異国迷路のクロワーゼ 第8話

 アリス、本当に期待されて無いらしいな。
 もっと格差社会のエグさを見られるのかと思っていたが、そうでもなかったな。オスカーはカミーユを猫と喩えるし、カミーユはクロードをネコと喩えるのも面白かった。出番がないのに店番をさせられるオスカーにご褒美があったのも笑えたな。
 いやなんかね、密度が大きくて困ったよ。クロードに遭ったカミーユが嫉妬して「私を見て」と連続して迫る様は背筋がゾクゾクするわねぇ。湯音なんて家族だ、本当に好きなのが誰なのかわかっているくせに苛めるなと困るクロードには凄く共感もできた。男たるものあぁ言われてみたいし、クロードよりはよっぽど気の利いた言葉をかけてもやりたいわな。
 湯音カミーユの対決も白眉だ。いつもクロードのそばにいることの出来る湯音カミーユがこれまたストレスをかけるんだけど、この女の情念が凄いよねぇ。湯音の素直さも捨てがたいんだけど、カミーユのこの情の深さも捨てがたい。やはり男たるものあれだけ想われてみたいわな。
 さて、湯音カミーユに対する「味方だよ」宣言なんだが、これまた堪らんな。カミーユはクロードへの想いを封じて我慢しているわけだが、その我慢を湯音にもするよう話すのだ。私の苦しみをおまえも味わえというわけだ。で、服を選ばせて湯音を試す。そして選んだ服はクロード云々とかいってたが、実は自由を象徴するその服はカミーユ自体が着たかった服なんだろう。で、クロードの話をし始めるのだが、湯音は賢くて、どうやらカミーユの想いに気付いたらしい。それを受けての味方宣言。湯音が笑ってみせたのはカミーユの鬱屈した気持ちを振り払うためなんだろうけど、その後はカミーユを傷つけないための所作に入る。
 で、カミーユは気付くわけだ。あらワタシなんでこの娘に当たっていたのか?、自分の気持ちがダダ漏れじゃないなぁんてね。しかも相手には情けをかけられたということまでわかってしまう。難しいのは西欧女性に「相手に情けをかけられる」ということが侮辱なのかどうかって点だ。だが、湯音は謝っているわけで、そのときの湯音の出たすみませんという台詞がいつものクセであろうとなかろうと、カミーユにとってはかけられた情けが見下しのものではないと受け取らざるを得ないわな。で、謝ることについてのカミーユの発言を守れなかったことについても謝っているわけで、こんな様子を見せられちゃァねェ。カミーユのほうが見苦しかったのに、気を悪くすることなく気付かせてくれただけでなく、味方宣言だもの。カミーユはお返しをせずにはいられなくなるわな。うまくできているのが、双方魅力的に描けていること。取り乱すような要素の見当たらない利発そうな美人が一途に男を想う姿に、素直さで周囲を気遣う姿の競演だよ。こんな娘に想われるなんてクロードもうらやましい…、これが自分だったら身悶えするわな…、がそんなことがあるはずもなく…。
 カミーユの情念もさることながら、しかしやっぱり今回の見所はアリスの物語。アリスの登場時なんてなんていけすかねぇ娘なんだ!と思っていたが、もうこの時点で天真爛漫さしか感じない。日本の少女に会った少女が海の向こうには何があるの?と問われ*1て、自分はてっきりフランスのことを喋るのかと思っていたが、アリスの提示したのは「果てのない世界」。こゝでブワッと涙が出たよ。おとぎ話の結末も「幸せになった」じゃなくて、「飛び立っていきました」だもんな。

*1:こゝ、劇中でも一拍擱くんだよな。小憎たらしい演出。