セキレイ Pure Engagement 第9話

 やしまだから、ナムバー84ですか…。能力的に雑魚ではなさそうなんだけど、あまりにも投げやりなネーミング。
 いやはや今回も泣かされますなぁ。鶺鴒計画の内部規則変更で、セキレイ同士がいがみあい。法律の改定で末端の日本人同士がいがみあう様子と全く同じだよな。で、Hidden Valueを読んでいるせいか、葦牙とセキレイを一つの組織体としてみると、まさにこの本で述べられている企業や、組織作りに失敗して業績を上げられない企業なんて見方をしちゃうという。八嶋とその葦牙のコンビは、要するに中小零細のブラック企業そのものだよな。契約をした以上尽くさなければならないという義務感に縛られているだろう八嶋のありかたは、とにかく就職してないと自分の生活さえできないと恐怖のあまり転職すら考えることの出来ないブラック企業の従業員と、前提は違うんだけどなにか似たものを感じて哀愁を誘う。単独でしかセキレイを所有しない葦牙なんかも、やはり複数セキレイを所有する葦牙と比べれば、劣らざるを得ないってのも、大企業(氷峨)が中小零細企業(鈿女)を搾取するという現代の構造と全く同じであるってのも非常に感慨深い。葦牙の志だの徳だのが高いといっても、結局優劣を決するのは数でしかないという無力感。
 で、皆人だよな。これが、またHidden Valueに取り上げられている優良企業によくマッチするんだわ。企業の理念に共感する従業員が、従業員も大切にするという経営者と共に働くってのは、まさに理想的な組織といえる。そしてその企業活動が社会にとっても有益であるわけだよ。そして職場の雰囲気は明るく楽しい。草野もセキレイの中では異能ではあるものゝ力不足なのは否めないが、そういう弱者にも組織全体が関って個人的なことでも解決するってのは今回の描写そのものだろう。
 で、鈿女の悲劇だよな。まぁ皆人の勢力がこんなに大きくなるとは全然思ってなかったんだろうけど、弱者はトコトン利用し尽くしてボロ雑巾のように捨てる気マンマンの氷峨陣営にこき使われている姿がひたすら哀れ。皆人と共闘するほうがはるかに生き残る確率は高いだろうに。でも鈿女の葦牙の治療費用を負担してもらっている以上拘束されざるを得ないってのが悲劇だわな。なんつーか、初期条件でもう既に負けが確定って、納得できないと言われゝばそうなんだが…。
 鈿女は結と月海を呼び出して勝負。てっきり結や月海を遠ざけて、草野を狩るという作戦かと思ってたのにな。一番弱いものから狙えってのは鉄則だろ。てっきり草野が狩られて鈿女はとりあえず残留決定かと思っていたのに、次回予告では鈿女が退場って雰囲気なんですけど。まぁ昔話のフォーマットに従う必要なんてないんだけど、草野はデートとはいえ、猫を追いかけて葦牙をほったらかしにしているわけで、やらなければならない任務を放棄しており、その罰が与えられるのかと思っていた。それが自分の行為を反省するような危険な目にも遭わずに、逆に他のセキレイを危険な場に誘導するってことまでやっているわけで、なんというか掟を破った主人公がその為に危険な目に遭うが、努力で乗り越えるっていうフォーマットを全く無視。むしろ前回皆人のボディガードを買って出たのに途中でほったらかしにして危険な目に遭わせた月海が、帰りの遅い皆人の出迎えという償いをして、結果的に二人の世界に浸るというご褒美を貰うという、なんとも月海萌えな昔話フォーマットに従った結末になってた。
 あ、鈿女は結局自爆という選択をしたのかね?。もしそうなら、ブラック企業と家庭との板ばさみになった従業員が始終関東地方の鉄道ダイヤを狂わすというなんとも悲しい現状ともまた一致してしまうわけなんだが。