一段落して

 日銀総裁のことを考えてみる。
 まず、福井総裁が有能である点について、どうも次の2点がそうであるらしい。

  1. 政府とのつながりが深かった。
  2. 合衆国の識者に有能だと褒められているらしい。

 うーん、かなり怪しい。中央銀行の独立性を高めるために今までの日銀総裁は苦労してきたし、そのためにデフレ批判を三重野・速水総裁*1も甘んじて受けてきたと思うんですが、政府に都合の良い金融のためにやりくりすることがそんなにいいことなんだろうか?。デフレのために製造業の海外移転が進んだことも否めないんだけど、現総裁になってそれが改善したとも思われない。銀行・大企業優遇政策はたしかに日本経済の延命にはつながったかもしれないが、結局雇用問題の解決にはつながらなかったとみるべきでは。非正規雇用の増加を雇用改善ととらえるのはどうなんだろう?。結局目先の決算の改善にはつながったかも知れんが、構造的不況問題をさらに複雑化しただけのように思える。政府というか政府要人に都合の良い金の流れを作ったことはむしろ犯罪ととらえるべきではないだろうか。犯罪のおかげで一時的に景気が良くなったというのはマズいのでは。国民全体が共犯ならまだしも、結局大多数の国民を騙し、切り捨てることで既得権益層が今までよりむしろオイシイ思いをしたってのはちょっとねぇ。むしろ中央銀行の独立性を低くした戦犯なんじゃないでしょうか。
 あと、合衆国の経済論者に褒められるってことは、それは合衆国の国益にかなう仕事をしたってことですから。合衆国の国益が日本にもプラスに働くのであれば評価すべきかもしれませんが、単に日本を売って合衆国の国益にしかならないんだったらまさに語義どおりの売国奴でしかありません。
 日銀総裁の任命権は政府にあるけどどうも罷免権はないようなので、日銀総裁ってのはすごくオイシイポジションであるらしい。どうも福井総裁も疑われるようなことはしてはならないと訓辞もしたことがあるらしく、しかも福井総裁のことを悪く言う日銀職員もノーパンしゃぶしゃぶ事件のときは一人もいなかったらしい。現役員の一人は自分の資産の一部を信託銀行に預けていたらしく、この点からも福井総裁が辞任しなかったことが後々響いてくると思われる。
 日銀総裁が辞めるべきか辞めざるべきかは実際私がここで吼えたところでどうになるわけでもないのですが、実際微妙なとこではありますな。イラク派兵のときもそうだったんですが、もちろんイラク派兵は憲法違反であり、いくら閣議決定がなされたからといっても当事者の罪が消えるわけではありません。法律なり運用なりの不備があるといえば、裁判所が三権分立の体を最初からなしていなかったわけで、これからも国会で互いに矛盾する法律が制定され続けてもこの状況は今まで通り変わりません。あのときは結局イスラム側から脅迫があって、「脅迫に負けて派兵をとりやめるのは国自身が舐められるからやめておいたほうがいい」というただ一点だけで私も仕方がないと思っておりました。しかし繰り返しになりますが、それで派兵を決めた当事者の罪が消えることはないと思います。けど権力者の常で逃げ切るでしょうけどね。
 だから日銀総裁も辞めるべきではないという点があれば、それは「スキャンダルの一声で辞めなきゃならないのであれば中央銀行の器が問われる」というただ一点だけであると思います。だからといって立場を利用してオイシイ思いをしたって罪が消えるわけでもないし、任命した政府の責任が消えるわけでもない。ただ、やっぱり繰り返しにはなりますが、権力者の常で逃げ切るでしょうけどね。
 イラク撤兵の件とか考えてみると、どうもアメリカで政権交代がある前触れでないかと思いますね。ブッシュも大量破壊兵器がなかったことで責任を取らされるんでしょう。イラクは欧州も権益を狙っていたはずなので、イラク戦争で独り占めしようとした合衆国のやり方に憤慨して利害調整で揉めたんじゃないでしょうか。現時点ではアメリカ傀儡の政府が出来たからといって、フセイン政権当時よりはるかに不安定化したし、そのことでアメリカもうまく石油利権を独り占めできなかったんじゃなかろうか?。得られた利権はわずかで、国家的ポジションはかえって低下、戦費を鑑みれば見合わない戦争だったんでしょう。ブッシュが大統領を辞めるのは当然として、そのようなブッシュに協力した日本の政権関係者も今槍玉に上がっている最中なんではないかと。小泉は多分前から(合衆国の情報からして)その構造をわかっていて次期総理はないとはじめから捨ててかかってたんでしょうね。もししがみついたりしたら合衆国側が手をまわしてスキャンダル漬けになるんじゃなかろうか。まぁ話はそれましたが、合衆国に都合の良いことをするよう指示されていたであろうし、そのなかでオイシイ思いを出来るだけしておこうと思って実際にしてきたんだろうけど、悲しいことにやっぱり合衆国の意向でスキャンダル暴露をされたってのが今回の日銀総裁の一件なんじゃなかろうか。

*1:申し訳ないが、インフレターゲット論を退けていた時点で速水総裁を私は評価しております。