喰霊 -零- 第12話

 あぁ、なるほど。連載作品の前フリだったら、巨悪を倒すわけにはいかないか。
 というわけで、黄泉が倒されてしゅーりょーした。フォーマットとしてはオーソドックスそのもの。結局何かを守るために自分が犠牲になるって、日本人の喜びそうな筋書きだが、いや、それで悲しみの連鎖が止まったわけではないわけで、根本的解決のための足しにならないのだったら、やっぱ無駄死にジャン、黄泉はってことにならないか?。要するに先の大戦の特攻隊と一緒。上層部の体質が変わらない、状況打開に全く繋がらないんだったら、前途多望な若者がいくら死んだって、そりゃ無駄死に以外のなにものでもないだろ。この作品では黄泉がもう救われない怨霊と化してしまっているので悲劇としての枠をはみ出すことができないわけで、筋書きとしては仕方が無いよねってことか。
 結局構造としては、視聴者に開示する黄泉の願いをネガティヴなものからポジティヴなものに変えることによって、クライマックスを演出ってことですか。物語としては美しくはなるんだが、人の欲望とは?といったような問いに深く考えさせるものにはならなくなってしまうわけで、ここらへんどうなんだろ?。一番大切な人を切ったから、もうこわいものなしとか、いや、もう大切な人をつくることがないだろうってのは、含蓄が深いように見えて、前回の神楽父の人の気持ちを忘れるか背負うかってのにも繋がっていない。まぁそれに関しては、今際のきわの黄泉の言葉で神楽はたぶん背負うほうを選択したんだろうなという流れなんだが、まぁそこは原作漫画本編を読めってことなんだろう。
 さて、総評としては、結論として簡単なんだが、いろいろツッコみたいところがあって困る。テーマが感情ということもあって、いや好き嫌いとか信じる信じないとか大切なものを守りたい云々とか、いろいろあるんだけど、結論を盛り上げるところの部分が、そう、なんというかねぇ、自分にとってはいろんなものを削ぎ落としすぎって印象が強かった。複雑すぎても???だし、難しいところだわな。で、ネガティヴ方面の感情が殺生石ダダ漏れってギミックが茶番って印象もあった。ただし、流れというか、それぞれの要素の繋ぎはさすがにきちんとしていて、これだけ時系列をいじって衝撃的な展開にしたわりには、混乱が少なくて吉。ある意味順番をごちゃ混ぜにした分、テーマの部分は単純化せざるを得なかったのだろう。
 振り返ってみて、あ、説明は要らないんじゃね?と思ったりすることがあったので、尺が長くて困っていたのかな?。果たしてこのシリーズで言いたかった事は?と考えるとボケてしまうんだけど、盛り上げ方は上々だし、音もよければ動きもよしで、特に問題は無いんですけどね。途中視聴者に媚び媚びなんじゃねぇの?と思った部分も、全体を振り返ってみればたいしたことなく、気にしすぎていたかな?というレヴェルだった。要するにクォリティは高いってことで、おもろ+。余計なことなんだけど、惜しいことに“大人”がいないんだよなぁ。