敵の企図を読むこと

 昨日の駄文の続きです。
 さて、スターシップ・オペレーターズ第11話「リターン・マッチ」でもう一つ考えなければならないことがあります。アマテラスは5隻相手にやる気満々でしたが、王国側はアマテラスの行動予測をどうしていたのでしょう。シュウ星域戦での戦訓から王国側が何を読み取ったかです。王国側はレイテを沈められているものの、シェンロンを沈めて3対1でアマテラスに迫りました。エルロイ提督の思惑通りになったわけですが、アマテラスは堪らずワープで逃走しました。リサに貼り付かれて残りの2隻に主砲を撃たれちゃかなわんというわけです。昨日は4対1で完璧な包囲網をしくことができるといいましたが、相手が向かってくる場合3対1でも圧倒できるのはエルロイ提督の言う通りなわけです。すなわち3対1では向かっていっても勝てる見込みはないから逃走するしかない。そして実際に逃走しているわけです。
 さて今回のパルミア星域戦ですが、3対1どころか5対1ですからアマテラスは逃げるしかないと王国側は予想するでしょう。アマテラスは王国側の戦闘艦を撃沈しても自分が沈んでしまうことは絶対にできないですから相打ち覚悟の戦闘は考えられない。だからアマテラスを逃がさないような戦術をとることになります。王国側は逆に何隻か沈んでも確実にアマテラスを沈めてしまえばいいわけですから相打ちはOKです。反撃を受けないですし、確実性もあがるからできるだけ砲火を集中させて沈めるのがよろしい。つまり王国側は1艦ずつアマテラスに攻撃するよりもできるだけたくさんの艦が同時に攻撃する方が有利になります。ということは、王国側の攻撃の瞬間にはアマテラスの近くに集合している必要があります。
 というわけで王国側の取った戦術は

  • アマテラスは逃走を図るはずだから、退路をふさぐように機動する。
  • アマテラスは同時に攻撃できないから、4隻が殺到してできるだけ同時に攻撃を行う。

と考えられます。逃がさない・タコ殴りにするの2点です。シノンは2つとも逆手にとったことになります。
 そう考えてみるとアマテラスがリサを攻撃して撃沈した後逃げると王国側は思ったはずです。だからマリアナ艦長はアマテラスの周囲に重力場を感知したときに、ワープして逃げると踏んだのでしょう。そして回頭しているとの報告に相手の意図を読み取りかねて適切な指示ができなかったと考えられます。レバントも2隻が沈んだ時点でのアマテラスの意図を読み取りかねていたのでしょう。アクティウムは自分が潜航艦であることを過信していたような表現のように思います。コンキスタドールもまさか射程外から撃つとは考えていないとの部下の描写もありました。まさに王国側は裏をかかれ、混乱している隙に4隻をやられたのでしょう。相手の意図を読み間違い、修正する時間もなかったわけですから、やられるのはそれなりの説得力が感じられます。そりゃ5対1で向かってくるとは思わんわな。
 ディータの策動についてはコメントにも書きましたが、実はたいした効果はありません。マリアナに向かっていると見せかけて油断を誘いましたが、リサも優秀な部下のおかげで突撃艇を発進させ短時間であってもアマテラスに被害を与えています。結果として突撃艇がアマテラスを攻撃する時間を短くしただけです。リサには突撃艇以外の攻撃手段がなく、突撃艇を無視して向かってこられればひとたまりもありません。情報の撹乱効果については「報道の利用」より、むしろ「アマテラスの意図を隠し通したこと」のほうが大きいと思います。
 そんなわけで、王国の提督が油断するのも無理はないということ、リサを倒したときに都合よくアマテラスの射程距離内に王国艦がいたことは、よくよく考えてみればありえない話でもないなぁと感じてきました。シノンコンキスタドールへの攻撃指示もなんとなくわかるような気がします。どうせアマテラスは損傷を抱えたままだし、冷静になったエルロイ提督とがっぷり4つに組むよりも、混乱しているうちにできるだけ意表をついて敵の力を削いでおく(うまくいけば撃沈)のは悪いことでもありません。
 いかんせん説明不足の感は否めません。しかし同じく残念なことに説明するだけの時間もありません。アクティウム艦長ですら前回の引きの大胆不敵そうな表情と今回の驚愕の表情しか出番がありませんでしたし。とても全部は描写できないでしょう。
 さてここまで書いてきたのも私の妄想で、正しいかどうかもわかりません。つじつまを合わせるとしたらこんな風にも考えられないか?ということで。