Pumpkin Scissors 第16話「斬り裂きし者」

 まだ続くのか。
 1エピソードにせいぜい3話かと思っていたので、不意打ちを喰らった感多し。出来云々は以下に記すが、このこと自体は好意的に評価。
 このエピソードにこれだけ話数を費やすのだから、それなりにスタッフの思いが込められているのだろうと推測。ただし原作をアニメ化する過程でかなり省略をしていると、他のサイトさんでちょこちょこ目にするので原作との齟齬はあるのだろう。月マガに連載があったので最新話を読んでしまったのだが、最近の郵便の話→装甲列車の話の流れを見ると連載一話にいっぱい詰め込まれているという印象は原作からはさほど受けなかった。しかしそれは言うなればエピソードを細切れにして、一話についてじっくり考えさせるという月間というスタイルをむしろ活用した手法なのかも知れず、最初から追いかけていない自分としてはなかなかに判断できないところではある。そしてそうであるならなおさら原作のエピソードを描ききるのはアニメスタッフにとっては非常に辛いだろう。漫画は読者が自分のペースをいくらでも落として鑑賞してしまうメディアであるのに対し、アニメは時間の流れを管理しながらストーリーをある程度テンポ良く進めねばならないハンデがあるからだ。現スタッフより力量の優れたアニメーターを集めればそりゃ不可能ではないとは思うが、それは視聴者のわがままだろう。もたもたする描写だとアニメの持つダイナミズムを失うことにもなり、原作に詰め込まれている要素が多いほど、アニメ化に際し削ぎ落とさなければならない部分は多くなってしまい、原作から受ける濃密さが感じられなくなっても仕方がない部分はあるだろう。ここはスタッフがいろんな部分を削ぎ落としてまで強く主張したい(残した部分)はなんなのか?を念頭に入れるという態度が前向きな視聴だと思う。(長い)
 これだけ冗長に前置きをしておいてなんだが、多分一番のメッセージ部分、つまり社会構造のあり方云々についてはこのエピソードの決着を待ったほうがいいだろう。結社が何のメタファーなのかは結構適応範囲が広いのだけれど、ミヨンですら小物というバラしまでで今回は十分だと思う。実は先週の予告で、使者はアリスの真の婚約者レオニール?とか思ってたんですが、@三木眞ではなかったので(うわ、いやだこんな視聴法)、もっと上か組織とは関係ないポジションかといったところ。
 オレルドのチューマークはむしろなりふり構わず情報収集した跡なんだろうなと思った。マーチスは性格が一番吶喊少尉に近いせいかアリスの説明には適したポジション。シュビムヴァーゲンを入り口にぶつけてバリケードにしたってのは感心した。アレって訓練で習得するようなもんじゃないだろう?。まぁ伍長はいつもの伍長だったということで。
 ミュゼはなんで前回伍長にゲシュペンシュトイェーガーの秘密を暴露するんだろう?と思っていたが、今回理由が判明。コネリーは何であのタイミングで強襲部隊を投入したのかちょっと不明。課員がかなりやられているので面子もあったのだろうが、段取りとして無茶な感じを受けた。課員を潜行させていたり強襲部隊の投入を考えているぐらいだったら当然3課が捜査対象の周りをうろちょろしているという情報なんてわかっているはずなので、行動の前には3課にちょっかいを出さないよう指示くらいは出して(おくべき)いるはずなんだが。ミヨンが使者と会う手はずであったことも掴んでいないようだったし、拙速に動いたというイメージが強い。もしかすると原作では説明がなされているのかもしれないが。まぁ視聴した感じでは強襲部隊の登場は3課の引き立て役としてしか考えておらず、辻褄あわせまで手が回らなかったと見るべきなんだろう。
 しかしなんといっても見所はアリス少尉。正直-燃・え・た-よ。いやぁ前線指揮官とはかくあるべしといった感じ。まぁキレイごとぶりはあいかわらずではあるんだけど、そうはいってもアリスを成長させてきたなと思わせる内容。前エピソードでは庶民の不満を受け止めきれずに証拠の揉み消しに遭って挫折を味わったその反省をしてきているのかな?という風に見えた。内通者の気持ちを受け止めて気分を変えさせたし、キレイ事に少しずつ足が地に付いてきたような進歩。
 前回伍長の進言に否定をした少尉の言葉を聞いて、「また頭に血が上って自分が突っ込んで解決しようとしているな」と思っていたのだが、どうやらその読みは外れてしまったらしい。今回のアリス少尉の台詞からハンスと対峙したときの伍長の様子を観察していたことが仄めかされていたようだが、最初っから伍長が自分にやらせてくださいと言うのを見越しての行動のように思えた。もちろん最初に伍長がいいだしたのをかるくいなしたのも焦らし(ともちょっと違いはするが)。伍長が言い出さなきゃそのときゃ自分がなんとかするということだったに違いない。少尉の振り回していたあの剣だが、Mähne*1という架空の武器らしい。騎兵用の利き手弱手両方に対応するための武器らしいのだが、家屋内での戦闘と想定されるのに少尉自身が先頭でアレを振り回す目的で用意したわけではないというのはなるほどと思わされる。敵は複数だというのは前回の経験で想定されることなんで、アレで広範囲を守備するって意図があったと考えるべきだろう。もちろん伍長に好きに戦ってもらうために。尻拭いは私がやるって覚悟があったという可能性のほうが高いと自分は判断するのだがどうかな?。自分が突撃つもりだったのなら愛用の短剣のみを使うだろうと思うのだが。
 少尉が小柄で武器を振り回すのに精一杯、しかもすぐ体力を消耗しているのも納得。持つところが中心部しかなく振り回しにくいのでステップや身体の動きで戦おうとしている描写もなるほど。女のかわいさに執着することなく目をひん剥いて渾身の力を振り絞ろうと奮い立っているのも感動する。涙こそ出なかったもののアリス少尉には泣かされてしまいましたよ。

*1:どっかで見たことがあると思ってぐぐっていたんだけど、なかなか見つからなかった。ふと見つけたのだがどうもガンダムシードで登場していたの見たのが私の記憶の正体らしい。