第1話「カウント・ダウン」内容

 OPはなし。舞台が宇宙から艦橋になります。シノンに対する艦長評。

  • 機械的な声
  • 入学時には抜群の成績だが、卒業前はどの分野もそこそこ
  • 秘書向きではない

 主人公格のシノンの人物紹介を現役艦長がするという形態をとっています。うっかり流すと、どれもけなしているように見えますが、実はすべてシノンが艦長向きであることの証左になっております。すなわち、

  • 機械的な声=誰もが間違うことのないはっきりと聞こえる声は命令を下すのに適している。感情が声に出て部下に不安を与えるのならないほうがいい。
  • どの分野もそこそこ=突出した能力があればそのエキスパートになればいいんであって、バランスがとれていればいい。担当部署の責任者より能力があったとして、要らぬ口出しをすることは百害あって一利なし。部下に「艦長がやればいいじゃん」と思われるのもダメ。なら能力は無いほうがマシ。
  • 秘書向きではない=人任せでなく決断力がある。(指示待ち人間ではない)

 視聴者へのサービスとして現役艦長自身がシノンが艦長に適任だと言ってくれてます。シノンがそれに気づかないような描き方をしていますが、気づいてほくそえんでしまったら「シノンの成り上がり物語」になってしまいます。以上。
 平穏な日々から転機へと描写はうつります。本職の自衛官が先に退艦したときには思わず、「普通候補生を先に下ろさないか?無責任だろう。」と思いましたが、もしかすると現代の逃げ切り世代を比喩しているのかもと思い返しました。会社でもあると思うのですが、自分は年功序列制でおいしい思いをし、自分への批判を立場を利用してリストラという形で閉じ込め、自分なら承服しない成果実力主義にシステムを変え、退職金はたんまりといただいておさらばという世代です。むしろこの自衛官たちのほうがあとを濁さないだけましなのかもしれません。というより、逃げ切り世代の中にあって最大限負担を後に残さない良識派を描いたのかも知れず。


 次にくるのはこれからどうするかという「議論」です。ここはちょっと申し訳ないのですが、4話まで見た上での推測になります。多分この作品の重要なキーワードのひとつがこの「議論」じゃないでしょうか。すなわちあるべき民主主義の形として提示しているんじゃないかと思っています。全体に意見を求め、少数意見も無視せずに(いやな人間は退艦しているらしい)各々が各自の責任で行動を選択する。みんなの意見をまとめる形や一番いい意見を採用する形でリーダーが決断する。その決断にみんなが最善を尽くす形で従う。ちょっといい形でまとめられないのですが、けっして無駄に声の大きい意見に全体が流されるとか、数の暴力を行使してしまうとかという形ではないのです。これからもこの作品の中でいい議論の形が続くとは限らないのですが、それはそれでストーリーの作り方なんでしょう。さらに、もしかするとアニメの製作現場にも通じるところがあるのかもしれません。とにかく戦闘場面があとになかったらこれが第1話の山場であったと思われます。多数決の望ましいあり方と艦長のリーダーシップはちょっと違う部分はありますが、とりあえず大勢はこんなものでは?


 さて、後半はいきなり決断の結果からはじまります。延々と議論を見せられても観客は退屈するだけなんだというのはスタッフも承知なのでしょう。スペオペなんだから宇宙での戦闘も見せてスカッとしなくちゃ。全体の構成から考えても尺が足りないしな。とかね。身売りしたあとの経過を詳しく説明などせずに突っ走ります。見ながら理解しろよ!しっかりついてこないと置いていくぞ!ってなもんです。
 臨戦体制。敵発見。分析、予想、反証、疑問、検証、追認・・・いろいろ書くときりがないのですが、登場人物達の短くテンポのよい台詞には人間のありとあらゆる感情や行動などが端的に表現されています。そのうちに全員の気持ちが一丸となり、主力兵器の一撃でカタルシスを迎えます。まるで中世の槍騎兵の突撃を彷彿とさせます。かといって身売り先のマスコミの冷静な視点は失われず、視聴者にシノン達はあくまで踊らされているだけなんだと認識させてくれます。とりあえず目先の戦闘は無事終わったけど、これから先どうなるやらわからないという不安で次への引きになるわけです。