クロスアンジュ 第17話

 ガンダムSEED感、パネェ。
 サラの世界から帰還したらサリアその他二人が寝返っていたでござるの巻。その他二人はエンブリオに助けられてた連中だねぇ。サラの国はいちおう日本がモデルのようでありながら、なんつーか、旅人には親切という評判のアラブの国っぽい。日本がモデルなら周囲にアレだけ木が生えているのに住居が木造ではなく、黄土色の石(砂)作りってことはないはず。
 とはいえ、エンブリオ世界のミスルギが男系社会であって、ノーマと認定された女が戦死前提の戦争に強制参加であって、サラ世界が女系社会であって、男は穢れた世界を浄化して生身で戦争に参加させられるという逆位置の関係にあるのも結構面白い。アラブは男系社会のはずなので、それで偽装しているのかと思わなくも無いな。男が竜の形のまゝで人間の形をしておらず、アラブの女性は人前で肌をさらさずに基本社会的な存在としてはあまり認められないとう習俗がそれっぽい。
 ストーリー展開はやはり前半の力強さからいうとやはり物足りない感じ。アンジュのヴィルキスの転移した先は基本ご都合主義であって、まるでヴィルキスが物語の案内人っぽいのが作為的。同じ作為的にしろ、それはキャラの関係性や因果関係でドライヴしてくれていた以前のほうが人間の業を感じさせてくれて、いくらB級とはいえ、結構唸らされていたからなんかもったいない。いやまぁそのへん考えようで、今や世界の構造を示したから、ミクロ視点ではなくてマクロ視点で物語を動かしてるんだろうなと思うとそれほど悪いものでもないわけで、個人の思いで現実がどう動くかって話でもないんだろう。
 ちょっと前からエンブリオについて考えていたんだけど、これは生物としては生まれていない胚という存在だから人間未満の存在なのかなと思っていた。どうやっているのかは別として、彼は基本頭がよくって実行力があるという設定だから、むしろ人間を超えた存在なんだが、結局彼が作り上げた世界は他者から奪った富を自分の支配に都合よく再分配して、かつては彼が目指した社会とは全く反対のディストピアしか作り得ていないというところを考えると、彼自身が人間性を持ち合わせていないからそういう結果にしかなっていないという提示なのかねぇという気がしてた。だから、物語の帰結点として、主人公格のアンジュやサラが世界をなんとかするというものをずっと考えていたんだけど、実はこの世界の主人公は未熟な存在としてのエンブリオであって、世界がよくなるという結末を描くのであったら、それは彼が人間性を獲得するという展開が用意されているのだろうかと妄想している。彼自身は(世界を良くするための)能力を持っている存在だから、結局のところ力の使い方の問題だよというところがこの物語の裏の落ち着きどころという、まぁこれは予想でもなんでもないんだけど、少なくともスタッフが彼にエンブリオという名前を与えているからには、世界の構造を結局のところそう考えているのかなという単なる考え方の一つでしかないのではあるが。
 結局のところ、これはおとこのこ向きに作られているのであって、男だったら誰しも持っていそうな部分がタスクにもエンブリオにも表現されていて、ほんでもってエンブリオは強力な権力の持ち主ってことは、多分にして現実の政官財のお偉方はその部分が大層肥大化していらっしゃるのだということは容易に導けるのではあるが、基本コレは男全体について述べられていることであって、例えば他の作品に見られるような女は強いだとか、逆に女に比べて男はだらしないとか言ってる作品ではないだろう。徹底的に男視点だからおそらく女性視聴者は獲得できなかったろうし、もともと女性はターゲット層ではないはず。
 個人的にはヴィヴィアンというキャラの動かし方が面白いと思った。前半部分からすると、おまえパラメイルを駆って同胞狩りしてたのかよという部分はさておくにしろ、お助けキャラとしては自己主張がそれほど激しくも無く、マスコットキャラとしての属性も持ち合わせていて今回のような場面転換にはすこぶる有能な使い方をされていると感じた。