくるわけでもない。強くなって実現したい夢とやらがあるようにも見えない。守られるのは重いというのも正直なところだろう。弱い自分を誰かが守って犠牲になるのはイヤなのだ。そしてヒメジは現在の自分を弱いと認識して強くなりたいと願っているのだ…。
 さてここで飛躍が必要。弱い現在の自分を強くしたいという願望はどこから出るのか?ということなんだが、それは弱いまゝの自分を守ってくれている人がいて、自分が弱いまゝだとその人たちがまた自分の師匠のように犠牲になるという恐れがあるからなんじゃないかと思って欲しい。そしてそれはなによりひまわりたちなんでないかと。ひまわりがきてからの楽しい日常の様子は視聴者は第一期でわかっているだろうから言うまでもないんだが、異国人で思い込みの激しいヒメジを仲間として受け入れてくれたのはひまわりがくる前のしきみたちではなかったかとも思うのだ。
 そして精神世界に入ってくるぐらいだから、ひまわりたちが自身の危険も省みず自分にかかわろうとしてくれているのはヒメジには痛いほどわかっている*1はず。そこでさきほどのポイント2点。別に師匠を失った過去やヒメジが仲間とのことを大切に思っているのをひまわりたちに知られたくなかったのは、別に恥ずかしいからではない。そういうことをひまわりたちに知られてしまうと、ひまわりたちは余計にヒメジを守ろうとするからだと考えるのが妥当ではなかろうか?。それじゃぁ守られていた今までよりマズいわけでして。
 ヒメジが心の中から出て行けといったのも、出て行かなければひまわりたちが助からないからそう言っているのであって、自分が犠牲になれば守られるのではなく、ひまわりたちを守ることが出来ると考えているわけだ。そしてひまわりが命も省みず出て行かない*2と言ったからこそ、ヒメジは頑なな自分を変えなければ、むしろ大切に思っている仲間を犠牲にしてしまうとわかったからこそ急いで気持ちを切り替えたわけだ。ヒメジが合体忍者を心の中から追い出せばひまわりたちを助けることが出来るのだ。楽しい日常を享受して、強くなりたいと願ってはいるものの思い込みばかりで具体的に行動せず、かえって周囲に気を遣わせしまっているそういう過去の自分がつまったドラム缶を指して邪魔者みっけでありんすと蹴り飛ばす*3のだ。描写としてはたった一瞬だよな。ヒメジの変化は。
 ちなみにつきよ姫の最後の台詞は「ちょっとしっぱい」と言っているのでは?。ひまわりたちがヒメジの心の中に入ってかき乱さなきゃヒメジは変わらなかったわけだ。つきよ姫の言う通りにしていたら、ヒメジは救えなかったという結果だったと思うからこそ彼女は反省したのではないかと。
 第一期のヌルいが暖かい描写があったからこそヒメジの回想シーンが際立ってくるわけで、そこらへん視聴者は前提条件をおさえておかねばならないといったハードルは高いと思う。なぜミスリードと思われるような、もしくは描写不足とも思われるような表現にしたのかについては理由があると思う。わざとわかりにくくしているんですよ、きっと。そしてそれはわかりやすい作品を作ったからといって視聴者がレベルアップするわけではなかったという現実が深く関係しているんじゃないかと思う。正直私も正しく解釈できたのか自信がないのだけど、スタッフは別に作品中に埋め込んだ意図を知らせてくれることはないわけで、そこらへん製作者との本音をいわぬコミュニケーションができるかどうか視聴者の力量が試されているんじゃないかと。
 

*1:ナナフシぐらいが詳細を知っていたと思われるが、ヒメジにそこまでわかっていたかは不明ではある。

*2:ヒメジの心の中に入って以来、時間が足りなくなったらヒメジを助けられなくともその時点で逃げるという素振りすら見せていない。

*3:ヒメジは合体忍者ではなく、ドラム缶を見ているだろう?ということで。