夏目友人帳 総感

 いやぁ、終わりましたね。I'll be back soonというわけで、どうすんだろ?。積み残し感がないわけでもないが、ある意味キレイに終わったと思いますが。そうはいっても原作のストックはあるようなので、あんまり心配はないのかな。
 もう今までに大概記しているので再確認する必要もないと思うんだが、やはりこの作品は現代に至るまでの被抑圧層に対する思い遣りなんだろうと思う。そのためには抑圧している側の存在が不可欠であるが、それは描写として現れていなくとも、ある程度視聴者の想像で補えるようになっていたのかな。もちろんそんなのなくても、かわいそうな人が救われるだけという視聴の仕方でも一向に構わない。アサギの琴なんてのもそういう範疇だろうし。
 で、これはわざわざ言葉にしてしまうほどの重要事項なんだろうが、居心地の良い社会を作るためにどんなことが必要なのか?というのもポイントだろう。これはあまり言葉にできることでもないと思うんだが、無理していってしまえば配慮なんだろうか。もちろん自分に利権を引き寄せるために欲望をあからさまにするというのは言語道断で、そんなのこの作品を視聴しようという人は前提条件で既にわかっているよね?という作り。そういう低レヴェルの段階でなく、ある程度志も持ち、手段もわかっている人がどうやってそれらを組み合わせて事態に取り組むべきか?という実践の段階に近いお話なんだろう。
 問題が生じたら、問題箇所を切り取ってしまえばいいとか、悪いところは悪いと直接言えば解決するとか、そういう直球勝負では大抵の問題はこじれるだろう。なんつーか、そういうのは発想としてパンがなければケーキを食べればよいという能天気さとメンタリティーが同じで、これだけ高度に複雑化した社会では対応不可能。というか、昔だって対応できなくて、首チョンパされちまったわけだろう。最終回でもそうだったが、自分が傷つかないような対応をしても、結局それは表面を取り繕うだけに過ぎないだけでなく、人を多少なりとも傷つけるわけで、正直にものをいうにも、どういう場面で誰にどうやって伝えるか?が大事なんだろう。最初の出会いでは夏目が田沼を気遣って、田沼が夏目の素性に気付き、こんどは田沼が気を遣って夏目から言葉を段階的に引き出していたのは感心した。さすが女性による繊細な表現とは思うのだが、しかし日常で関わりのある女にこういう心遣いができる人がほとんど居なくて、というより我欲の塊のようなのが多くて、一体男性性とか女性性とかは何か?に困ってしまう。
 結局、泣きを期待して視聴して思う存分泣かせてくれ、期待通りの出来だった。もうちょっと単調になるのかな?と心配していたが、そうでもなかったかな。割と声優も豪華で、しかもBGMが綺麗。なんだか「紅」村松健っぽく感じていたが、違うようだ。感想サイトさんでも、この作品を悪し様にいうところは見たことがないな。劇的な展開を用意しなくてもちゃんと心を揺さぶる事はできるんだろう。構成もなかなかだが、原作に負うところも大なのかな。もっと全年齢層に受け入れられるべきだろうが、現状ではかなり難しいだろう。一つの大きな物語でなく、見終わった充実感ってものはないが、自分的にはそんなもの必要ない。評価はおもろ+。これは久々に原作をチェックしてみたいと思わせる作品だったな。