伝説の勇者の伝説 第14話

 スイの言う通り、ライナーのキレイ事は臭すぎるな、今となっては。
 結局クク救出とライナー・フェリスとミランの再度の出会いで終わってしまった。都合の悪い人間を追い出しても、残りの集団からまた都合の悪い連中が再生産されていくので、排除の原理に意味はないとライナーは見なしているようだが、やっぱある程度の排除は必要だろと思わざるを得ない。何度もいうように、日本の戦後体制は戦前戦中の日本を滅亡させた本来退場するべき連中が温存されてしまったために合衆国による占領態勢が終わらない。日本をどうするか?の部分は合衆国が決めてしまっているために、本来その仕事をすべき政治家や官僚は、権力争いしかやることが無いという体たらくだ。これでは日本が良くなるハズもない。日本という現実ですらそうなのである。
 ファンタジー世界を前提とすることはおかしいのであるが、この物語だってミラン既得権益層の貴族を排除したおかげでローランドに活力が戻ったという描き方をしている。というか、ミランが貴族層を排除してなかったら、今だに王党派と反王貴族連合との足の引っ張りあいで、ローランドは成長していなかっただろうという提示。対するライナーは、理想は立派ながらも勇者の遺物探索も真剣味が足りないし、やっている人助けも大局に影響のないもの。OPだと近い将来ガスタークとローランドが武力衝突しそうなんだが、そのための兵力を整えるのに一番功があるのがミランということになるだろう。とはいえ、この段階ではローランドにとってどっちが不要という話にもならんとは思うんだがなぁ。
 で、ライナーは今の段階だと貴種流離譚における主人公って扱いなんだろうな。シオンも苦労をしているだろうが、宮廷内で事務仕事をやっている立場上、あんまり市井の生活が見えてないって流れにしてるような気がしないでもない。放浪の貴公子が、その経験から明主になるってのは、史実だと中国春秋時代の晋の文公がいて、彼が流浪のたびの果てに晋公の座についたのは老境に達してから。さすがにこの物語をそれになぞらえているとも思わないし、そうやっちゃうと女性読者層を逃がすからやんないとは思うんだが、そういう役回りにしているってのは十分考えられると思われる。ルシルがシオンが王の器かどうか常に見極めているように、フェリスもライナーがそうであるかどうか常に見極めているって構造にはなってはいるんだよな。
 ん〜、あんま今回は胸にクるものは少なかったかな。が、こんなものだとは思う。